東京ステーションギャラリーにおいて、大阪の風を感じる、華やかで多彩な史上初の大規模展「大阪の日本画」が6月11日まで開催中です。
近代大阪の美術は町人文化に支えられ、伝統にとらわれない自由な表現による個性豊かな芸術が花開きました。
大正から昭和前期にかけては画壇(優れた画家たちによる交流の場)としての活動が隆盛を極め、心情を映し出す人物画の北野恒富(きたの・つねとみ)、女性画家の道を拓いた島成園(しま・せいえん)、浪速の日常生活を温かく描いた菅楯彦(すが・たてひこ)、新しい南画を主導した矢野橋村(やの・きょうそん)など多くの画家が個性豊かな作品を生み出しました。
本展は、明治から昭和に至る近代大阪の日本画に光を当て、50名を超える画家による約150点の作品が展示される史上初の大規模展です。
「ひとを描く」「文化を描く」「新たなる⼭⽔を描く」「⽂⼈画」「船場派」「新しい表現の探求と⼥性画家の飛躍」の6つの章で構成されています。
大阪で生まれた珠玉の作品が集結しました。是非、この機会にお運びください。
それではシネフィルでも展覧会構成に従っていくつかの作品を観ていきましょう。
第1章 ひとを描く―北野恒富とその門下
大阪の「人物画」は、明治時代後半から昭和初期にかけて、北野恒富とその弟子たちによって大きく開花しました。恒富は、新聞小説の挿絵などを手がけ、文展や院展で人物画の名手として名を馳せ、大阪の美術団体に参加し、大阪の日本画壇の中心的存在として活躍しました。
当時「悪魔派」といわれた妖艶で頽廃的な雰囲気をもつ恒富の人物表現は、普通の美人画とは異なり、人の内面を画面全体で描き出している点に特徴があります。
《風》は、木枯らしに身をかがめて歩く女性。美しいだけではない表情を描き出しています。
大阪の風物詩、今宮戎神社の正月行事・十日戎で、商売繁盛を祈り、縁起物の「宝恵籠(ほえかご)」に乗る舞妓。少し緊張感のある面持ちが感じられます。着物や髪飾り、「宝恵籠」の紅白が華やかに描かれています。
北野恒富は大正期には《道行》(本展では展示されません)で、男女が相携えて死出の旅路に向かつて行く光景を描き、妖艶で退廃的な作風でしたが、本作《五月雨》では、上品で清楚な美人画を見事に描きました。雨の中、舞妓が池の鯉に餌をやっている日常の何気ない情景を描いています。舞子の表情はどことなく儚げで、憂いを帯びているように感じられます。
第2章 文化を描く―菅楯彦、生田花朝
古き良き大阪庶民の生活を温かく表現した「浪速風俗画」は、菅楯彦によって確立されました。伝統的な風俗や風景を題材に絵を描き自賛を書き入れ、四条派と文人画を融合させたスタイルは、江戸時代より続く大阪人独特の洗練された感性に響くものとして広く愛されました。「阪都四つ橋」はかつて4つの橋がかかり、大阪の名所となっていた「四つ橋」の在りし日の賑わいを描いた作品。
弟子の生田花朝は、楯彦の作風を受け継ぎましたが、豊かな色彩感覚により同時代の風物詩も積極的に描き、軽やかでユーモアあふれる作品を多く残しました。
第3章 新たなる⼭⽔を描く―矢野橋村と新南画
矢野橋村は、日本の風土に基づく日本南画をつくることを目標として、江戸時代より続く伝統的な文人画に近代的感覚を取り入れた革新的な「新南画」を積極的に推し進めました。もともと文人画や中国文化に対する素養のあった大阪では、新南画は容易に受け入れられたこともあり、近代大阪画壇において重要な足跡を残しました。
第4章 ⽂⼈画―街に息づく中国趣味
江⼾時代、都への⽞関⼝にあたる⼤阪には様々な⽂物が集まり、煎茶をはじめとする中国趣
味が栄え⽂⼈画が流⾏しました。⼤阪では、漢詩や漢⽂の教養を⾝に付けた市⺠が多かった
こともあり、明治以降も⽂⼈画⼈気が続き、⻄⽇本を中⼼に各地から⽂⼈画家が集まり優れ
た作品が多く⽣まれました。
《獨樂園図》は、俗世間を離れ、隠遁生活で大自然を満喫しているような作品です。
5章 船場派―商家の床の間を飾る画
⼤阪で広く市⺠に受け入れられたのが、四条派の流れをくむ絵画「船場派」です。船場派に
は 2つの系譜がみられます。幕末・明治期に活躍した⻄⼭芳園(にしやま・ほうえん)・⻄
⼭完瑛(にしやま・かんえい)によって確⽴された⻄⼭派の系譜。もう1つは明治期に深⽥
直城(ふかだ・ちょくじょう)により普及した系譜。いずれも京都の四条派とは異なり、あっさりとスマートに描く⼤阪らしい作⾵で⼈気を博しました。
平井直⽔の《梅花孔雀図》はセントルイス万国博覧会に出品し、銀賞を受賞しました。
第6章 新しい表現の探求と女性画家の⾶躍
明治時代以降、新聞社や出版社が多く集積した大阪には、全国から多くの画家たちが集まりました。彼らは挿絵画家などとして勤務する一方で、展覧会に出品したり研究会に参加したりして活動しました。また、大阪では江戸時代より女性画家が活躍していたことに加え、富裕層を中心に子女に教養として絵画を習わせる傾向が強く、多くの優れた女性画家が登場しました。様々な経歴で集まった人々や女性画家の活躍により、大阪の日本画は新しい感性に基づく魅力的な表現が生まれました。
島成園は、上村松園、池田蕉園とともに「三園」と称され、大阪において女性画家の先駆者となりました。晴れ着を着た少女たちと、それを見ている普段着姿の少女。愛らしい少女たちを描いた本作は、妖艶な女性像で知られる成園には珍しい作品です。
美人画だけにとどまらない、様々な女性を描いた作品に魅了され、大阪庶民の何気ない日常を描いた風俗画、懐かしい年中行事、「十日戎」や「七夕」「天神祭り」など、浪速の風物詩を描いた作品に心温まります。
文人画に近代的感覚を取り入れた革新的な「新南画」や、中国の「文人画」を大阪風に進化させ、大自然を色彩豊かに描いた風景画、さっぱりと洗練され、風情のある「船場派」(大阪の「四条派」)の作品、女性画家による新しい風を感じる作品など、多彩な作品が盛りだくさんな史上初の大規模展となっています。
見ごたえある大阪の日本画を是非、ご堪能ください。
展覧会概要
展覧会名 大阪の日本画
会期 2023年4月15日(土)~2023年6月11日(日) ※会期中、展示替えを行います
会場 東京ステーションギャラリー
住所 東京都千代田区丸の内1-9-1
時間 10:00~18:00
金曜日~20:00 ※入館は閉館30分前まで
休館日 月曜日
※6月5日は開館
観覧料 一般 1,400円
高校・大学生 1,200円
中学生以下 無料
※障がい者手帳等持参の方は100円引き。介添者1名は無料
TEL 03-3212-2485
URL https://www.ejrcf.or.jp/gallery/
シネフィルチケットプレゼント
下記の必要事項、をご記入の上、「大阪の日本画」@東京ステーションギャラリー シネフィルチケットプレゼント係宛てに、メールでご応募ください。
抽選の上5組10名様に、招待券をお送り致します。この招待券は、非売品です。
転売業者などに転売されませんようによろしくお願い致します。
☆応募先メールアドレス miramiru.next@gmail.com
★応募締め切りは2023年5月15日 月曜日 24:00
記載内容
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