夜の葉〜映画をめぐる雑感〜
#18『リンダ リンダ リンダ』とポール・ニザン『アデン・アラビア』
ぼくは二十歳だった。それがひとの一生でいちばん美しい年齢だなどとだれにも言わせまい。
——ポール・ニザン『アデン・アラビア』(篠田浩一郎訳)
終わりの季節としての青春映画
青春とは、甘美な季節ではない。誰もが懐かしく語るあの時間は、しばしば痛みと不安、迷いと絶望の入り混じった「未決の時間」として現れる。ポール・ニザンの『アデン・アラビア』は、そんな青春に対して怒りをぶつけるように始まる。
この一文が提示するのは、青春の虚飾に対する拒絶である。そこにあるのは、美しさではなく無知と孤立、焦燥と不安である。だが、だからこそ青春は本質的に「意味がない」。その時間の中で、私たちは世界の輪郭を知らず...