クリストファー・ノーランを形成した44本の映画
──最新作『オデュッセイア』へ至る道
クリストファー・ノーランの映画を特徴づけるのは、緻密な構造と圧倒的なスケール、そしてその両者を有機的に結び付ける感情の核である。物語の骨格はときに幾何学的で、時間や空間を自在に操作しながら観客を導くが、その中心には必ず人間的な動機や感情が置かれている。
こうした作風は、突然降って湧いたものではない。幼少期から現在に至るまでの映画体験が、まるで年輪のように蓄積し、彼の作家性を形成してきた。
近作『オッペンハイマー』(23)がアカデミー賞を席巻した後、ノーランが次に挑むのはギリシャ叙事詩『オデュッセイア』の映画化である。海を渡り、時を超えて試練を重ねる英雄の物語は、ノーランにとって単なる文学...