日本の「美」と「善」の始まりとしての聖徳太子〜聖徳太子1400年遠忌記念 特別展「聖徳太子と法隆寺」東京国立博物館
聖徳太子。天皇として即位していないのにこのような諡号で呼ばれるのは、古代の日本では他に例がないだろう。 だが昨今の学校教科書では、この奈良時代に成立した漢風の呼び名ではなく、『古事記』『日本書紀』にある「上宮之厩戸豊聡耳」「厩戸豊聡耳」に基づく「厩戸王」の表記が一般的だ。
「厩戸王」という、太子自身の息子・山背大兄王、のちに天智天皇として即位する中大兄王、同時代のやはり有力な皇族・軽王(のちに孝徳天皇として即位後、中大兄と対立)、奈良時代の長屋王など、古代の他の重要な皇族と統一性のある表記法にすることに一定の合理性があるのは、この時代に本当に「太子」という地位、つまり天皇の後継者をその在...