夜の葉〜映画をめぐる雑感〜
#19『ワン・バトル・アフター・アナザー』とトマス・ピンチョン『LAヴァイス』
舗道の敷石の下はビーチ!──一九六八年五月、パリの落書きより
──トマス・ピンチョン『LAヴァイス』
※本稿では、ポール・トーマス・アンダーソン監督『ワン・バトル・アフター・アナザー』の物語に触れながら論じています。そのため、一部に内容の核心や展開についての記述が含まれます。
革命の残光と現在
ポール・トーマス・アンダーソン(以下、PTA)は、トマス・ピンチョンの小説『LAヴァイス』を映画化した『インヒアレント・ヴァイス』(14)において、小説では冒頭に置かれたこのエピグラフを映画のラストに掲げている。この落書きは1968年パリの五月革命のスローガンであり、反体制と革命を謳った若者たちに...