夜の葉~映画をめぐる雑感~
#15『カモン カモン』と村上靖彦『ケアとは何か』
「なんでこの子死ななきゃいけないんだろう?」という問いには答えがない。その問いによって何かが起きるわけではない「純粋な行為」である。だが確かなことは、誰かが聞き届けることで、この問いが行為になったということだ。そして、こうした重い問いかけは語る相手を選ぶ。問いを発することも難しい上に、言葉を投げかけても受け止めてくれる、信頼に足る宛先が必要になる。その宛先になれるよう、「ただ居る」というのが、さまざまな技術を削ぎ落とした後になおも残るケアの核心なのかもしれない。
――村上靖彦『ケアとは何か』
介護施設にいたあるお婆さんのことを思い出す。その方は夫に先立たれ、金銭問題がもとで親族からも絶縁...