マネやセザンヌ、ルノワール、モネなど、誰もが一度は目にしたことのある珠玉の印象派絵画が一堂に会する「コートールド美術館展」を紹介致します。
                            
ロンドンのコートールド美術館は、イギリスが世界に誇る名画を揃えた美の殿堂で、実業家でありコレクターでもあるサミュエル・コートールド(1876~1947)によって、収集、寄贈された世界有数の印象派やポスト印象派の作品群を収蔵しています。
コートールドは、「芸術には異なる人種や時代を超え、広く人々を啓発する力がある」と考え、母国イギリスにもフランス近代絵画の魅力を伝えたいと願っていました。
1932年、ロンドン大学に美術研究所が創設されることになると、彼は、コレクションを寄贈し、研究所はコートールド美術研究所と名付けられ、その展示施設としてコートールド美術館が誕生したのです。

このたび、コートールド美術館の改修工事のため、世界の名画が多数来日することになりました。
マネ最晩年の傑作《フォリー=ベルジェールのバー》をはじめ、ルノワールが第一回印象派展に出展した記念碑的作品である《桟敷席》、セザンヌの《カード遊びをする人々》、ゴーガンの《ネヴァーモア》など、約60 点の絵画や彫刻がご覧いただけます。
また本展は、研究機関という側面から、美術史研究や、科学的調査の成果を取り入れ、名画を読み解いていきます。
「コートールド美術館展 魅惑の印象派」は、東京都美術館において12月15日(日)まで好評開催中で、2020年1月3日(金)から3月15日(日)まで愛知県美術館で開催されます。
豪華な巨匠たちの名画の競演が、日本で鑑賞できるとは、なんて贅沢なのでしょう。
みなさま、是非、この機会にご鑑賞ください。
それでは、シネフィル上でもいくつかの作品を観ていきましょう。

画像: エドゥアール・マネ《フォリー=ベルジェールのバー》1882年 油彩、カンヴァス 96×130cm コートールド美術館 © Courtauld Gallery (The Samuel Courtauld Trust)

エドゥアール・マネ《フォリー=ベルジェールのバー》1882年 油彩、カンヴァス 96×130cm コートールド美術館 © Courtauld Gallery (The Samuel Courtauld Trust)

誰もが一目見ただけで魅了されるこの絵は、パリの華やかな雰囲気のバーを舞台に一人のバーメイドが描かれています。
病気療養中であったマネの最晩年の傑作です。
マネも実際に訪れていたという、実在するフォリー=ベルジェールのバーは、賑やかに人々が集うパリのミュージックホールで、画中左隅にわずかに見える曲芸などの出し物も多彩です。
煌びやかな都会の喧騒と好対照のバーメイドの孤独な表情。
大理石のバーカウンターの上の酒の瓶やオレンジなどには、静物画家としての見事な描写力が感じられます。
リアルに描かれた瓶の中でも金紙をまいたシャンパンの瓶は本物のようです。
瓶のラベルの文字も忠実に描かれ、赤い三角のマークは英国のビールで、パスペールエール。左の酒の瓶のラベルには、なんとマネのサインが書き込まれていて、洒落た演出がなされています。
バーメイドの娘の背後には大きな鏡があり、その鏡には、バーメイドの娘の後ろ姿と男性客が描かれています。
娘が向き合って見つめているのは、男性客なのでしょうか?それともわたしたち鑑賞者なのでしょうか?
科学調査により、バーメイドの娘の姿勢や鏡像の位置は制作中、何度も修正が加えられていることがわかりました。
不自然な鏡像の真相はわかりませんが、この不自然さはマネが意図的に描いたもののようです。

画像: クロード・モネ《アンティーブ》1888年 油彩、カンヴァス 65.5×92.4cm コートールド美術館 © Courtauld Gallery (The Samuel Courtauld Trust)

クロード・モネ《アンティーブ》1888年 油彩、カンヴァス 65.5×92.4cm コートールド美術館
© Courtauld Gallery (The Samuel Courtauld Trust)

刻々と移ろいゆく光を描き続けたモネは、印象派を代表する画家です。
この作品でも、光を受けた水面の煌めきや、水面に映る自然の風景の美しさを描きました。
1888年モネは南仏アンティーブに滞在し、地中海の美しい風景を描きました。
「私がここから持ち帰るものは、甘美さそのものだろう。
白、ピンク、青、すべてがこの夢のように美しい空気の中に包まれている」
(1888年2月3日 アリス・オシュデ宛)
モネがアンティーブで、のちの妻に宛てた手紙から、パリやノルマンディーとは異なる南仏の海の空気と色彩に魅了されていたことが伺えます。
前景に描かれている大きな松の木が、青い海の向こうのエステレル山脈までの「美しい空気」を清々しく際立たせています。

画像: フィンセント・ファン・ゴッホ《花咲く桃の木々》1889年 油彩、カンヴァス 65×81cm コートールド美術館 © Courtauld Gallery (The Samuel Courtauld Trust)

フィンセント・ファン・ゴッホ《花咲く桃の木々》1889年 油彩、カンヴァス 65×81cm コートールド美術館 © Courtauld Gallery (The Samuel Courtauld Trust)

「前景の葦の垣根に囲まれた果樹園では、小さな桃の木々が花盛りだ———
この地のすべては小さく、庭、畑、庭、木々、山々でさえまるで日本の風景画のようだ。
だから、私はこのモティーフに心惹かれたのだ」
(1889年4月10日 ポール・シニャック宛)
アルル郊外の春の美しい農園風景にゴッホは心から感動している様子が書簡からも伺えます。
桃の花が咲き誇る果樹園には農作業に勤しむ人々も描かれています。
ゴッホは日本の浮世絵に感銘し、日本への憧憬も深かったようです。
後景の山脈の右端には富士山を思わせる山頂にうっすらと雪が見える山が描かれています。
このアルル郊外の理想の地にゴーガンを呼び寄せ、共同生活を試みましたが、精神を病んで、自分の耳を切る事件を起こし、サン=レミの療養院へ入院することになりました。

画像: ポール・セザンヌ《カード遊びをする人々》1892-96年頃 油彩、カンヴァス 60×73cm コートールド美術館 © Courtauld Gallery (The Samuel Courtauld Trust)

ポール・セザンヌ《カード遊びをする人々》1892-96年頃 油彩、カンヴァス 60×73cm コートールド美術館 © Courtauld Gallery (The Samuel Courtauld Trust)

コートールド美術館は、英国随一のセザンヌ・コレクションを誇っています。
1922年のある展覧会のことを、サミュエル・コートールドは次のように回想しています。
「その瞬間、私は魔術を感じ、それ以来ずっとこの画家の魔術にかかったように感じている」
1890年代、セザンヌはカード遊びを題材とする絵画を5点描いていますが、本作はその4番目とされています。
コートールドは、《パイプをくわえた男》をすでに所有していたので、本作もほかの買い手を押しのけて購入したといわれています。
本作の左側の男は、《パイプをくわえた男》と同一人物だったからでしょう。
描かれた場所はアトリエだったのですが、落ち着いた色調から、カフェやバーのように見えます。黒い影を加えて人物を浮き立たせています。

画像: ピエール=オーギュスト・ルノワール《桟敷席》1874年 油彩、カンヴァス 80×63.5cm コートールド美術館© Courtauld Gallery (The Samuel Courtauld Trust)

ピエール=オーギュスト・ルノワール《桟敷席》1874年 油彩、カンヴァス 80×63.5cm コートールド美術館© Courtauld Gallery (The Samuel Courtauld Trust)

このルノワールの《桟敷席》は、マネの《フォリー=ベルジェールのバー》と並ぶ、コートールド美術館の誇る至宝ともいうべき名画でしょう。
パリの近代的な舞台鑑賞や、上流階級らしい男女の優雅な盛装が当時の世相をよく表しています。
作品の舞台となった1870年代にはパリに劇場が続々と誕生し、ブルジョワ階級の女性が着飾って流行のドレスを身にまとい出かけていました。
舞台を鑑賞するだけではなく、男性客から見られることを意識しているようです。
隣の男性もまた、オペラグラスで覗いているのは舞台ではなく、観客の女性かも知れません。
女性は、黒と白のドレスに花飾りのピンクや口紅の赤が映え、陶器のような白い肌にピンクの頬、光と影が繊細に描写され美しく描かれています。

画像: ポール・ゴーガン《テ・レリオア》1897年 油彩、カンヴァス 95.1×130.2cm コートールド美術館 © Courtauld Gallery (The Samuel Courtauld Trust)

ポール・ゴーガン《テ・レリオア》1897年 油彩、カンヴァス 95.1×130.2cm コートールド美術館
© Courtauld Gallery (The Samuel Courtauld Trust)

「テ・レリオア」とは、タヒチ語で、夢のこと。
フランスへ作品を送る船の出港が遅れ、その期間を利用して10日間ほどで新たに制作された作品です。
ゴーガン自身の手紙からも、「制作を急いだにもかかわらず、前の数点よりももっとよいと思う。テ・レリオアが、その題名だ。この絵の中では、すべてが夢だ。子供か、母親か、小道にいる馬に乗る男か、あるいは画家の夢なのか!!!」(1897年3月12日 ダニエル・ド・モンフレッド宛)
作品の出来栄えは良かったようです。
《ネヴァーモア》とほぼ同時期に描かれた本作は、エキゾチックなレリーフが施された壁の室内に、視線を合わさず謎めいた表情の女性が2人、画面手前には、赤子がすやすやと眠っている様子が描かれています。
遠く窓の外には、馬に乗って小道を行く男の姿も見えます。
それぞれ特定のつながりはないようで、創造の世界の不思議な作品。
                         
みなさま、いかがでしたか。
印象派とポスト印象派の巨匠たちの夢のような競演。
是非、美術館でご堪能ください。
                    

展覧会概要

[会期] 2020年1月3日(金)〜3月15日(日)

[会場] 愛知県美術館(愛知芸術文化センター10階)

[開館時間] 10:00〜18:00  ※金曜日は20:00まで(入館は閉館の30分前まで)

[休館日] 毎週月曜日、1月14日(火)、2月25(火)
※ ただし、1月13日(月・祝)、2月24日(月・振)は開館。3月9日(月)は特別開館。
[観覧料]一般 1,600(1,400)円 高校・大学生 1,300(1,100)円 中学生以下無料    ※( )内は前売券および20名以上の団体料金です。
前売券は愛知県美術館チケット売場、主要プレイガイドなどで販売(詳細は展覧会公式サイトへ) ※前売券販売期間:~2020年1月2日(木)                          ※ローソンチケット(Lコード:42303)チケットぴあ(Pコード:769-898)          ※上記料金で、同時開催のコレクション展もご覧になれます。               ※「身体障害者手帳」「精神障害者保健福祉手帳」「療育手帳」のいずれかをお持ちの方、また、その手帳に「1種」または「1級」と記載のある方に付き添われる方は1名まで当日料金が半額となります。美術館チケット売場にて手帳をお示しになり、お買い求めください(付き添いの方はお申し出ください)。                                        ※小・中学生は美術館チケット売場で無料観覧券をお受け取りください。

[外部サイト] 展覧会公式サイト:https://courtauld.jp/

[主催] 愛知県美術館、朝日新聞社、NHK名古屋放送局、NHKプラネット中部

[後援] ブリティッシュ・カウンシル

[協賛] 凸版印刷、三井物産

[協力] 日本航空

[お問い合わせ先]

ハローダイヤル 050-5542-8600(8:00-22:00/年中無休)

コートールド美術館展 魅惑の印象派@愛知cinefil チケットプレゼント

下記の必要事項をご記入の上、コートールド美術館展 魅惑の印象派@愛知 cinefil チケットプレゼント係宛てに、メールでご応募ください。
抽選の上5組10名様に、ご本人様名記名の招待券をお送りいたします。
記名ご本人様のみ有効の、この招待券は、非売品です。
転売は禁止です。

☆応募先メールアドレス info@miramiru.tokyo
*応募締め切りは2019年9月25日 24:00 水曜日

記載内容
1、氏名 
2、年齢
3、当選プレゼント送り先住所(応募者の電話番号、郵便番号、建物名、部屋番号も明記)
  建物名、部屋番号のご明記がない場合、郵便が差し戻されることが多いため、
  当選無効となります。
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8、連載で、面白くないと思われるものの、筆者名か連載タイトルを、3つ以上ご記入下さい
 (複数回答可)
9、よくご利用になるWEBマガジン、WEBサイト、アプリを教えて下さい。
10、シネフィルへのご意見、ご感想、などのご要望も、お寄せ下さい。
   また、抽選結果は、当選者への発送をもってかえさせて頂きます。

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