金と群青と緑青の神々しさと魔力に惹き込まれる〜根津美術館「国宝 燕子花図屏風〜色彩の誘惑」
コッポラ監督『ドラキュラ』(1992)でアカデミー賞衣装デザイン賞を獲った石岡瑛子が、筆者の留学していたロサンゼルスの大学で講演したことがある。講義のあとの学生との雑談で、石岡に「あなた映画しか知らないんじゃない、日本人なんだから尾形光琳くらい見てなきゃダメよ」と言われた。
「金にダーク・ブルーのアイリスがいっぱい描かれた屏風があるでしょ」。カキツバタやショウブは英語では「アイリス」なわけで、つまり国宝「燕子花図屏風」のこと…ではなく、「ニューヨークのMETにあるから、必ず見て帰りなさい」と石岡が言ったのは、メトロポリタン美術館が所蔵する「八橋図屏風」のことだった。いや保存に配慮が必要な...