大人のパリ映画散歩〈intermezzo〉消えた建築
『眠るパリ』の巨大建築物
パリはスクラップアンドビルドを繰り返してきた東京とは比べようがないほど古い建築が取り壊されずに残っている。パリを訪れるとまずそのことに驚くが、もちろん建て替えられてその姿を見られなくなってしまった建築も数多い。その多くは匿名的な存在だが、中には映画の中で初めて出会い、今は埋もれて忘れ去られたパリの過去の層に思いがけず触れてしまったような感慨と快楽をもたらしてくれる建築もある。
たとえば、ルネ・クレールの『眠るパリ』(1924)。ラストにエッフェル塔からの俯瞰ショットがあるが、そこに見慣れない建築物が映り込んでいる。モニターの画面を静止して確認すると、その円形平面...