ダニエル・デイ=ルイス──究極の「役を生きる」名優、8年振りの帰還
ダニエル・デイ=ルイスが再びスクリーンに戻ってくる。アカデミー主演男優賞を三度も受賞し、一作一作に全身全霊を注ぐ彼の演技は、「俳優」とは何かを問い続ける存在だった。例えば、『マイ・レフトフット』(89)では脳性麻痺を抱えたクリスティ・ブラウンとして車椅子を徹底して離さず、『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』(07)では荒野で掘削者として暮らし、『リンカーン』(12)では撮影中のみならずオフでも大統領を演じ続けた。こうした役への完全な没入は、“演じている”のではなく、その人物として“生きる”ことを目指した方法演技の極致である。
こうした精神的、肉体的な消耗ゆえか、デイ=ルイスは1997年、映画...