仏像の「見分け方」の簡単な約束事を知るだけで、がぜん見るのが面白くなる
どんな形の仏像がどの仏を表しているのかは宗教上の約束事で決まっていて、たとえばトップ画像の如来像は、この約束事さえ知っていれば阿弥陀如来だとすぐに分かる。
だがこの写真の如来立像となると我々のような素人はもちろん、専門の研究者でも、どんなに偉いお坊さんでも、見分けがつかない。
それはこの下の写真の、パッと見るだけでも衣の表現の仕方などが上の像といろいろと異なった如来像でも同様だ。一方でずんぐりした体型や、様式化された衣のヒダの曲線が、この記事の2枚目の写真の地蔵菩薩立像と共通していることにも気づくかも知れない。
ただしこちらの方が太腿周りの衣のヒダがシャープな彫りで、より堅い材木なのかも知れない。
次の写真も同じく如来の立像だ。もともとどこのお寺にあったのかも分からないもので、平安時代初期か奈良時代に作られたと推定され、独特な美しさのある、非常に印象的な像だが、どの如来なのかは判別がつかない。
3体とも同じ「如来」つまり「ブッダ」「仏さま」で、どれも立像だ。いずれも平安時代初頭の前後からだいたい150年から200年ほどの間に作られたもので、構造や技術もそんなに大きく変わらず、主要部分を一本の木から彫り出す「一木造り」だ。
似通っていておかしくないはずなのに、こうして一度に見ると全体の雰囲気はもちろん、顔立ちや身体のボリューム感、それに衣の表現などの差異も含めて、ずいぶんと個性がぞれぞれに違うことに気づかされる。仏像をお寺の本尊などとして一体ずつか、脇侍なども含めてでもせいぜい数体だけ見ていれば、「みんな同じに見える」と思い込んでしまうかも知れないが、日本の仏像表現は実に多様なのだ。