デビュー30周年記念特別対談
柳下美恵(サイレント映画伴奏者)✖️鈴木治行(作曲家)
声のない映像に、いまここで音が宿る。鍵盤の一打、電子音の震え、ふいに訪れる無音の緊張──サイレント映画の上映は、失われた時代の「再現」ではなく、その瞬間にしか成立しないライブ体験だ。観客の呼吸、会場の空気、映像のテンポに触発されて、同じ作品が毎回ちがう表情を見せる。その醍醐味を、最前線で生きてきた二人が語り合う。
今年で活動30周年を迎えたサイレント映画伴奏者・柳下美恵。デビューは1995年、山形国際ドキュメンタリー映画祭のオープニングでリュミエール作品103本を弾き切った伝説的な舞台だった。一方、作曲家・鈴木治行は現代音楽を軸に、90年代後半から映画音楽へと領域を広げ、2000年の『吸...