夜の葉~映画をめぐる雑感~
#17『1秒先の彼』とコリン・ヒギンズ『ハロルドとモード』
ハロルドはなにかを考える顔で水煙管を吸い、それからしんみりといった。「たしかに、ぼくはこれまで人生を生きてこなかった」煙を深く吸い込むと、急にくすくす笑い出した。「でも死んだことは何回かあるんだ」
――コリン・ヒギンズ『ハロルドとモード』
死=終わりから見つめた生
1960年代後半のベトナム戦争末期、泥沼の戦いを続けていたニクソン政権下のアメリカで、後に日本において「アメリカン・ニューシネマ」といわれる一連の映画群が次々と発表される。それらの作品に出てくる若者を中心にした人物たちは、終わりの見えない戦争を続ける偽善的な体制に反発を示しながら、大抵は挫折と敗北を味わい、道端に捨てられたゴミ...