北島博士のおもしろ映画講座 第66回
ジム・ジャームッシュ監督最新作『デッド・ドント・ダイ』
「デッド・ドント・ダイ」
死人は死なない。すでに死んでいるのだから、死ぬわけはない。その通りなのだが、映画における死人は往々にして生き返ってくる。本作では、ただ生き返るのではなく、人間に襲いかかり、噛みつき、その肉を食する。噛まれた人間もすぐに彼らの仲間入りをしてしまう。これまで作家性の強い、人間ドラマを作り続けてきたジム・ジャームッシュの新作は、今やホラー・アクション映画の定番となったゾンビ映画だ。
ここでゾンビ映画の歴史を紐解くと、もともとは死人を呪文で生き返らせサトウキビ畑で働かせたという中南米ハイチのヴードゥ伝承に由来している。無休無給の労働力だったわけだが、スクリーンでも「恐怖...