マーティン・スコセッシが選んだ「映画史の87本」
巨匠の視点で辿る、映画の地層と魂
映画史とは、単なる技術の進化や興行記録の積算ではない。それは、映像がいかに世界を語ろうとしたか──あるいは語りそこねたか──という試みの連なりである。マーティン・スコセッシが選んだ87本の作品は、その試行錯誤の集積にして、映画という表現が直面してきた倫理、美学、そして幻滅の軌跡を鋭く照らし出している。
このリストには、ジャンルを超えて共鳴する構造がある。たとえば暴力の可視化、信仰と権力の交錯、夢と現実の裂け目、沈黙の倫理と過剰なイメージの臨界点。スコセッシはそれらを“好み”として並べたのではない。むしろ、映画が歴史と他者にどう応答するかという問いを突き詰...