運慶、人物彫刻の最高傑作と、晩年に構想した彫刻空間・再現の試み〜東京国立博物館 特別展「運慶 祈りの空間―興福寺北円堂」
運慶の無著菩薩立像が醸し出す、老齢に達した僧侶の崇高な精神性、その到達した内面世界の深みが表情やたたずまいに滲み出ているかのような表情の静かな繊細さと、相反するかのように大ぶりに作られた分厚い体躯の肉体の重々しさの迫力、この唯一無二の存在感は、日本の彫刻史上の最高傑作とも称賛されて来た。
この像を、もっとも好きで共感する仏像として挙げる僧侶、つまり自身が仏教の修行者である人たちも少なくない。
無著は西暦4世紀から5世紀にガンダーラに実在した仏教学者で、菩薩とあるのは原義が修行者、悟りを開き解脱に至る過程にある段階の者、という意味だから。サンスクリット語でアサンガ、弟の世親(サンスクリット...