川の向こう、「死後の世界」の入り口に建てられた寺に伝わる極限のリアリズム〜東京国立博物館・特別展「空也上人と六波羅蜜寺」
運慶、というと力強い肉体の運動が強調・誇張された東大寺南大門の金剛力士像や高野山の八大童子立像、静岡・願成院の毘沙門天立像、あるいは東大寺の重源上人坐像、興福寺の無着・世親立像のような迫真のリアリズムの人物像(いずれも国宝)が、真っ先に思い浮かぶ。
その点、如来や菩薩の像となると、経典に基づく約束事がより厳格で、自由な造形や独創的なポーズのダイナミックな表現は制約されがちだ。だがそのような、一見「個性」を目立たせにくい如来像、菩薩像の方でこそ、事実上のデビュー作と言われる奈良市郊外・円成寺の国宝・大日如来坐像のように、かえってそのディテールの独創性と、純化されたコンセプトの明確さに、運慶...