2015年6月26日から29日にかけて「フランス映画祭2015」が、有楽町朝日ホール・TOHOシネマズ日劇で開催され、好評のうちに終了しました。
28日には、アブデラマン・シサコ監督による「ティンブクトゥ(仮題)」が上映され、喝采を浴びました。

本作品は、本年度セザール賞にて、最優秀作品賞など7部門受賞、米国アカデミー賞外国語映画賞部門ノミネートの、快挙を遂げています。

舞台は世界遺産にも登録されている、マリ共和国の古都「ティンブクトゥ:Timbuktu」。
音楽を愛する父親キダーンと母親サティマ、そして娘のトーヤが、イスラム過激派の弾圧に苦しみながらも、明るく、そして強い意志を持って生き、戦う姿を真摯に描いています。

乾いた風景とともに流れる美しい歌声や演奏も、印象に残ります。

Timbuktu Official Trailer 1 (2014) - Abel Jafri Drama HD

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物語は、シサコ監督が新聞で、イスラム過激派が占拠していたアフリカのマリ共和国北部で2012年に起った、一組の男女が石打の刑(死ぬまで石を投げつけられる刑)で亡くなった、という記事を読んだことがキッカケとなりました。野蛮な行為や暴力に、反対するためにつくった映画だそうです。

その一方で、イスラム教は恐ろしいものではない、宗教は皆、愛であり、許すことを説いている、と伝えています。そして、あえてイスラム過激派の人間を、人間らしく描いています。

冒頭、過激派のメンバーが、都市部から戻った仲間から頼んであった薬を受取りながら、「これは前とは違う、新しい薬だそうだ」「ああ、知っている。ジェネリックだな」という、ごく普通のやり取りが出てきて、観客から笑いが漏れていました。シサコ監督によると、単なる暴力だけの人物と描かずに、静かな暴力として描くほうがより伝わる、ということだそうです。

また、「野蛮や暴力は人間が行うものであり、人間の一部分が暴力である」「ハリウッド的な暴力シーンばかりになる映画は避けたかった」「死を見るのに血は不要である」との考えから、画面にはほとんど血が流れません。

画像: キダーンが娘との別れの辛さを語るシーン unifrance.jp

キダーンが娘との別れの辛さを語るシーン

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上映後のトークショーに現れたシサコ監督は、まず「この映画を観ていただいたことに、お礼を申し上げます」また、「アフリカの映画を配給してくれて嬉しいです」と語りました。

そして「映画を見てくれた人達と、直接話をするのは苦手なのです。でも、私が日本にいるのは、皆さんと時間を共有するためなので、質問にはなるべく答えたいと思います」と笑いをとりながら、話が進みました。

タイトルを「Timbuktu」という街の名前にしたのは、出来事を場所の名前で覚えておくことは重要だ、という理由だそうです。例えば、東日本大震災をあつかうのであれば「FUKUSHIMA」とするとか…。

画像: 家族が寛いでいるシーン unifrance.jp

家族が寛いでいるシーン

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観客からの質問にもあった、キダーンが漁師を誤って殺した後のシーンは、シサコ監督にとっても重要なシーンで、人間尾弱さ・脆さを伝えています。夕日が沈む場面でもあり、ワンテイクで撮ったそうです。
実際に観ると効果がわかるのですが、アスペクト比16:9のワイド画面をいっぱいに使って、美しくも哀しく表現しています。

出演者は、プロの俳優と素人が混じっています。キダーン役とサティマ役はプロの歌手で、映画出演は共に初めて。過激派の長や、ダンスをする兵士、魚を売る女性はプロの俳優です。また、むち打たれながら歌う女性はプロの歌手、あとは素人が多いそうです。

アフリカでは、映画は発展していないのでプロの役者は少なく、シサコ監督は「素人を使うことには慣れている」と語っていました。

画像: むち打たれながら歌い続ける女性のシーン unifrance.jp

むち打たれながら歌い続ける女性のシーン

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歌、笑い声、たばこ、そしてサッカーでさえも禁止された街では、それを破る民衆に不条理な刑罰が与えられます。でも、それに対して民衆は常に対抗するものです。とくに女性は強いです。シサコ監督は、実際に聞いた話から、少年達がボールなしでサッカーしているシーンや(ボールが見えるようです!)、歌を歌ったことで鞭打ちの刑に処せられる女性が、むち打たれながら歌い続けるシーンを、再現しました。

トークショーの最後にシサコ監督は「この映画の成功はアフリカにとって、とても重要です。ぜひ、皆さんの周りにも紹介して観ていただきたいです」と結びました。

画像: トークショーのワンシーン©cinefil.asia

トークショーのワンシーン©cinefil.asia

画像: 観客の声援に応えるアブデラマン・シサコ監督©cinefil.asia

観客の声援に応えるアブデラマン・シサコ監督©cinefil.asia

監督:アブデラマン・シサコ
出演:イブラヒム・アメド・アカ・ピノ、トゥルゥ・キキ、アベル・ジャフリ
2014年/フランス・モーリタニア/97分/16:9/5.1ch
配給:RESPECT  
配給協力:太秦
2015年 秋に公開予定

フランス映画祭2015公式サイト:http://unifrance.jp/festival/2015/

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