新しい大阪のランドマークとなった大阪中之島美術館では、2023年1月21日より開館1周年を記念した特別展 大阪の日本画が開催されています。
近代大阪の美術は町人文化に支えられ、伝統にとらわれない自由な表現による多彩な芸術が花開きました。
大正から昭和前期にかけては画壇(優れた画家たちによる交流の場)としての活動が隆盛を極め、心情を映し出す人物画の北野恒富(きたの・つねとみ)、女性画家の道を拓いた島成園(しま・せいえん)、浪速の日常生活を温かく描いた菅楯彦(すが・たてひこ)、新しい南画を主導した矢野橋村(やの・きょうそん)など多くの画家が個性豊かな作品を生み出しました。

本展は、明治から昭和に至る近代大阪の日本画に光を当て、60名を超える画家による約150点の作品が展示される史上初の大規模展です。
「ひとを描く」「文化を描く」「新たなる⼭⽔を描く」「文人画」「船場派」「新しい表現の探求と女性画家の飛躍」の6つの章で構成されています。
大阪で生まれた珠玉の作品が集結しました。是非、この機会にお運びください。
それではシネフィルでも展覧会構成に従っていくつかの作品を観ていきましょう。

第1章 ひとを描く―北野恒富とその門下

大阪の「人物画」は、明治時代後半から昭和初期にかけて、北野恒富とその弟子たちによって大きく開花しました。恒富は、新聞小説の挿絵などを手がけ、文展や院展で人物画の名手として名を馳せ、大阪の美術団体に参加し、大阪の日本画壇の中心的存在として活躍しました。

画像: 北野恒富《風》大正6年(1917)広島県立美術館蔵 *前期展示(2月26日まで) photo by ©cinefil

北野恒富《風》大正6年(1917)広島県立美術館蔵 *前期展示(2月26日まで)

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当時「悪魔派」といわれた妖艶で頽廃的な雰囲気をもつ恒富の人物表現は、普通の美人画とは異なり、人の内面を画面全体で描き出している点に特徴があります。
《風》は、木枯らしに身をかがめて歩く女性。美しいだけではない表情を描き出しています。

画像: 北野恒富《宝恵籠》昭和6年(1931)頃 大阪府立中之島図書館蔵 *通期展⽰ photo by ©cinefil

北野恒富《宝恵籠》昭和6年(1931)頃 大阪府立中之島図書館蔵 *通期展⽰

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大阪の風物詩、今宮戎神社の正月行事・十日戎で、商売繁盛を祈り、縁起物の「宝恵籠(ほえかご)」に乗る舞妓。少し緊張感のある面持ちが感じられます。着物や髪飾り、「宝恵籠」の紅白が華やかに描かれています。

画像: 北野恒富《五月雨》昭和13年(1938)大阪中之島美術館蔵 *前期展示(2月26日まで) photo by ©cinefil

北野恒富《五月雨》昭和13年(1938)大阪中之島美術館蔵 *前期展示(2月26日まで)

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北野恒富は大正期には《道行》(本展では展示されません)で、男女が相携えて死出の旅路に向かって行く光景を描き、妖艶で退廃的な作風でしたが、本作《五月雨》では、上品で清楚な美人画を見事に描きました。雨の中、舞妓が池の鯉に餌をやっている日常の何気ない情景を描いています。舞子の表情はどことなく儚げで、憂いを帯びているように感じられます。

第2章 文化を描く―菅楯彦、生田花朝

古き良き大阪庶民の生活を温かく表現した「浪速風俗画」は、菅楯彦によって確立されました。伝統的な風俗や風景を題材に絵を描き自賛を書き入れ、四条派と文人画を融合させたスタイルは、江戸時代より続く大阪人独特の洗練された感性に響くものとして広く愛されました。「阪都四つ橋」はかつて4つの橋がかかり、大阪の名所となっていた「四つ橋」の在りし日の賑わいを描いた作品。

画像: 菅楯彦《阪都四つ橋》昭和21年(1946)鳥取県立博物館蔵 *前期展⽰(2 ⽉ 26 ⽇まで)

菅楯彦《阪都四つ橋》昭和21年(1946)鳥取県立博物館蔵 *前期展⽰(2 ⽉ 26 ⽇まで)

弟子の生田花朝は、楯彦の作風を受け継ぎましたが、豊かな色彩感覚により同時代の風物詩も積極的に描き、軽やかでユーモアあふれる作品を多く残しました。

画像: 生田花朝《天神祭》 1935年(昭和10)頃 大阪府立中之島図書館蔵 *通期展示 photo by ©cinefil

生田花朝《天神祭》 1935年(昭和10)頃 大阪府立中之島図書館蔵 *通期展示
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第3章 新たなる⼭⽔を描く―矢野橋村と新南画

矢野橋村は、日本の風土に基づく日本南画をつくることを目標として、江戸時代より続く伝統的な文人画に近代的感覚を取り入れた革新的な「新南画」を積極的に推し進めました。もともと文人画や中国文化に対する素養のあった大阪では、新南画は容易に受け入れられたこともあり、近代大阪画壇において重要な足跡を残しました。《那智奉拝》の滝は南画以上の圧巻の迫力です。

画像: 矢野橋村《那智奉拝》昭和18年(1943)大阪市立美術館蔵 *通期展示 photo by ©cinefil

矢野橋村《那智奉拝》昭和18年(1943)大阪市立美術館蔵 *通期展示
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第4章 ⽂⼈画―街に息づく中国趣味

江戸時代、都への玄関口にあたる大阪には様々な文物が集まり、煎茶をはじめとする中国趣味が栄え文人画が流行しました。大阪では、漢詩や漢文の教養を身に付けた市民が多かったこともあり、明治以降も文人画人気が続き、西日本を中心に各地から文人画家が集まり優れた作品が多く生まれました。《獨樂園図》は、俗世間を離れ、隠遁生活で大自然を満喫しているような作品です。

画像: 森琴石《獨樂園図》 明治17年(1884) 西宮K氏コレクション *2月19日まで

森琴石《獨樂園図》 明治17年(1884) 西宮K氏コレクション *2月19日まで

5章 船場派―商家の床の間を飾る画

⼤阪で広く市⺠に受け入れられたのが、四条派の流れをくむ絵画「船場派」です。船場派には 2つの系譜がみられます。幕末・明治期に活躍した⻄⼭芳園(にしやま・ほうえん)・⻄⼭完瑛(にしやま・かんえい)によって確⽴された⻄⼭派の系譜。もう1つは明治期に深⽥直城(ふかだ・ちょくじょう)により普及した系譜。いずれも京都の四条派とは異なり、あっさりとスマートに描く⼤阪らしい作⾵で⼈気を博しました。
平井直⽔の《梅花孔雀図》はセントルイス万国博覧会に出品し、銀賞を受賞しました。

画像: 平井直水《梅花孔雀図》 明治37年(1904) 大阪中之島美術館蔵 *通期展示 photo by ©cinefil

平井直水《梅花孔雀図》 明治37年(1904) 大阪中之島美術館蔵 *通期展示

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第6章 新しい表現の探求と女性画家の⾶躍

明治時代以降、新聞社や出版社が多く集積した大阪には、全国から多くの画家たちが集まりました。彼らは挿絵画家などとして勤務する一方で、展覧会に出品したり研究会に参加したりして活動しました。また、大阪では江戸時代より女性画家が活躍していたことに加え、富裕層を中心に子女に教養として絵画を習わせる傾向が強く、多くの優れた女性画家が登場しました。様々な経歴で集まった人々や女性画家の活躍により、大阪の日本画は新しい感性に基づく魅力的な表現が生まれました。

画像: 島成園《祭りのよそおい》大正2年(1913)大阪中之島美術館蔵 *通期展示 photo by ©cinefil

島成園《祭りのよそおい》大正2年(1913)大阪中之島美術館蔵 *通期展示

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島成園は、上村松園、池田蕉園とともに「三園」と称され、大阪において女性画家の先駆者となりました。晴れ着を着た少女たちと、それを見ている普段着姿の少女。愛らしい少女たちを描いた本作は、妖艶な女性像で知られる成園には珍しい作品です。

画像: 橋本花乃《七⼣》 昭和 5-6 年(1930-31)頃 ⼤阪中之島美術館蔵 ※通期展示 photo by ©cinefil

橋本花乃《七⼣》 昭和 5-6 年(1930-31)頃 ⼤阪中之島美術館蔵 ※通期展示
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美人画だけにとどまらない、様々な女性を描いた作品に魅了され、大阪庶民の何気ない日常を描いた風俗画、懐かしい年中行事、「十日戎」や「七夕」「天神祭り」など、浪速の風物詩を描いた作品に心温まります。
さっぱりとした風情のある「船場派」(大阪の「四条派」)の叙情的な風景画や、中国の「文人画」を大阪風に進化させ、大自然を色彩豊かに描いた作品や、女性画家による新しい風を感じる作品など、多彩な作品が盛りだくさんな史上初の大規模展となっています。
見ごたえある大阪の日本画を是非、ご堪能ください。

画像: 展覧会風景 photo by ©cinefil

展覧会風景 photo by ©cinefil

展覧会概要

展覧会名 開館1 周年記念特別展 大阪の日本画 Japanese Paintings of Modern Osaka
会期 2023年1月21日(土)~4月2日(日)[会期63日間]
前期:1月21日(土)~2月26日(日) 後期:2月28日(火)~4月2日(日)
※会期中、展示替えがあります。
休館日 月曜日(ただし3月20日は開館)
開場時間 10時~17時(入場は16時30分まで)
観覧料 一般 1,700円(前売・団体1,500円)
高大生1,000円(前売・団体 800円)
●中学生以下無料
●税込み価格。団体は20名以上
●障がい者手帳などをお持ちの方(介護者1名を含む)は当日料金の半額(要証明)。
ご来館当日、2階のチケットカウンターにてお申し出ください
●一般以外の料金でご利用される方は証明できるものを当日ご提示ください
●本展は、大阪市内在住の65歳以上の方も一般料金が必要です
●前売券は2022年12月1日~2023年1月20日まで販売
会場 大阪中之島美術館(〒530-0005 大阪市北区中之島4-3-1)
電話:06-4301-7285(大阪市総合コールセンター・年中無休 8時~21時)
公式サイト  https://nakka-art.jp

画像: 美術館外観 photo by ©cinefil

美術館外観 photo by ©cinefil

主催 大阪中之島美術館、毎日新聞社、NHK大阪放送局
協賛 孔官堂、大和ハウス工業、フォーラムkaya新生社
助成 令和4年度地域ゆかりの文化資産を活用した展覧会支援事業

※本展は、前期と後期で約7割の作品を展示替えします。そのため、通常の前売券の他に、前期・後期をお得に楽しめるチケット【2枚セット券】もございます。(お二人での1回観賞での利用も可)

シネフィルチケットプレゼント

下記の必要事項、をご記入の上、「開館1 周年記念特別展 大阪の日本画」@大阪中之島美術館 シネフィルチケットプレゼント係宛てに、メールでご応募ください。
抽選の上5組10名様に、招待券をお送り致します。この招待券は、非売品です。
転売業者などに転売されませんようによろしくお願い致します。
☆応募先メールアドレス miramiru.next@gmail.com
★応募締め切りは2023年1月30日 月曜日 24:00
記載内容
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