未来を担う映画作家の育成プロジェクトとして、園子温、橋口亮輔、矢口史靖、李相日、荻上直子、内田けんじ、石井裕也など、現在第一線で活躍する監督たちの商業デビュー作を世に送り出してきた「PFF(ぴあフィルムフェスティバル)スカラシップ」。
PFFアワードの受賞監督からオリジナル企画を募り、毎年1名を選出して企画・製作から劇場公開までをプロデュースしており、これまでに橋口亮輔監督『二十歳の微熱』、李相日監督『BORDER LINE』、石井裕也監督『川の底からこんにちは』など日本映画史に残る名作の数々を手掛けてきた。1984年の創設から38年を迎える今年2022年の夏に、新たに2名の商業映画デビュー作、小松孝監督『猫と塩、または砂糖』、工藤梨穂監督『裸足で鳴らしてみせろ』の2作品を連続公開することが決定した。
第25回PFFスカラシップ作品
小松 孝監督 『猫と塩、または砂糖』
**社会を拒絶し母のペット「猫」になった長男、慎ましい母、アル中&糖尿病の父の3人で暮らす佐藤家。母と元彼の再会をきっかけに、その娘も巻き込み、ひとつ屋根の下、5人の奇妙な同居生活が始まる--。シニカルなユーモアで「幸せ」とは何かを模索する家族を描く。**
監督は、映画『食卓』で第38回ぴあフィルムフェスティバル「PFFアワード2016」グランプリを受賞、その後、第35回バンクーバー国際映画祭(17)に正式出品され注目された小松孝。PFFスカラシップの権利を獲得し、本作『猫と塩、または砂糖』で劇場デビューとなる。多肉植物マニア、地下アイドル(NILKLY)、「鬼滅の刃」好きで、自身の人生経験を活かした、繊細さとシニカルさを持ち合わせたコメディ映画を得意とする“クセの強い”40歳の新人映画監督。
母の「猫」となった佐藤家の長男役に、TVや舞台で活躍中の田村健太郎。その母親役に宮崎美子、父親役に諏訪太朗。佐藤家に住みつく母の元彼役に池田成志。その娘で主人公を翻弄する美少女役を、同世代から人気を集める女性アーティスト・吉田凜音(りんね)が演じている。主題歌は、地下アイドル好きを公言する小松監督自らが熱望し、NILKLY(ニルクライ)の楽曲起用が実現した。
≪小松孝監督 コメント≫
四十才にしての長編映画デビュー作になります。二十代半ばならもっとよかったですが、健康寿命を伸ばして引退を遅らせる事にします。常温で放置してしまった白トリュフのような風味の映画です。よろしくお願いします。
『猫と塩、または砂糖』
2022年夏、ユーロスペース ほか全国順次ロードショー
監督・脚本:小松 孝
出演:田村健太郎、宮崎美子、吉田凜音、池田成志、諏訪太朗
主題歌:NILKLY
第25回PFFスカラシップ作品
2020年/119分/カラー/DCP 英題:Cat and Salt, or Sugar
©PFFパートナーズ
第27回PFFスカラシップ作品
工藤梨穂監督『裸足で鳴らしてみせろ』
「代わりに世界を見てきてほしい」という盲目の養母のために、“世界の音”を届けようとする二人の青年の関係を紡いだドラマ。レコーダーを手に旅の記録をテープに刻みながら、彼らは次第に惹かれ合うのだが…。二人の青年の言葉にならない心の叫び、ヒリヒリするような青春を繊細に瑞々しく描く。
監督は、京都芸術大学映画学科の卒業制作『オーファンズ・ブルース』(18)が、第40回ぴあフィルムフェスティバル「PFFアワード2018」でグランプリ&ひかりTV賞を受賞し、最終審査員の生田斗真氏から絶賛を受けた工藤梨穂。『オーファンズ・ブルース』は、なら国際映画祭学生部門NARA-waveゴールデンKOJIKA賞&観客賞を受賞、Japan Cuts~ジャパン・カッツ!(北米最大の日本映画祭)、フィルマドリッド/FILMADRID国際映画祭(スペイン)などに招待上映さるなど国内外でも注目を集め、2019年にはテアトル新宿ほか全国10館以上で劇場公開され、青山真治監督、行定勲監督や俳優の永瀬正敏氏から絶賛コメントも寄せられた。本作『裸足で鳴らしてみせろ』でPFFスカラシップの権利を獲得し、商業映画デビューとなる。本作は、今年2022年の1月に開催された第51回ロッテルダム国際映画祭・ハーバー部門選出、世界最大級の子ども映画祭・ジッフォーニ映画祭(イタリア)7月開催に招待上映が決まっており、国内のみならず海外からも既に注目を集めている。
惹かれ合いながらも“触れられない”二人の青年を演じるのは、京都芸術大学映画学科で工藤梨穂監督と同期生で、在学時に多数の映画出演を経験し、『オーファンズ・ブルース』にも出演した佐々木詩音と、短編『蝸牛』(19/都楳勝監督)でMOOSIC LAB 2019短編部門の最優秀男優賞
を獲得した諏訪珠理。盲目の養母役に風吹ジュン。その他、伊藤歌歩、甲本雅裕が名を連ねている。
≪工藤梨穂監督 コメント≫
劇場公開のために注力してくださった皆さんに感謝をすると共に、映画を上映して頂けるということの何にも代え難い幸福を噛み締めています。
『裸足で鳴らしてみせろ』は、私自身どうしても撮らずにはいられなかったそんな作品です。
映画でしか伝えることの出来ない物語を追求し、他で見ることの叶わない光景を捉えました。
この映画が観た人の心に残り続けていくことを願っています。
ぜひ劇場へ観に来て下さい。お待ちしています。
『裸足で鳴らしてみせろ』
2022年夏、ユーロスペース ほか全国順次ロードショー
監督・脚本:工藤梨穂
出演:佐々木詩音、諏訪珠理、伊藤歌歩、甲本雅裕、風吹ジュン
第27回PFFスカラシップ作品
2021年/128分/カラー/DCP 英題:Let Me Hear It Barefoot
©PFFパートナーズ
両作品とも毎年9月に開催される「PFF(ぴあフィルムフェスティバル)」にて既に完成披露上映を行ったが、劇場公開はコロナ禍の影響で時期延期をしていた。この度、渋谷・ユーロスペースがメイン館に決定し、今夏、『猫と塩、または砂糖』、『裸足で鳴らしてみせろ』の順に続けて全国順次公開することとなった。
PFFスカラシップとは
“映画の新しい才能の育成”を目指し、PFF(ぴあフィルムフェスティバル)が取り組んでいる、世界でも類のない“映画祭がトータルプロデュース”する映画製作支援システム。
PFFのコンペティション部門「PFFアワード」の入賞者に挑戦権が与えられ、企画コンペで選ばれた”最も将来を期待したいフィルムメーカー”のオリジナル作品を企画開発から製作、劇場公開までトータルプロデュースすることで自主映画監督のデビューを支援する。
園子温、橋口亮輔、矢口史靖、李相日、荻上直子、内田けんじ、石井裕也など、日本映画の第一線で活躍する監督を多数輩出し、1984年のスタートから、これまでに26本(本公開2本含めて/第26回スカラシップ作品は現在準備中)の作品が製作された。