東京富士美術館は、1983 年、八王子に開館し、絵画、彫刻、写真、陶芸、武具など、約3 万点のコレクションを誇る国内屈指の美の殿堂です。
なかでも西洋絵画コレクションは、日本の美術館では珍しく、ルネサンスからロココ、新古典主義などオールドマスターの優品が揃っているのが特徴です。

このたび、名古屋市美術館において「珠玉の東京富士美術館コレクション 西洋絵画の400 年」が4月12日より6月8日まで開催されます。
本展は、東京富士美術館のコレクションより厳選された83点の作品によって、西洋美術の400年の歴史を振り返るものです。
東京富士美術館の西洋絵画コレクションは、16世紀のイタリア・ルネサンスから20 世紀の近現代美術までを網羅し、国内有数の質を誇っています。
今回の展覧会では、その中からティントレット、アントニー・ヴァン・ダイクといった日本でその作品を見る機会があまりない巨匠から、モネ、ルノワールといった人気の作家まで、83 点の厳選された珠玉の作品が展示されています。

巨匠たちの名品の数々に眼福のひとときをお過ごしいただけるでしょう。
また、それだけではなく、理念や思想を伝える手段としての絵画から、色彩と形態の喜びを謳いあげる絵画へと、時代とともに変貌する絵画の本質を学んでいただける機会となるでしょう。
是非この機会に、美術の教科書のように華やかな名画の饗宴をお愉しみください。
一部の作品を除き、ほぼ、全点写真撮影可能となっています。
それでは、展覧会構成に従って代表的な作品をご紹介致します。

画像: アルフレッド・シスレー《レディース・コーヴ、ラングランド湾、ウェールズ》 1897 年 油彩・カンヴァス 東京富士美術館蔵 ©東京富士美術館イメージアーカイブ/DNPartcom

アルフレッド・シスレー《レディース・コーヴ、ラングランド湾、ウェールズ》
1897 年 油彩・カンヴァス 東京富士美術館蔵 ©東京富士美術館イメージアーカイブ/DNPartcom

典型的な印象派の画家、シスレー。900点近い油彩作品のうち大部分は、パリ周辺の風景を題材にした穏やかな風景画でした。

Ⅰ 絵画の「ジャンル」と「ランク付け」

ルネサンスから19 世紀前半ごろまでの西洋絵画においては、絵画のジャンルによってその価格や価値が決まりました。特に歴史画は高尚なジャンルとされ、大画面作品も当時は歴史画のみに許されていました。
風景画、風俗画、静物画などは歴史画の一構成要素でしたが、17 世紀以降にオランダなどで市民社会が発展すると、こうしたジャンルの絵画が市民から絶大な人気を得るようになり、それぞれが1つのジャンルとして独立していきました。

Ⅰ-1.歴史画 神話、物語、歴史を描く~絵画の最高位~

最上位のランク付けがされた歴史画には、歴史上の出来事を題材にした絵画だけでなく、神話や古典文学・伝説を題材にしたものや、徳や学問といった抽象的な概念を表す寓意画も含まれます。

画像: ジャック゠ルイ・ダヴィッドの工房《サン゠ベルナール峠を越えるボナパルト》 1805 年 油彩・カンヴァス 東京富士美術館蔵 ©東京富士美術館イメージアーカイブ/DNPartcom

ジャック゠ルイ・ダヴィッドの工房《サン゠ベルナール峠を越えるボナパルト》
1805 年 油彩・カンヴァス 東京富士美術館蔵 ©東京富士美術館イメージアーカイブ/DNPartcom

第2 次イタリア遠征の「アルプス越え」伝説を描いた作品。英雄ナポレオンのイメージ形成に重要な役割を果たしました。

Ⅰ-2.肖像画 王侯貴族から市民階級へ~あるべき姿/あるがままの姿~

特定の誰かの似姿を表す肖像画は、他のジャンルより遥かに古い歴史を持ちます。16~17 世紀には支配者・権力者にとって肖像画を描かせることがステータスの1 つとなり、権威の可視化や富や名声を誇示する役割を担いました。

画像: アントニ―・ヴァン・ダイク《ベッドフォード伯爵夫人アン・カーの肖像》 1639 年 油彩・カンヴァス 東京富士美術館蔵 ©東京富士美術館イメージアーカイブ/DNPartcom

アントニ―・ヴァン・ダイク《ベッドフォード伯爵夫人アン・カーの肖像》 1639 年 油彩・カンヴァス 東京富士美術館蔵 ©東京富士美術館イメージアーカイブ/DNPartcom

イギリス国王チャールズ1 世の主席宮廷画家として知られる画家の、晩年の洗練され
た技術が窺える作品。

Ⅰ-3.風俗画 市井の生活へのまなざし

日常生活を描いた風俗画は、現実の風景を「記録」したものとは限らず、道徳、教訓、美徳、
風刺などが込められたものも少なくありません。

画像: ピエール・ベルゲーニュ《田園の奏楽》 17 世紀後半‒18 世紀初頭 油彩/カンヴァス 東京富士美術館蔵 ©東京富士美術館イメージアーカイブ/DNPartcom

ピエール・ベルゲーニュ《田園の奏楽》 17 世紀後半‒18 世紀初頭 油彩/カンヴァス
東京富士美術館蔵 ©東京富士美術館イメージアーカイブ/DNPartcom

人びとが集い、楽器を持って演奏をしている人や歌詞と思われる紙片を持っている人々が
描かれています。音楽を楽しんでいる日常生活のひとこまです。

Ⅰ-4.風景画 「背景」から純粋な風景へ~自然と都市~

自然風景描写は、当初は歴史画の「背景」として登場しましたが、次第に風景そのものが主
題となった絵画が描かれるようになりました。

画像: カナレット(ジョヴァンニ・アントニオ・カナル)《ヴェネツィア、サン・マルコ広場》 1732-33 年頃 油彩・カンヴァス 東京富士美術館蔵 ©東京富士美術館イメージアーカイブ/DNPartcom

カナレット(ジョヴァンニ・アントニオ・カナル)《ヴェネツィア、サン・マルコ広場》
1732-33 年頃 油彩・カンヴァス 東京富士美術館蔵 ©東京富士美術館イメージアーカイブ/DNPartcom

カナレットは、18 世紀ヴェネツィアの画家で、都市の風景を正確に描写する「ヴェドゥータ(都市景観画)」を多数制作しました。

Ⅰ-5.静物画 動かぬ生命、死せる自然

静物画は、生活に密着した自然物、人工物などを描くジャンルです。
歴史画や肖像画に添えられた「物」にはしばしば象徴的な意味が託されました。16 世紀末から17 世紀にかけては「物」自体が主役として描かれるようになっていきました。

画像: コルネリス・ファン・スペンドンク《花と果物のある静物》 1804 年 油彩・カンヴァス 東京富士美術館蔵 ©東京富士美術館イメージアーカイブ/DNPartcom

コルネリス・ファン・スペンドンク《花と果物のある静物》 1804 年 油彩・カンヴァス
東京富士美術館蔵 ©東京富士美術館イメージアーカイブ/DNPartcom

フランスで活躍したオランダの静物画家。対角線上に配された花と果物と、神話に取材
したレリーフが施された石台が緻密に描き込まれています。

Ⅱ 激動の近現代-「決まり事」の無い世界

1789年のフランス革命と19 世紀前半のイギリスの産業革命を経ての、近代的な市民社会、資本主義社会の成立による社会構造の変化は、絵画にも大きな影響を与えました。
前時代の美術アカデミーや大公募展であるサロンによって形成された価値観は大きく揺らぎ、画家個人の感受性や個性を重んじるロマン主義が台頭するようになりました。
社会構造の変化によって誕生した中産階級(ブルジョワジー)の嗜好が反映されることで、風俗画、風景画、静物画といった前時代では歴史画の下に置かれた作品の需要が高まり、歴史画の優位も崩れていきました。

Ⅱ-1.「物語」の変質

18 世紀末から19 世紀に台頭したロマン主義は、それまでのジャンルやランクではなく
個人の感受性や個性を重んじるもので、画題も、同時代の事件や戦争などを取り上げたものから異国の風俗まで広がりを見せるようになりました。
そうしたロマン主義に反発するかたちで起こったレアリスム(写実主義)の画家たちは、身
近な現実や社会を理想化せずにありのままに描くようになりました。

1830~40 年代には、パリ南東のバルビゾン村に多くの画家たちが集まり、森や都市近郊の田園、農村など現実的な風景を描きました(バルビゾン派)。

19 世紀にチューブ入りの絵具が開発、普及され屋外での制作が可能になると、画家たちは実景を前に光の明暗を捉えられるようになり、そうした制作姿勢は後の印象派の画家たちにも引き継がれていきました。

20 世紀に入ると、こうした現実を捉える絵画だけでなく、人間の夢や無意識から非合理
的なイメージを表すシュルレアリスムが登場しました。

Ⅱ-1-1. 物語/現実

画像: ジャン゠フランソワ・ミレー《鵞鳥番の少女》 1866‒67 年 油彩・カンヴァス 東京富士美術館蔵 ©東京富士美術館イメージアーカイブ/DNPartcom

ジャン゠フランソワ・ミレー《鵞鳥番の少女》 1866‒67 年 油彩・カンヴァス
東京富士美術館蔵 ©東京富士美術館イメージアーカイブ/DNPartcom

《落ち穂拾い》でも有名なミレーの牧歌的な世界を表した晩年の作品。

Ⅱ-1-2. 幻想の世界へ

ルネ・マグリットに代表される現実にはありえない世界を描いた絵画。

Ⅱ-2.造形の革新

ルネサンス以降、絵画は三次元的空間を二次元平面に落とし込むことが重要視されました。物理的な筆痕は絵具という「物質」を感じさせるために排除され、写真のような滑らか
な絵肌が好まれました。

しかし、近代になると色彩と、それと結びつくかたちで筆触が重要視されるようになり、印象派の画家たちは、絵具を混ぜずに原色で画布に小さな筆触を並べる「筆触分割」という技法で画面の明るさを保ちつつ、光と色彩の微妙な変化を捉えました。

続く新印象派の画家たちはこの技法を突き詰め、点描を用いた緻密な画面を作り上げました。また、印象派の描く形態の不明瞭さを嫌うセザンヌのように構築的な空間表現を志向する画家も登場しました。こうした造形に対する意識の変化は、20世紀のキュビスムの登場へと繋がっていきました。

画像: ポール・セザンヌ《オーヴェールの曲がり道》 1873 年頃 油彩・カンヴァス 東京富士美術館蔵 ©東京富士美術館イメージアーカイブ/DNPartcom

ポール・セザンヌ《オーヴェールの曲がり道》 1873 年頃 油彩・カンヴァス 
東京富士美術館蔵 ©東京富士美術館イメージアーカイブ/DNPartcom

印象派展に出品していた時期の作品、屋根や壁面の幾何学的表現に、後のセザンヌの作風
の片鱗が見られます。

Ⅱ-2-2. フォルムと空間

画像: クロード・モネ《睡蓮》 1908 年 油彩・カンヴァス 東京富士美術館蔵 ©東京富士美術館イメージアーカイブ/DNPartcom

クロード・モネ《睡蓮》 1908 年 油彩・カンヴァス 
東京富士美術館蔵 ©東京富士美術館イメージアーカイブ/DNPartcom

「印象派の祖」「光の画家」ともいわれるモネの作品。光を受けて刻々と移りゆく景色を描き出しました。遠近法によって奥行きを生み出す従来の空間表現にかわり、水面の一部を切り取り、クローズアップする表現が用いられています。モネが68 歳の時に描いた15 点の睡蓮の連作のうちの1 点。

エコール・ド・パリの画家の作品も多数展示!

画像: マリー・ローランサン《二人の女》 20 世紀前半油彩・カンヴァス 東京富士美術館蔵 ©東京富士美術館イメージアーカイブ/DNPartcom

マリー・ローランサン《二人の女》 20 世紀前半油彩・カンヴァス
東京富士美術館蔵 ©東京富士美術館イメージアーカイブ/DNPartcom

マリー・ローランサンは、20世紀前半に活躍した女性画家で、同時代の画家には、マティス、ドラン、ピカソ、ブラックらがいますが、彼らの様式を模倣することなく、パステルカラーの独自の画風を生み出しました。

本展は、壮大な西洋絵画400年の歴史を豪華な名画でたどり、美術の変遷をわかりやすく学んでいただける展覧会です。
東京富士美術館コレクションの珠玉作品の饗宴により、遥かルネサンスから20世紀の近現代まで旅して、夢のようなひとときをお過ごしください。

展覧会概要

展覧会名 珠玉の東京富士美術館コレクション 西洋絵画の400 年
Masterpieces from Tokyo Fuji Art Museum400 Years of Western Paintings
会期 2025 年4 月12 日[土]-6 月8 日[日][50 日]
休館日 月曜日(5 月5 日[月・祝]は開館)、5 月7 日[水]
会場 名古屋市美術館 企画展示室1・2
観覧料 一般1,600(1,400)円、高大生800(600)円、中学生以下無料
( )内は通常前売・20 名以上の団体料金
公式サイト

シネフィルチケットプレゼント

下記の必要事項、をご記入の上、「珠玉の東京富士美術館コレクション 西洋絵画の400 年」@名古屋市美術館 シネフィルチケットプレゼント係宛てに、メールでご応募ください。
抽選の上5組10名様に、無料観覧券をお送り致します。この観覧券は、非売品です。
転売業者などに転売されませんようによろしくお願い致します。
☆応募先メールアドレス miramiru.next@gmail.com
★応募締め切りは2025年4月21日 月曜日 24:00
記載内容
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