夜の葉〜映画をめぐる雑感〜
#21『ハムネット』とチャールズ・テイラー『世俗の時代』
おそらく現代世界におけるこうした変容の最も明白な表徴は、今日、多くの人がかつての多孔的な自己の世界を、郷愁をもって懐かしく振り返っていることであろう。人々とコスモスとの間の分厚い感情的な境界の構築は、今やあたかも彼らにとって人生の喪失の経験として受け止められているように思われる。
──チャールズ・テイラー『世俗の時代』(千葉眞訳)
孔という構造 ──「虚」から始まる映画
クロエ・ジャオが『ハムネット』のロケーション・スカウティングをウェールズで行っていたとき、彼女は古い森の中に一つの孔を発見した。木の根元に口を開けたその暗い空洞は、やがて映画全体の中心的なモチーフとなる。『ヴァラエティ』...