聖徳太子の1400年の歴史と、飛鳥時代の金堂・五重塔。時間と空間の二部構成
今回の奈良国立博物館の展覧会は、博物館新館の西と東の棟を利用して、二つのパートに大きく分かれている。西側の棟から始まる最初の展示スペースには「唐本御影」と呼ばれる御物の聖徳太子像と、その左右に法隆寺には太子遺愛の品として伝わって来た文房具や香炉が置かれ、太子の時代に遡る金銅の仏像なども並ぶ 。
「唐本御影」は現存する最古の聖徳太子の肖像とみられる。法隆寺の夢殿を中心とする東院伽藍に伝来し、明治時代に皇室に献納された以降は天皇の「御物」として大切にされて来たものだ。我々におそらく最も馴染みがある聖徳太子の顔の、かつての一万円札などの紙幣のモデルでもある。
ここから始まる前半の展示は、西側の棟に平行で並ぶ南北二つの縦長のギャラリーを活かした直線状の順路に沿って、まず聖徳太子の人となりと、その生涯をめぐる伝承が歴史の中でどう受け止められて来たのかを追っていく(第1章から第4章)。
言うなれば「第一部・聖徳太子」と言ってもいいのかも知れず、歴史を時系列順に追う時間の旅でもある。
一方、東側の棟の展示室の、まとまった広い空間は、金堂壁画の写真複製などを用いた金堂の内部のイメージを再現する空間デザインで、薬師如来坐像など飛鳥時代の金堂の諸仏と、同時代の関連性がある仏像、金堂の壁画やその模写、天蓋などの装飾、そして金堂と同様に世界最古の木造建築である五重塔にまつわる展示品が並ぶ(第5章)。