連載:おしゃべりな映画たち
第6回『燃ゆる女の肖像』(2019年/セリーヌ・シアマ監督)
わたしたちが一緒にできること
頭を殴られたようになり、呆然としてしまった。試写室から、家まで、帰った道筋を思い出せない。でも、なんで、こんなにショックを受けるんだろう。いつもの駅のホームで、わたしがスカーフを落としたのを、近くを歩く、二人の女性が、とっさに、指を指す。その彼女たちの顔。普段、自分の生活になんの疑いも違和感も持たないようにみえていた、道ゆく女性たちの顔が、今までと異なり、くっきりと、陰影をもって、見えて、ハッとする。この映画は、見えているのに、描かれてこなかったものを、描いてる。たぶん、ほんとうのことは、今まで描かれてこなかったのだ。女性同士が、さしで向き合い、その間に何も...