「日本ならでは、日本的なものの見方」とはなにか?

もちろん雪舟や周文のような漢画・禅画が権力者たる武家階級に好まれるようになった鎌倉・室町時代に、「やまと絵」が平安時代風の装飾的でフラットな表現をただ頑なに守り続けたわけではないし、漢画の側もまたあくまで日本で描かれた以上は、そこに「やまと絵」的な日本的な表現も入り込んでいく。そうした海外の影響を受けながらいかに日本人が日本人ならではの視覚表現=ものの見方を発展させて来たのか? 明治以降の西洋文明・文化の巨大な潮流の中でいまだにあっぷあっぷしている感もなきにしもあらず、さらにグローバリゼーションの波にも晒されている現代の我々にとって、その意味でも一度触れてみる価値があるのが、「やまと絵」とその歴史だ。

ではその起源はどこにあったのか? この展覧会はそこにもしっかり踏み込んでいるのだが、「四大絵巻」の中でも国宝「伴大納言絵巻」巻上と国宝「鳥獣戯画」甲巻にはまったく文字・言葉がないことからしたらパラドックスとも思えることとして、実はそれは文字、奈良時代から平安時代にかけて日本人が浴びるように受容した漢字の、つまり中国語で書かれた文献と、平安時代に日本独自の文字として生まれた平仮名に漢字を交えて書かれた和歌の文字表現にあるという。

画像: 法華経冊子(部分) 平安時代・11世紀 京都国立博物館蔵 重要文化財 【展示期間:11月7日(火)~12月3日(日)】

法華経冊子(部分) 平安時代・11世紀 京都国立博物館蔵 重要文化財 
【展示期間:11月7日(火)~12月3日(日)】

平安時代の人たちは、文字を文字情報としてだけ認識するのではなく、和歌や漢詩、さらには仏教の経典までも、とても美しく絵が描かれたり装飾された紙に書くことを好んだ。文字の視覚的な構成を絵画や紋様、さらには紙に不規則に現れた抽象的な曲線や金銀の装飾と同等に捉えて、その美しさを突き詰めようとしていたようなのだ。

文字と背景のはずの紙の面を同等に見ること。さらには文字を意味を伝えるものとして見る一方で、そのフォルムの美しさを絵画や紋様と同等に愛でること。さらには絵画が具象表現であると同時に、紋様のようなフォルムと平面上のパターンとしても受容すること。

現代では村上隆が「スーパーフラット」を追及したり、あえて遠近感を殺す望遠レンズを好んだ黒澤明や、やはり遠近感を目立たせないように50mmレンズを偏愛した小津安二郎の美意識も、源流はこんなところにあるのかもしれない。

画像: 【展示風景】紫式部日記絵巻断簡  鎌倉時代・13世紀 東京国立博物館蔵 重要文化財

【展示風景】紫式部日記絵巻断簡  鎌倉時代・13世紀 東京国立博物館蔵 重要文化財

※四期に分けて展示替えがあるため、 こちらの出品目録で展示時期を確認の上で訪館することをお勧めします。

特別展「やまと絵 -受け継がれる王朝の美-」
2023年10月11日(水) ~ 2023年12月3日(日)

会場 東京国立博物館 平成館(上野公園)
開館時間 9時30分~17時00分
 金曜・土曜は20時00分まで開館(総合文化展は17時00分閉館、ただし11月3日(金・祝)より、金曜・土曜は19時00分閉館)。最終入場は閉館の60分前まで
休館日 月曜日(ただし本展のみ11月27日(月)は開館)
観覧料金 (オンライン購入は こちら
一般 2,100円
大学生 1,300円
高校生 900円
 土・日・祝日のみ事前予約制(日時指定)。平日は事前予約不要。
(注)中学生以下、障がい者とその介護者一名は無料です。入館の際に障がい者手帳、学生証などをご提示ください。
(注)本展チケットで、会期中観覧日当日に限り、総合文化展もご覧になれます。ただし、総合文化展は全日17時00分に終了(ただし11月3日〔金・祝〕以降は金曜・土曜は19時00分に終了)となるため、それ以降はご覧いただけません。なお、本展日時指定時間前に総合文化展をご覧いただくことは可能です。
詳細は、展覧会公式サイトチケット情報のページでご確認ください。

主催 東京国立博物館、NHK、NHKプロモーション、読売新聞社
協賛 TOPPAN、三井住友海上
お問合せ 050-5541-8600(ハローダイヤル)
展覧会公式サイト https://yamatoe2023.jp/
展覧会公式 X(旧Twitter) @yamatoe2023

招待券読者プレゼント

画像: 鎌倉時代の「似絵」展示の一部 手前)公家列影図 鎌倉時代・13世紀 京都国立博物館 蔵 【展示期間 10月11日(水)〜11月5日(日)】

鎌倉時代の「似絵」展示の一部
手前)公家列影図 鎌倉時代・13世紀 京都国立博物館 蔵 【展示期間 10月11日(水)〜11月5日(日)】

下記の必要事項、をご記入の上、「やまと絵」@東京国立博物館 シネフィルチケットプレゼント係宛てに、メールでご応募ください。
抽選の上3組6名様に、招待券をお送り致します。この招待券は、非売品です。
転売業者などに転売されませんようによろしくお願い致します。
☆応募先メールアドレス miramiru.next@gmail.com
★応募締め切りは2023年11月5日 日曜日 24:00
記載内容
1、氏名 
2、年齢
3、当選プレゼント送り先住所(応募者の郵便番号、電話番号、建物名、部屋番号も明記)
4、ご連絡先メールアドレス
5、記事を読んでみたい映画監督、俳優名、アーティスト名
6、読んでみたい執筆者
7、連載で、面白いと思われるもの、通読されているものの、筆者名か連載タイトルを、
ご記入下さい(複数回答可)
8、よくご利用になるWEBマガジン、WEBサイト、アプリを教えて下さい。
9、シネフィルのこの記事または別の記事でもSNSでのシェアまたはリツイートをお願い致します。

This article is a sponsored article by
''.