北島博士のおもしろ映画講座 第71回-黒木瞳監督による過去と未来のカルチャー・クラッシュにメロドラマを盛り込んだ異色のSF『十二単衣を着た悪魔』
『十二単衣を着た悪魔』
過去へのタイム・スリップを描いた映画は数多けれど、「十二単衣を着た悪魔」のごときフィクション世界への時間旅行はいと少なし。古典風にいえば、こうなるのだが、脚本家の内館牧子が書いた小説『十二単衣を着た悪魔 源氏物語異聞』(幻冬舎文庫)を基に、脚本を内館ではなく多和田久美が執筆している。女優の黒木瞳が「嫌な女」(2014)につぐ監督第二作として演出。紫式部作『源氏物語』の世界へ入り込んだ主人公の慣れぬ環境での人間的成長、過去と未来のカルチャー・クラッシュにメロドラマを盛り込んだ異色のSFとなっている。
『源氏物語』の冒頭部分は学校で習って暗唱もできるが、そのあとは曖昧...