800年前の鮮烈な色と彫刻の超絶技巧

快慶 木造地蔵菩薩立像 鎌倉時代・13世紀 藤田美術館 重要文化財
左右の腕から緩やかに、それでいてシャープな曲線で垂れ下がる袖と、左腕にはその上から袈裟が掛けられているのは、普通なら手首の下でくっつけて一枚に処理してもおかしくない(というか、そういう仏像が一般的だ)。

快慶 木造地蔵菩薩立像 鎌倉時代・13世紀 藤田美術館(部分) 重要文化財
それが均一の極端な薄さのまま下まできっちり分かれ、複雑に折り返され、それも平板ではなく、一枚一枚が軽やかに波打って翻っている。
それにしても木彫で、どうやったらここまで薄く出来るんだ?

それも二重どころか三重にも四重にも、複雑に、それぞれが独立した曲面で。しかもほとんど見えない部分でも、先端までびっしりと彩色の截金の文様に覆われている。
左右の対称性を意識した美学だろう、右手に錫杖、左の手のひらを上に向けて宝珠を乗せる地蔵菩薩のポーズが、両手がほぼ同じ高さになることが多い。

快慶 木造地蔵菩薩立像 鎌倉時代・13世紀 藤田美術館(部分) 重要文化財
腕から下がる袖は微妙に末広がりで、長めの首と丸っこい撫で肩とも相まって、緩やかな二等辺三角形のシルエットを成す。袈裟の下から足首にかかる巻きスカート状の衣の裾も、この像ではとりわけ下に向かっての広がりが大きく、首がやや長め、顔が小さめなのと併せたその安定感が、優美さを醸し出す。

だがシンメトリーの安定感と言っても、決して静止してはいない。
右の足を踏み出し、その裸足のつま先から緩やかな円弧状の運動が始まって、袈裟の中心線が左肩から吊られているので左側が上がるのにひっぱられて左に曲がり、ドレープも左が上がっているのを巧みに利用して生まれる円弧のベクトルが、左手の辺りを頂点に回って右に戻って中心線と交わるところに、顔が来る。

なんと巧みに計算された造形なんだろう。
※快慶作 木造地蔵菩薩立像の展示は1月31日まで
