Ⅰ スウェーデン近代絵画の夜明け
「白夜」でも有名な、幻想的な大自然が広がる北欧の国スウェーデン。近年、スウェーデン絵画は、世界的に注目を集めています。
このたび、「スウェーデン絵画 北欧の光、⽇常のかがやき」が、「日本・スウェーデン文化科学交流年2026」の事業として開館100周年を迎えた東京都美術館を皮切りに山口県立美術館でも大盛況を博し、愛知県美術館では7月9日から10月4日まで開催されます。
北欧美術が脚光を浴び、フランスやアメリカでも大規模な展覧会が開かれていますが、日本でスウェーデン絵画を本格的に紹介する展覧会は初めてとなっています。
本展ではスウェーデン国⽴美術館の全⾯協⼒のもと、19世紀後半から20世紀初頭にかけて全て同国の作家により制作された約80点の作品を通して、スウェーデン美術の「⻩⾦時代」が紹介されています。
1870 年代後半、スウェーデンの若い芸術家たちはフランスに渡り、写実主義や⾃然主義、外光派の表現など新しい芸術の潮流を学びました。しかし、彼らは次第に自国のアイデンティティーに目覚め、故郷に戻り、北欧特有の⾵景や暮らしに⽬を向けました。
スウェーデンの厳しくも美しい⾃然風景や、暮らしの中のささやかな喜びを詩情あふれる表現で描き出し、のちの「スウェーデンらしさ」を形成していったのです。
作品を通して、スウェーデンの雄大な自然風景や北欧ならではの光、そして人々の暮らしの中のしあわせなひとときをご覧ください。
同国の国⺠的画家カール・ラーション、劇作家として知られるアウグスト・ストリンドバリなど、今世界的に評価の⾼まっている画家たちの作品も必見です。
Ⅰ スウェーデン近代絵画の夜明け
1850 年頃になると、画家たちはドイツのデュッセルドルフ派の劇的な表現を取り入れながら、北欧の歴史や神話を主題とする絵画を制作しました。

ニルス・ブロメール《草原の妖精たち》1850年 油彩、カンヴァス スウェーデン国立美術館蔵 Photo: Cecilia Heisser/Nationalmuseum
太陽が沈もうとして地平線が赤く染まる黄昏時、透明感のある衣を身にまとった少女たちが草原で手を繋ぎ、輪になって踊っています。美しくあどけなさの残る子供たちの顔はドレープが優美な曲線を描く衣装と同じように没個性的で神秘的です。
ニルス・ブロメールは、スウェーデン王立美術アカデミーで学び、その後、奨学金で、ドレスデン経由でパリに留学しました。19世紀半ばにスウェーデン独自の芸術の確立を目指した一人です。
Ⅱ パリをめざして

ヒューゴ・サルムソン《落穂拾いの少⼥》1880年代初頭 油彩、カンヴァス
スウェーデン国立美術館蔵 Photo: Anna Danielsson / Nationalmuseum
1870 年代後半にフランスに渡った若い画家たちは、現実世界の観察に基づく絵画の表現に魅了されました。⼾外での制作を通じて、画家たちは外光表現を⾝につけ、印象派にも接近していきます。
Ⅲ グレ=シュル=ロワンの芸術家村

イエーオリ・パウリ 《レース編み》 1885年 油彩、カンヴァス スウェーデン国立美術館蔵 Photo: Erik Cornelius / Nationalmuseum
柔らかな陽の光が差し込む明るい窓辺でレースを編む女性。手元を見つめる真剣なまなざしに、彼女の高い職業意識が感じられます。窓辺には淡い花の鉢植えが並び、きちんとした室内からは、慎ましくも丁寧な生活が伺えます。澄んだ空気感、静かで穏やかな時間が流れているようです。
イエーオリ・パウリは、裕福な家庭に生まれ、スウェーデン王立美術アカデミーで学んだ後、フランスやイタリアを訪れ、作品を制作しました。

ブリューノ・リリエフォッシュ《4種の⿃の習作(セアカモズ、ウズラクイナ、ズア
オアトリ、キタヤナギムシクイ)》1887年 油彩、板(左上)、カンヴァス(その他)
スウェーデン国立美術館蔵 Photo: Erik Cornelius / Nationalmuseum
パリ郊外に位置する⼩村グレ=シュル=ロワン。この素朴で穏やかな⽥舎の村に集ったスウェーデンの画家たちは、⽥園⽣活を送りながら光にあふれる牧歌的な絵画を制作します。
ブリューノ・リリエフォッシュは4種の⿃のスケッチを自らデザインした額縁に収めました。フランスのバルビゾン派をはじめとする自然主義的な風景画の影響がうかがえます。
Ⅳ 日常のかがやき―“スウェーデンらしい”暮らしのなかで

カール・ラーション《カードゲームの⽀度》1901年 油彩、カンヴァス スウェーデン国立美術館蔵 Photo: Anna Danielsson / Nationalmuseum
⾃らの国の独⾃の芸術を創出する必要性を感じ始めた画家たちは、1880年代末までには故郷に帰り、⾝近なモチーフへと⽬を向けました。また、近代化の陰で失われつつあった伝統的な暮らしや、⺠俗⽂化なども取り上げました。
本作は、スウェーデンの国民的画家カール・ラーションの作品。本作の舞台は、彼の家のダイニングルームで、妻と娘二人が出迎えているところです。その夜は、村の友人を招いて、当時流行していたカードゲームを楽しむ予定だったようです。外は凍てつくように寒く、暗い冬の夜ですが、対照的に部屋の中は温かく、オイルランプとろうそくの灯りで明るく照らし出されています。幸福に満ちた情景です。
ラーション家では自分たちの生活スタイルに合うよう様々な時代、様式の家具をうまく組み合わせ、改装を重ねながら理想の暮らしを実現していました。もともと画家であった妻のカーリンも、家具やテキスタイルのデザインや刺繍を手がけました。ラーション家は、「スウェーデンらしい」暮らしの象徴として広く知られるようになりました。

アンデシュ・ソーン《故郷の調べ》1920年 油彩、カンヴァス スウェーデン国立美術館蔵
Photo: Viktor Fordell / Nationalmuseum
アンデシュ・ソーンは、国際的にも活躍した画家ですが、帰国後は故郷モーラに居を構え、伝統的な民族文化に目を向けました。
本作は最晩年の作ですが、民族衣装を着てリュートを奏でながら歌を歌う女性を大きな筆致で描き、躍動感にあふれています。
Ⅴ 現実のかなたへ―見えない世界を描く

アウグスト・ストリンドバリ《ワンダーランド》1894年 油彩、厚紙 スウェーデン国立美術館蔵 Photo: Erik Cornelius / Nationalmuseum
フランスから帰国した画家たちの中には、感情や気分といった⾃⾝の内⾯の表現に関⼼を寄せる者、また精神的な危うさを絵画に投影しようとする者も現れました。北欧神話やおとぎ話なども、神秘的なイメージを⽣み出す源泉となっていきます。
アウグスト・ストリンドバリは、19世紀を代表する劇作家、文筆家。旧友に宛てた手紙の中で、彼は本作の主題を「鬱蒼(うっそう)とした森」としたうえで高次の解釈として「ワンダーランド、光と闇の戦い」と記し、その意味を象徴的に説明しています。日没の海が見える森の中を描こうとしていましたが、最後は「光と闇の闘い」や、洞窟と解釈する作品になりました。
Ⅵ 自然とともに―新たなスウェーデン絵画の創造

グスタヴ・フィエースタード《冬の⽉明かり》1895年 油彩、カンヴァス スウェーデン国立美術館蔵 Photo: Hans Thorwid / Nationalmuseum
かつて「描くべきもののない国」とさえ⾔われたスウェーデンでしたが、画家たちは様々な表情を⾒せる豊かな⾃然にこそスウェーデンらしさを見出し、独⾃の⾊彩感覚や構図で描き出しました。
冬の月明かりの中、深々と降り積もる静謐な雪の情景。北欧スウェーデンの雄大な自然の美しさが感じられます。まるで絵本の挿絵のように美しい世界です。

カール・ノードシュトゥルム 《テューン島のホーガ盆地》1897年 油彩、カンヴァス
スウェーデン国立美術館蔵 Photo: Anna Danielsson / Nationalmuseum
カール・ノードシュトゥルムは、フランスの印象派や写実主義の影響を受けた風景画を描いていましたが、仲間とともにスウェーデン西海岸に位置する小さな町に移り住み、ヴァールバリ派と呼ばれるグループを作りました。彼らはこの地の海辺や荒涼とした大地に描くべきスウェーデンらしい自然を求め、それを表現するのにふさわしい方法を追求しました。
青空に白く輝く雲と緑の平野を情感あふれる表現で描きました。
北欧ならではの大自然の美しさと、その地に生きる人々の日常のささやかな幸福感が伝わってくる展覧会です。是非、この感動を美術館でご体感ください。
展覧会概要
展覧会名| 中⽇新聞社創業140年記念 スウェーデン絵画 北欧の光、⽇常のかがやき
Masters of Swedish Painting from Nationalmuseum, Stockholm
会 期| 2026年7⽉9⽇(⽊)〜 10⽉4⽇(⽇)
開館時間| 10:00−17:00 ⾦曜⽇は20:00まで(⼊場は閉館の30分前まで)
休館⽇| ⽉曜⽇(ただし7⽉20⽇、8⽉10⽇、9⽉21⽇は開館)、
7⽉21⽇(⽕)、9⽉24⽇(⽊)
会 場| 愛知県美術館 [愛知芸術⽂化センター10階]
展覧会特設サイト| https://www.swedishpainting2026.jp/
料金など詳細は上記展覧会特設サイトよりご覧いただけます。
お問合せ| 愛知県美術館 052-971-5511(代)
アクセス| 〒461-8525 名古屋市東区東桜1-13-2
シネフィルチケットプレゼント
下記の必要事項、をご記入の上、「中⽇新聞社創業140年記念 スウェーデン絵画 北欧の光、⽇常のかがやき」@愛知県美術館 シネフィルチケットプレゼント係宛てに、メールでご応募ください。
抽選の上5組10名様に、無料観覧券をお送り致します。この観覧券は、非売品です。
転売業者などに転売されませんようによろしくお願い致します。
☆応募先メールアドレス miramiru.next@gmail.com
★応募締め切りは2026年7月20日 月曜日 24:00
記載内容
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