滅多に見られないカツベン上映!伊藤大輔監督の“サイレント時代劇の金字塔”作品と溝口健二の“現存する最古の作品”!そして、二人のちょっとした関係---
伊藤大輔と溝口健二
西田宣善
伊藤大輔が言った。
「溝さんに敵わないと思う点は、溝さんがまるで文学なんて屁とも思ってないことだ。ぼくなんかはやはり映画よりも文学の方がより高級だという観念からどうしてもぬけきれないので困る」
こういう発言があるということは、溝口健二と伊藤大輔は親しい関係にあったということである。
実際、二人は京都の同じ町に住んでいた。右京区の御室(おむろ)である。
いわゆる嵐電という小さな電車が走り、最寄駅は御室(現在の御室仁和寺駅)。撮影所に通うのに便利な電車だったために、二人は電車の中で顔をあわせることもあったのではないかと想像する。
二人の映画の作風はまったく違う。...