ガラスケースもなく直に見る荘厳な奈良時代の観音像、その超越した美から浮かび上がる「日本人とは何者なのか?」の原点
〜奈良国立博物館 特別展「国宝 聖林寺十一面観音 三輪山信仰のみほとけ」
圧倒的に荘厳な、畏怖するしかない美しさが目の前にある。
昨年にこの展覧会がまず東京国立博物館で開催された時、高さのある台に載って、低反射ガラスのケース越しに見上げる聖林寺十一面観音菩薩は、伏し目がちな顔に憂いを帯びた優美さを漂わせて見えた。
今回の奈良国立博物館での展示では、ガラスケースなしにこの像と同じ空間を共有できるぜいたくが、まず純粋に驚きだ。
しかも驚かされるのは単に「じかに見られる」からだけではない。今回は展示用の台も低く、奈良時代にこの像が造られた時からの台座の、ほぼその高さで、我々はこの観音像と直面する。
するとどこかしら、同じ像なのに印象が異なるのだ。前回の展示の記事とも...