鮮やかな色彩と豊かな表現力で今なお、世界中の人々を魅了するゴッホの展覧会が、東京・上野の森美術館にて好評を博し、2020年3月29日まで兵庫県立美術館にて開催中です。
ゴッホといえば、鮮やかな黄色や青色が印象的で、《ひまわり》や《自画像》で有名ですが、同展では、今まであまり知られていなかった初期の作品から、印象派に出会い、ゴッホ独自の世界を確立するまでが紹介されています。
わずか37歳という若さで旅立ってしまったフィンセント・ファン・ゴッホ(1853-1890)。
農民の生活を描いた作品から、ゴッホが繰り返し描いたモティーフの《糸杉》、《麦畑》などの作品を通して、ゴッホの生涯を辿ります。
ゴッホの作品の中でも「最も美しい作品のひとつ」といわれている名作《薔薇》もみどころとなっています。
今回の「ゴッホ展」は、オランダ・ハーグ美術館のみならず、アメリカ、スイス、スコットランド、デンマーク、イスラエルなど世界10カ国、地域27カ所から集められた作品が集結した大変貴重な機会です。
約50点のゴッホの作品に加え、ゴッホが影響を受けた「ハーグ派」とモネやルノワールなどの「印象派」の画家たちの作品約30点も紹介されています。
後期印象派の巨匠としての地位を築いたゴッホですが、37年の儚い生涯のわずか10年間ほどの画業で、いかにしてゴッホは、色鮮やかな色彩にたどり着き、あふれる生命感を描き出す独特の世界を築いたのでしょう。
同展では、ゴッホが影響を受けた2つの「出会い」の軌跡を辿ります。
ゴッホは、「ハーグ派」との出会いによって、自然観察力や描写力など絵画の基礎を学び、「印象派」との出会いによって、強烈な色彩や、生き生きとした躍動感のある筆触を学んだのです。
また、日本の浮世絵の愛好家としても知られるゴッホは、自分の絵画に浮世絵の要素を吸収しようとしました。
炎のように燃えるエネルギーに満ちた《糸杉》や南仏の光あふれる《麦畑》をはじめ、感動的なゴッホ作品の数々を是非、この機会にご鑑賞ください。
また、ゴッホの弟テオや友人との手紙のやり取りを通してゴッホの心情を探ります。
それでは、展覧会の構成に従って、主な作品を観ていきましょう。
第1部 ハーグ派に導かれて
ハーグ派は、1870年から1900年頃にかけてオランダ南西部のハーグを中心に活動した画家たちで、自然の光の下で、オランダの田園風景や農民の日常生活を落ち着いた色調で描きました。
ゴッホは、ハーグに移住し、アントン・マウフェから絵を習い始めました。
ハーグ派の影響を受けた初期の作品では重厚な色彩が多く、農民を力強く描いています。
ゴッホは、貧しい農民たちの支えになることを目指し、絵を描くことで農民たちの暮らしの真実を伝え、貢献したいと願っていました。
《ジャガイモを食べる人々》では農民の生活が見事に描写されています。
第2部 印象派に学ぶ
■パリでの出会い
弟のテオを頼ってパリに赴き、ゴッホは初めて目にする印象派の作品に大きな衝撃を受けます。
色彩は原色を用いて明るくなり、筆触を残す描き方を取り入れて、劇的に作風を変化させました。
孤高の画家モンティセリや日本の浮世絵などに出会ったこともまた、後のゴッホの芸術に大きな影響を与えました。
■印象派の画家たち
印象派の明るい色遣いや筆触はゴッホに大きな影響を与えました。
ピサロはパリ近郊のポントワーズで、《ライ麦畑、グラット=コックの丘、ポントワーズ》を描きました。
澄んだ青い空に白い雲が浮かび、光を受けたライ麦畑が黄色に美しく輝いている風景画です。
ピサロは初期にはバルビゾン派の影響を受けていたこともありますが、この頃は印象派の描き方になっています。
ピサロはセザンヌと一緒に制作することもあり、温厚な人柄で、若い画家たちの面倒をよく見ていたようです。
ゴッホはテオへの手紙に次のように書いていて、ピサロを尊敬していたことがわかります。
「ここで自然を描くためには、どこでだって同じだが、長い間自然の中にいなければならない。(….)なぜなら光は神秘的で、モンティセリもドラクロワもそのことを感じとっていたからだ。それにピサロも昔そのことについてよく話していたよ。だけど僕はまだ彼が言うように理想的にはまったく描けない。」
印象派の巨匠であり、「光の画家」ともいわれるモネの《クールブヴォワのセーヌ河岸》も紹介されています。
豊かな緑が茂った樹木を画面の前面に配置する大胆な構図で、樹木にふりそそぐ光のきらめきや、水面に反射する空や樹々が美しく描かれています。
遠くに見える屋根の赤色が、樹々の緑と対比されて効果的です。
ゴッホは印象派のドガやモネのことを、高く評価していたことが友人への手紙からわかります。
「アントウェルペンでは、僕は印象派が何なのかすらわかっていなかった。今や彼らの作品を見てきて、その一員ではないにしても、印象派の絵のいくつかに大いに感服している―例えばドガの裸婦やモネの風景画なんかがそうだ。」
■アルルでの開花1888
年の初夏、アルルに滞在していたゴッホは麦畑をモティーフとした油彩画を少なくとも10点は描いたようです。
南仏の明るい光のもと、澄みきった青い空に白い雲が浮かび、見渡す限り麦畑が広がっています。「周囲を見渡すと自然の中にたくさんの発見があって、それ以外のことを考える時間がほとんど無いことだ。」と、ゴッホはテオへの手紙に書いています。
ゴッホは美しい自然の情景に魅せられたのでしょうか?一つのテーマを定めると構図や色のバリエーションを変え、繰り返し同じモティーフを描きました。
空の青色と麦畑のオレンジ色の対比も絶妙です。
1889年、ゴッホは精神を患い、フランスのアルルからサン・レミという小さな村の療養院に移ります。療養院の外での制作が許可されるようになると、風景画を描くようになりました。
糸杉はサン・レミ時代のゴッホにとって最も重要なモティーフとなり、何度も繰り返し描きました。この《糸杉》では、晴れ渡った青い空や白い雲や、山、野原も力強い渦巻き状の線で描かれています。糸杉はまるで燃え上がる炎のように荒々しく、力強く描かれています。
西洋で糸杉は冥界をつかさどる神の象徴とされています。一方、杉はその寿命の長さから長寿のシンボルでもあります。
糸杉に魅了され、一心に描き続けたゴッホでしたが残念なことに、この作品の制作の翌年に天に召されます。
入院中のゴッホは、糸杉やオリーブ、松の木など樹木を描いています。《夕暮れの松の木》は、夕暮れ時、赤やオレンジ色の夕陽に染まる空を背景に、うねるような松の木の枝が描かれています。
松の枝や野原にはうっすらと雪が積もり、傘をさす女性も描かれています。
樹木と同じように花もまた、ゴッホにとって生命を讃える象徴でした。
退院の直前に描かれた《薔薇》は、退院を祝うかのように華やかに幸せに溢れ、清楚な白いバラが咲き誇っています。
わずか10年の間に自然派の農民を描く作風から、印象派の影響を受け、色鮮やかな美しい風景を描くようになったゴッホ。
ゴーギャンとの共同生活や、耳切事件などドラマティックな人生を送り、最後は、躍動感あふれる力強い独自の世界を築いたゴッホの感動的な芸術を是非、ご堪能ください。
館長さんが仰った「《糸杉》を見るとみんな泣くんですよ。感動して。その翌年には(ゴッホは)亡くなるんですから。」という言葉がとても印象的でした。
時空を超えて、ゴッホの築き上げた生命力あふれる芸術は、これからも私たちを感動させてくれるでしょう。
展覧会概要
特別展「ゴッホ展」
会期:2020 年1 月25 日[土]-3 月29日[日]
開館時間:午前10 時-午後6 時(金・土曜日は午後8時まで) 入場は閉館の30分前まで
休館日:月曜日(ただし、2月24 日[月・休]は開館、翌25 日[火]は閉館)
会場:兵庫県立美術館(〒651-0073 神戸市中央区脇浜海岸通1-1-1)
観覧料金:
一般1,700 円 (1,500円) 大学生1,300 円 (1,100円) 高校生以下 無料
70歳以上850 円(750円) 障がい者 一般400 円 (350円)大学生300 円 (250円)
※( )内は 団体(20 名以上 )の料金
1)証明できるものの提示が必要です。
2)障がいのある方1名につき、介護の方1名は無料。
※金額はいずれも消費税込金額です
主催:兵庫県立美術館、産経新聞社、読売テレビ
後援:オランダ王国大使館、サンケイスポーツ、夕刊フジ、フジサンケイビジネスアイ、ラジオ大阪
協賛:第一生命グループ、大和証券グループ、髙松建設、NISSHA、公益財団法人伊藤文化財団、
一般財団法人みなと銀行文化振興財団、TKG Foundation for Arts & Culture
特別協力:公益財団法人日本教育公務員弘済会兵庫支部
協力:KLM オランダ航空、日本航空、ヤマトグローバルロジスティクスジャパン
ゴッホ展@兵庫cinefilチケットプレゼント
下記の必要事項、読者アンケートをご記入の上、ゴッホ展@兵庫 cinefil チケットプレゼント係宛てに、メールでご応募ください。
抽選の上5組10名様に、ご本人様名記名の招待券をお送りいたします。
この招待券は非売品です。転売、オークションへの出品などを固く禁じます。
応募先メールアドレス info@miramiru.tokyo
応募締め切り 2020年2月17日(月)24:00
1、氏名
2、年齢
3、当選プレゼント送り先住所(応募者の電話番号、郵便番号、建物名、部屋番号も明記)
建物名、部屋番号のご明記がない場合、郵便が差し戻されることが多いため、当選無効となります。
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