『海への巡礼』は、メルヴィル、ボードレール、プルースト、A・ブルトン、ヘミングウェイ、小林秀雄、西脇順三郎、三島由紀夫、中上健次・・・・。
海は作家たちの別世界への憧憬を受け止め、ポエジーへと昇華してゆく。
普通の速さで歌うように、「モデラート・カンタービレ」のあゆみを信条として、旅先で歩行し、思索する。
生と死の循環 – 岡本勝人『海への巡礼』
神山睦美(文芸評論家)
岡本勝人は、昨年の『仏教者 柳宗悦』(佼成出版社)をはじめ、年に一冊ずつ評論集を出している。
とりわけ此度の『海への巡礼』は、東西にわたる豊富な知識に裏付けられた文化論ともいうべき書である。
知識が豊富すぎてなかなか読み取れないきらいもあるが、筋をたどっていけば、これまで誰も言わなかったことが大胆に述べられている。
●生と死をめぐる大地と宇宙
主題は、「生と死をめぐる大地と宇宙」といっていいだろうか。それは海への巡礼によって明らかにされる。
私たちの時間の旅程は、いつか死の場所を求めなければならない。あるいはそこに至るためのルートを確かめなければならない。それは海への巡礼である。そして海...