傷ついた身体と語りの継承
──『罪人たち』が映し出す女性たちの声=ブルース
1930年代のアメリカ南部。深い森と湿った空気の中で始まる映画『罪人たち』は、ジャンルの境界を超えた語りを展開する。多様なテーマが内包された本作で、今回は女性たちの存在に焦点を当ててみたい。奴隷制の記憶を背負い、差別と暴力にさらされながらも、それでも土地に根ざし、生き延びてきた彼女たちの「語り」と「身体」が、作品の根幹を静かに、だが確かに支えているからだ。
差別の境界に立つ
──メアリーという“通過する”存在
ヘイリー・スタインフェルドが演じるメアリーは、いわゆる“white-passing”(白人として通用する)黒人女性として描かれる。彼女は肌の色によって白人社会に“入り込む”ことがで...