博物館のもうひとつの大事な役割、修理と保存の需要性

画像: 四天王立像 鎌倉時代・13世紀 京都・現光寺 京都府指定文化財 前列左・増長天、右・持国天。後列左右・広目天、多聞天 令和5〜6年度修理 京都府補助、木津川市補助

四天王立像 鎌倉時代・13世紀 京都・現光寺 京都府指定文化財
前列左・増長天、右・持国天。後列左右・広目天、多聞天
令和5〜6年度修理 京都府補助、木津川市補助

なお台座の、四天王が踏み付けた邪鬼を取り囲む岩の部材も脱落しかけ、表面の剥落も進行していたという。そこで膠を使って貼り直し、表面は現代の樹脂素材を塗布して剥落どめが行われた。

画像: 展示風景 左)鳥羽天皇像 和歌山・根来寺 重要文化財 右)藤原鎌足像 奈良国立博物館

展示風景 左)鳥羽天皇像 和歌山・根来寺 重要文化財 右)藤原鎌足像 奈良国立博物館

博物館・美術館の役割というと、我々のような一般人に最も身近なのは展示・鑑賞の部分だ。

だがそれは氷山の一角というか、水面の水鳥が優雅に浮かんでいるように見える水面下で、脚で懸命に水をかいているのが見えていないというか、美術品や文化遺産を鑑賞できる状態で維持するためには日々保存・現状を維持するために温度や湿度などを徹底的に管理する必要があること、そして膨大な所蔵品や寄託品(寺社や個人コレクターでは管理しきれない作品の多くが博物館・美術館に預けられている)を地道にひとつひとつ修理していく努力が重ねられていることも、忘れてはならない。

大津皇子坐像 鎌倉時代・13〜14世紀 奈良・薬師寺 重要文化財
令和6年度修理 国庫補助
大津皇子は天武天皇の息子で、母は皇后でのちの持統天皇となる鸕野讚良皇女の早逝した姉。天武天皇の崩御直後に謀反を疑われてわずか24歳で自害に追い込まれた。天武天皇が鸕野讚良の病気平癒を祈願して創建した薬師寺では特別な役割と位置付けのある像で、ブロック状のパーツを組み合わせた構造も特殊。修理は現状維持の観点からその木材の区切れが分かるように行われた。

国立・公立の博物館・美術館でも独立行政法人化され、近年では政府からの運営交付金が減らされる傾向が続き、ついには数値目標まで定めるという政府の方針が、新年早々に一部で新聞報道されていた。外国人観光客からはより高い料金を取る、夜間開館を増やすなどの案が提起されているそうだ。

収益力を強化すると言うのが文化財が見られる機会を増やすこと、観客を増やすことであればそれ自体は悪くはないが、果たしてそれだけでいいのだろうか? 博物館や美術館、文化財は単にインバウンド投資ではない。「日本人の文化と歴史」「日本人が大切にして来たもの」を語るのなら、政府や国会議員だけでなく、我々国民も立ち止まって、深く考えた方がいい。

画像1: 四天王立像(多聞天)平安〜鎌倉時代・12〜13世紀 奈良国立博物館 (興福寺旧蔵) 重要文化財 令和6年度保存修理 助成:バンク・オブ・アメリカ 施工:公益財団法人美術院

四天王立像(多聞天)平安〜鎌倉時代・12〜13世紀 奈良国立博物館 (興福寺旧蔵) 重要文化財
令和6年度保存修理 助成:バンク・オブ・アメリカ 施工:公益財団法人美術院

実は奈良国立博物館で近年に行われた修理事業の最大の目玉は、今回の「新たに修理された文化財」の会場では展示されていない。

かつて興福寺にあった等身大の大きな四天王立像のうち広目天を除く三体が明治時代に寺外に出て、増長天と多聞天がそれぞれ奈良国立博物館の所蔵品になっている、その二体の修理が行われた。

画像: 四天王立像(増長天)平安〜鎌倉時代・12〜13世紀 奈良国立博物館 (興福寺旧蔵) 重要文化財 令和6年度保存修理 助成:バンク・オブ・アメリカ 施工:公益財団法人美術院

四天王立像(増長天)平安〜鎌倉時代・12〜13世紀 奈良国立博物館 (興福寺旧蔵) 重要文化財
令和6年度保存修理 助成:バンク・オブ・アメリカ 施工:公益財団法人美術院

この二体は別会場の「仏像館」(入館料は込み)の中央のホールで修理完成記念 特別公開「興福寺伝来の四天王像」と題して、一具だったあとの二体、興福寺にそのまま残った広目天、滋賀県のMIHO MUSEUM所蔵の持国天と合わせ、28年ぶりに四体揃って展示されている。

ちょうど二体ずつ、修理前・修理後が並べて展示されているので、比較してみるのも興味深い。

画像: 四天王立像 平安〜鎌倉時代・12〜13世紀 興福寺旧蔵 重要文化財 左)広目天:奈良・興福寺 右)増長天:奈良国立博物館 増長天は修理で浮き上がった彩色を止めるなどの処置が施され、色が落ち着いて見える。

四天王立像 平安〜鎌倉時代・12〜13世紀 興福寺旧蔵 重要文化財
左)広目天:奈良・興福寺 右)増長天:奈良国立博物館
増長天は修理で浮き上がった彩色を止めるなどの処置が施され、色が落ち着いて見える。

四天王立像(広目天)平安〜鎌倉時代・12〜13世紀 奈良・興福寺 重要文化財

画像: 左)持国天:滋賀・MIHO MUSEUM 右)多聞天:奈良国立博物館 いずれも 重要文化財

左)持国天:滋賀・MIHO MUSEUM 右)多聞天:奈良国立博物館 いずれも 重要文化財

四天王立像(持国天)平安〜鎌倉時代・12〜13世紀 滋賀・MIHO MUSEUM(興福寺旧蔵) 重要文化財

画像2: 四天王立像(多聞天)平安〜鎌倉時代・12〜13世紀 奈良国立博物館 (興福寺旧蔵) 重要文化財 令和6年度保存修理 助成:バンク・オブ・アメリカ 施工:公益財団法人美術院

四天王立像(多聞天)平安〜鎌倉時代・12〜13世紀 奈良国立博物館 (興福寺旧蔵) 重要文化財
令和6年度保存修理 助成:バンク・オブ・アメリカ 施工:公益財団法人美術院

特集展示「新たに修理された文化財」

会期 2025年12月23日(火)~2026年1月18日(日)
会場 奈良国立博物館 西新館 https://www.narahaku.go.jp/info/access/
[特別公開「興福寺伝来の四天王像」は3月15日(日)まで、仏像館

画像: 大津皇子坐像 鎌倉時代・13〜14世紀 奈良・薬師寺 重要文化財 令和6年度修理 国庫補助

大津皇子坐像 鎌倉時代・13〜14世紀 奈良・薬師寺 重要文化財
令和6年度修理 国庫補助

開館時間 午前9時30分~午後5時 ※入館は閉館の30分前まで
休館日 毎週月曜日、12月28日(日)~1月1日(木)、1月13日(火) ※1月12日(月・祝)は開館

赤彩浅鉢形土器(青森県寺下遺跡出土) 縄文時代 奈良国立博物館
令和6年度 財源:運営費交付金
こうした土器は発掘時にはバラバラの破片の状態で、修理ではいったんバラして洗浄の上、最新の最適な接着剤で繋ぎ直すことで本来の形を取り戻す。

観覧料金[特別陳列「春日若宮おん祭の信仰と美術」(西新館)、名品展「珠玉の仏教美術」(西新館)・「珠玉の仏たち」(仏像館)・「中国古代青銅器」(青銅器館)込み]
 一般  700円
 大学生 350円
※高校生以下および18歳未満、満70歳以上、障害者手帳またはミライロID(スマートフォン向け障害者手帳アプリ)所持(介護者1名を含む)は観覧無料
※高校生以下および18歳未満の方と一緒に観覧される場合、子ども1名につき、同伴者2名まで一般100円引き、大学生50円引き。

詳細はWebサイト https://www.narahaku.go.jp/exhibition/special/202512_shuri/

画像: 四天王立像(持国天) 鎌倉時代・13世紀 京都・現光寺 京都府指定文化財 令和5〜6年度修理 京都府補助、木津川市補助 写真はすべて撮影:藤原敏史 ©2026, Toshi Fujiwara 主催者の特別の許可を得て撮影・転載厳禁 Canon EOS RP, RF85mm f1.2L, RF50mm f1.2L

四天王立像(持国天) 鎌倉時代・13世紀 京都・現光寺 京都府指定文化財
令和5〜6年度修理 京都府補助、木津川市補助
写真はすべて撮影:藤原敏史 ©2026, Toshi Fujiwara
主催者の特別の許可を得て撮影・転載厳禁
Canon EOS RP, RF85mm f1.2L, RF50mm f1.2L

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