できるなら日中の、陽が出ている時間に、ぜひお天気もチェックして出かけて頂きたい展覧会である。いや普通なら美術館・博物館は展示品の保護のため外光・太陽光が入らない設計になっている(顔料の色素や、紙や布などの繊維は、紫外線で劣化したり褪色を起こす素材が多い)。天候の影響はなく、むしろ雨宿りにどうぞ、と言ってもいいくらいだ。
だがこの美術館は元は邸宅で、住居としての本来の設計がほぼ維持されている。美術館にするための改造は最低限で、改修工事が行われたのもバリアフリー化以外では建造当時の状態に戻すためだったりで、日中には太陽の光が室内に入る。
そして自然光で魅力がさらに増すのが、この展覧会の特色だ。
重要文化財の建物で本来の住宅のままの自然光が入る環境で見る、ガラスの魅惑
装飾美術 (arts décoratifs、縮めると art-déco)がこの美術館の専門分野、生活を美しく快適に彩るための品々が主人公である。
元が住宅なので、そもそも美術館などで観賞するために作られたわけではない生活用具や室内装飾品を、本来の目的に近い環境で見られるのはもちろんだが、この展覧会の場合、それだけでは済まない。
なによりも、今回のテーマがガラス製品であること。つまり光を透過し、光によって輝くモノたちが主役だ。ガラスは光次第で最大に魅力を引き出されることもあれば、いい光が当たっていなければ、まあ…ガラスは、ただのガラスだ。
無色透明のガラスであれば、それ自体には色もなにもない(むしろ透明度が高い方が「いいガラス」になる)。
光が透過し、光が反射して生み出されるガラスの表情の魔力。古代ペルシャや古代ローマのガラスがシルクロードに沿って東に伝播して古代の日本人も魅了し(古墳時代の副葬品でもガラスは多用され、正倉院のペルシャ製の「白瑠璃碗」は教科書でもおなじみ)、中世のヨーロッパではステンドグラスとなって「神」や「天国」を想起させたようなガラスの神秘は、適した光がなければ、見えないものなのだ。