(カバー画像)豊田市美術館「アンドリュー・ワイエス展」内覧会にて撮影 photo by © cinefil
20世紀アメリカのリアリズムを代表する画家アンドリュー・ワイエス(1917-2009)。
彼の描く世界は静謐な空間に包まれ、どこか哀愁が感じられます。
精緻に描かれた情景は単なる目の前の景色を写実的に再現描写したものではなく、彼の深い精神世界が反映されたものです。ワイエスの作品には窓や扉など、「境界」を示すモティーフがたびたび描かれ、それらは、彼にとって「光と影」、「生と死」、「画家自身の内面と外の世界」をつなぐものであったようです。
1974 年に東京と京都で33万人を集めた日本で最初の個展以来、1995年、そして 2008~09年にもワイエスの展覧会が開催され、日本でのワイエス人気は不動のものとなりました。
このたび、東京都美術館で開館100周年記念として大好評を博した「アンドリュー・ワイエス展」が、豊田市美術館にて、7月18日から9月23日まで開催されています。
本展はワイエス没後はじめてとなる、17年ぶりの日本国内待望の展覧会となります。
第二次世界大戦後のアメリカでは、アメリカ抽象表現主義、ネオ・ダダ 、ポップアートといった美術が脚光を浴びていましたが、ワイエスは、独自の芸術を選び、ひたすら自分の身近な人々と風景を描き続けました。本展では、ワイエスの作品に描かれている「境界」に注目し、作品を辿ります。リアリズムの奥にあるワイエスの精神世界をご覧ください。
第1章 ワイエスという画家

豊田市美術館「アンドリュー・ワイエス展」内覧会にて撮影 photo by © cinefil

アンドリュー・ワイエス《自画像》1945年 テンペラ、パネル 63.5×76.2㎝ ナショナル・アカデミー・オブ・デザイン、ニューヨーク 豊田市美術館「アンドリュー・ワイエス展」内覧会にて撮影 photo by © cinefil
アンドリュー・ワイエスは、1917年7月12日、高名な挿絵画家だったN.C.ワイエスの5番目の子としてペンシルヴェニア州チャッズ・フォードの自宅で生まれました。幼い時から父の手ほどきを受けて画家の道へ進み、1937年の個展では全作品が完売するなど、若くして頭角を現します。同時代の前衛的な芸術動向から距離を置き、生まれ故郷のペンシルヴェニア州と夏の家のあるメイン州という、少年時代から行き来した二つの地域の身近な人々と風景を描きました。
ある日突然、踏切事故で父が他界してしまい、この作品は丁度そのころに描かれました。
ワイエスが残した自画像は多くはありませんが、本作からは、苦悩に満ちたワイエスの表情が感じられます。
第2章 光と影

アンドリュー・ワイエス《粉挽き場》1962年 テンペラ、パネル 77.5x130.8㎝ フィラデルフィア美術館 豊田市美術館「アンドリュー・ワイエス展」内覧会にて撮影photo by © cinefil
本作は後にワイエスの自宅となる風景です。残雪の残るどこか寂しい荒涼とした景色。画面手前の有刺鉄線は、外の世界と画家の内なる世界の境界を象徴するものかも知れません。そこに枯れ葉が引っかかっていますが、この小屋と穀物倉庫は古い建物で、以前にこの地を襲った洪水の爪痕でしょう。木立の間を飛ぶ2羽の白鳩は、ワイエスと妻の投影とみられます。
第3章 ニューイングランドの家 オルソン・ハウス

アンドリュー・ワイエス《オルソンの家》1939年 水彩、紙 丸沼芸術の森蔵
豊田市美術館「アンドリュー・ワイエス展」内覧会にて撮影 photo by © cinefil
1939年、ワイエスはのちに妻となるベッツィに連れられて初めてオルソン・ハウスを訪れました。住人のクリスティーナとアルヴァロとは良い関係を築き、それから30年にわたってこの姉弟と建物を描き続けたのです。本作は訪問の直後に描かれたもので、水彩画で平明で素直な表現が見てとれます。

アンドリュー・ワイエス《クリスティーナ・オルソン》1947年 テンペラ・パネル マイロン・クニン・コレクション、ミネアポリス 豊田市美術館「アンドリュー・ワイエス展」内覧会にて撮影 photo by
© cinefil
本作は、ワイエスが特に思い出深いと語っていた作品です。本作のモデルとなっているクリスティーナ・オルソンは進行性の病気のため、脚が不自由でしたが、弟・アルヴァロとふたりで、たくましく生き、独立心を持った女性で、ワイエスは、敬意の念を抱いていました。
午後の陽射しがオルソン・ハウスに差し込み、静かにたたずむクリスティーナを照らし出しています。外からの風が彼女の髪をなびかせ、彼女はどこか遠くを眺めているようです。
陽の光があふれる外の世界と暗い室内の境界となる扉の前に座るクリスティーナ。
ワイエスの作品には、窓や扉といったモティーフが多く見られますが、それらは、「外と内」、「光と影」、「生と死」といった世界の境界を示すものだったのでしょう。

アンドリュー・ワイエス《オルソン家の終焉》 1969年 テンペラ、パネル 46.5x49.5㎝ クリーブランド美術館 豊田市美術館「アンドリュー・ワイエス展」内覧会にて撮影 photo by © cinefil
脚の不自由なクリスティーナは1階で生活し、弟のアルヴァロもそうだったので、オルソン家の2階から上を誰も使うことはなく、ワイエスは、そこをアトリエとして使わせてもらっていました。姉弟の没後、この家を訪れたワイエスは、2階の窓から、屋根を見下ろし、かつて二人の声が煙突を通して聞こえていたことを思い出したそうです。
2羽のつばめが飛来する様子が描かれていて、姉弟を象徴しているようです。
第4章 まなざしのひろがり

アンドリュー・ワイエス《灯台》1983年 テンペラ、パネル 84.5x57.8cm ユニマットグループ 豊田市美術館「アンドリュー・ワイエス展」内覧会にて撮影 photo by © cinefil
メイン州のサザン・アイランドというワイエスが所有していた小さな島にある灯台の内部。
階段の上からは光が差しています。妻ベッツィの愛犬が光が差す入り口を見守っているかのようです。

アンドリュー・ワイエス《乗船の一行》1982年 テンペラ、パネル 70.5x51.4㎝ フィルブルック美術館、タルサ
豊田市美術館「アンドリュー・ワイエス展」内覧会にて撮影 photo by © cinefil
船の出航の時刻でしょうか。無人の部屋が描かれていますが、つい今しがたまで人でにぎわっていた気配が漂っています。静寂の中に微妙な雰囲気が描き出されています。
本作は、メイン州の島のワイエスの自宅を描いたものです。窓の外にヨットの帆の影が描かれ、乗船する人々を連想させています。誰もいなくなった部屋は、旅立ちを暗示しています。

アンドリュー・ワイエス《花びら》1991年 水彩、紙 75.5x56㎝ ボストン美術館
豊田市美術館「アンドリュー・ワイエス展」内覧会にて撮影 photo by © cinefil
ワイエスの自宅の母屋。開かれた窓は夫婦の寝室の窓で、花の香りや爽やかな空気が室内に入り込むようです。
第5章 境界線あるいは窓

アンドリュー・ワイエス《薄氷》 1969年 テンペラ、パネル 110.2x121.9㎝ 株式会社三井住友銀行
豊田市美術館「アンドリュー・ワイエス展」内覧会にて撮影 photo by © cinefil
本作は日本で初めて収蔵されました。50年ぶりの公開となります。
一見、抽象絵画と思われますが、一枚の枯れ葉は精緻に描かれ、氷下との境界となっています。薄氷の中にたくさんの落ち葉が見られます。繊細な気泡が水流を感じさせます。たくさんの落ち葉はワイエスの人生のさまざまな思い出でしょうか。「生と死」儚さが感じられる人生が凝縮された作品です。

アンドリュー・ワイエス《ヒトデ》1986年 水彩、紙 72.7x54.0㎝ フィルブルック美術館、タルサ 豊田市美術館「アンドリュー・ワイエス展」内覧会にて撮影 photo by © cinefil
双眼鏡を覗く妻ベッツィの姿が窓越しに見え、その向こうに水平線が見えます。今まで比較的、白と黒のモノトーンやセピア色など抑えた色彩で描かれたワイエスの作品でしたが、本作は海の澄んだ水色や白い窓枠や壁など明るい色彩が印象的です。
作品名になっているヒトデが窓枠に並んでいます。
妻は双眼鏡の先に海に出た息子たちの姿を追っているのでしょうか。窓という境界によって内と外が隔てられ、また、この切り取られた世界と、それを観ているこちら側の世界、更に双眼鏡が向けられたその先に広がる世界など、いろいろな想像が広がります。
ワイエスが描く静謐で叙情的な景色。ワイエスが描く繊細な風景は、単なる写実ではなく、窓や扉といった境界を介して、「外の世界と内なる世界」、「光と影」、「生と死」、彼の精神世界を描き出したのです。
是非、美術館でアンドリュー・ワイエスの世界をご堪能ください。

「アンドリュー・ワイエス展」開会式での豊田市美術館 館長 高橋秀治氏
約30年前にアンドリュー・ワイエスのアメリカ・メイン州の家に泊めてもらい、取材された高橋館長。当時のビデオや写真も残っています。NHK日曜美術館でも話されていましたが、報道内覧会、開会式でも丁寧にワイエスの芸術について語られ、館長さんのワイエス芸術への熱い想いが伝わり、感動しました。
同時開催!
コレクションを中心としたテーマ展 ワン・ルーム ワン・アーテイスト
光に溢れる広い展示空間の豊田市美術館ならでは!
超人気作家から新進気鋭の作家まで、現代アートを是非、お愉しみ下さい。
展示室1 ヤノベケンジ

ヤノベケンジ《ラッキー・ドラゴン構想模型》(部分) 2009年 豊田市美術館「コレクションを中心としたテーマ展 ワン・ルーム ワン・アーテイスト」内覧会にて撮影 photo by © cinefil
展示室3 梅津庸一

展示風景 豊田市美術館「コレクションを中心としたテーマ展 ワン・ルーム ワン・アーテイスト」内覧会にて撮影 photo by © cinefil
展示室4 岡崎和郎

展示風景 豊田市美術館「コレクションを中心としたテーマ展 ワン・ルーム ワン・アーテイスト」内覧会にて撮影 photo by © cinefil
展覧会概要
展覧会名:アンドリュー・ワイエス展
開催期間:2026年7月18日(土)-9月23日(水・祝)
休館日:月曜日(9月21日は開館)
開館時間:午前10時-午後5時30分( 入 場 は 午 後 5時まで)
会場:豊田市美術館展示室 8
観覧料:当日券 一般1,900円 高大生1,200円
オンラインチケット 一般1,700円 高大生1,000円
*観覧料の詳細、その他観覧料の減免対象者及び割引等については、下記ウェブサイトをご確認ください
豊田市美術館公式サイト:https://www.museum.toyota.aichi.jp/exhibition/wyeth2026
シネフィルチケットプレゼント
下記の必要事項、をご記入の上、アンドリュー・ワイエス展@豊田市美術館シネフィルチケットプレゼント係宛てに、メールでご応募ください。
抽選の上5組10名様に、無料観覧券をお送り致します。この観覧券は、非売品です。
転売業者などに転売されませんようによろしくお願い致します。
☆応募先メールアドレス miramiru.next@gmail.com
★応募締め切りは2026年8月10日 月曜日 24:00
記載内容
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