東京国立博物館 特別展「本阿弥光悦の大宇宙」
本阿弥光悦の名に最初に遭遇したのは、小学校高学年で読んだ吉川英治の「宮本武蔵」だった。京都の吉岡一門との決闘に備える武蔵が祇園の吉野大夫に匿われた際に、光悦に紹介される。子供にはなんのことか今ひとつよく分からなかったが、剣豪の殺気を察しつつ意気投合する当代きっての文化人が、武人の武蔵に劣らぬ鋭い目と、研ぎ澄まされた刃のような感性を持つ人物として描写されていた。
まったくの誤解かもしれないこんな光悦のイメージ(なお吉川英治の歴史小説の中でもこの一作は史料が少ないこともあってほとんど創作で、本阿弥光悦との親交自体が史実ではない)に囚われた筆者にとっても、とても納得がいくのが光悦の作った黒楽茶...