画像3: 国宝 世親菩薩立像(部分) 運慶作 鎌倉時代・建暦2年(1212)頃 奈良・興福寺蔵 北円堂安置

国宝 世親菩薩立像(部分) 運慶作 鎌倉時代・建暦2年(1212)頃 奈良・興福寺蔵 北円堂安置

体躯の重厚なたくましさと対照的に、世親の手先・指先は、とても繊細だ。

無著像は持物が失われておらず、左の掌におそらくは悟りの象徴である舎利(釈迦の遺骨の断片)を納める壷だろう、布の袋に入ったなにかを載せて右手を添えていて、手のひらは隠れて見えないし、指先にも注目がいきにくい。

画像2: 国宝 無著菩薩立像(部分) 運慶作 鎌倉時代・建暦2年(1212)頃 奈良・興福寺蔵 北円堂安置

国宝 無著菩薩立像(部分) 運慶作 鎌倉時代・建暦2年(1212)頃 奈良・興福寺蔵 北円堂安置

世親の像も水平に差し出された左手に経典かなにかを載せていたのだろうが、それがないからこそ爪も手相も緻密に表現された肉厚の右手の美しさがよく見える。

画像4: 国宝 世親菩薩立像(部分) 運慶作 鎌倉時代・建暦2年(1212)頃 奈良・興福寺蔵 北円堂安置

国宝 世親菩薩立像(部分) 運慶作 鎌倉時代・建暦2年(1212)頃 奈良・興福寺蔵 北円堂安置

左手の指先にまで心のこもったリアルな表現の緻密さには、息を呑む。

博物館での展示ではより自由な照明と、展示台の高さがより低いので、北円堂で見た時には気づかなかったところでいろいろ発見がある。たとえば漠然と二体とも直立不動の像だと思っていたが、足元にまでよく目が行くのが無著は右足、世親は左足をかなり大きく前に踏み出している。

画像: 国宝 無著菩薩・世親菩薩立像(部分) 運慶作 鎌倉時代・建暦2年(1212)頃 奈良・興福寺蔵 北円堂安置

国宝 無著菩薩・世親菩薩立像(部分) 運慶作 鎌倉時代・建暦2年(1212)頃 奈良・興福寺蔵 北円堂安置

その足の動きからの自然なつながりで、顔は右の世親はやや左、左の無着はやや右を向く。

画像: 国宝 無著菩薩立像 運慶作 鎌倉時代・建暦2年(1212)頃 奈良・興福寺蔵 北円堂安置

国宝 無著菩薩立像 運慶作 鎌倉時代・建暦2年(1212)頃 奈良・興福寺蔵 北円堂安置

運慶の最晩年の作で自身は指導的立場、実際の作業は弟子の運助が無著像、世親像は運賀が担当したとされるが、静止している彫刻の中にこそ身体の動きを表現する運慶ならではの特徴が、若年・壮年期の派手さ・パッと見の分かり易さはなくとも確実に、むしろ成熟した抑制をもって、この二つの像にも現れているのだ。

とりわけ世親はより背中が丸まっていて猫背ぎみというよりも、体の全体がかなり前傾していることには、今回初めて気付かされた。

画像2: 国宝 世親菩薩立像 運慶作 鎌倉時代・建暦2年(1212)頃 奈良・興福寺蔵 北円堂安置

国宝 世親菩薩立像 運慶作 鎌倉時代・建暦2年(1212)頃 奈良・興福寺蔵 北円堂安置

ともに目には「玉眼」、つまり頭部の内側から眼窩に水晶が嵌め込まれて目がよりリアルに表現されていて、その目を狙ったスポット照明が、二人の対照的な表情をそれぞれに際立たせる。

こと世親の顔が角度によって異なった表情に見えることが、深い眼窩の奥で目がキラリと光っているので、その表情の変化と多様さがより強まって見える。

画像3: 国宝 世親菩薩立像 運慶作 鎌倉時代・建暦2年(1212)頃 奈良・興福寺蔵 北円堂安置

国宝 世親菩薩立像 運慶作 鎌倉時代・建暦2年(1212)頃 奈良・興福寺蔵 北円堂安置

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