cinefil新連載「神山睦美のサクリファイス」第10回 卒論指導
卒論指導
私は、1969年の東大安田講堂事件にかかわった世代である。この年、東大は入学試験の中止を決定したのだが、卒業は通常通りだった。卒業年度に当たる者たちは、3月までに卒業論文を提出して、卒業していった。しかし、全共闘学生だった私たちには、卒論指導をしてくれる教官もいなく、中退するか留年するかだった。
幸いなことに私は、何とか卒業することができた。論文指導をしてくれる教官がいたからだ。指導教官は、蓮實重彦助教授。卒業論文は、フローベールの「ボヴァリー夫人論」である。安田講堂事件や駒場8号館闘争の頃、蓮實さんはフランスにいたので、東大闘争にはかかわっていなかった。それならなぜ、蓮實さん...