年末年始は、恒例の国宝「雪松図屏風」を展示しています。

また、今回は能面と能の意匠をテーマとし、同館が所蔵する能面・能装束のほか、能にまつわる茶道具などを展覧いたしました。

能の厳かな雰囲気とともに、華やかで美しい色やデザイン、作品のなかに広がる豊かな能の世界が楽しめます。

また、橋岡一路氏より新たに能面110面の寄贈を受けました。これらの能面は橋岡氏の手による古面の写しであり、優れた技術のみならず、能面に向き合う真摯な姿勢がうかがえます。

画像: (入り口に飾られた展覧会のポスター)

(入り口に飾られた展覧会のポスター)

三井記念美術館(東京・日本橋)では、「国宝 雪松図と能面×能の意匠 特集展示 新寄贈能面」の展覧会を、12月8日から2024年1月27日まで、以下のように開催いたします。

展示室1・2
能面

展示室3
茶道具

展示室4
国宝雪松図・能装束

展示室5
能面・楽器

展示室6
楽器

展示室7
特集展示:新寄贈能面

画像: (「翁(白色尉)」重要文化財 伝春日作 室町〜桃山時代・14〜17世紀)

(「翁(白色尉)」重要文化財 伝春日作 室町〜桃山時代・14〜17世紀)

観阿弥・世阿弥の周辺から「大和猿楽四座」を源流として、江戸時代には、観世、宝生、金剛、金春、喜多流の「能楽五流派」のシテ方の流派ができています。

本展は、北三井家と旧金剛家との関係により、主にこの度重要文化財に指定された旧金剛宗家伝来の能面を展示しています。

梅若家(観世流梅若派)の能を幼い頃から学んでいた白洲正子が、志賀直哉や柳宗悦に勧められて『お能』を上梓したのは、昭和18年(1943)のことです。以来『梅若実聞書』『お能の見方』などの本を出版します。本展覧会との関わりでいえば、『能面』(昭和38年(1963)・求龍堂)で、読売文学賞を受賞しています。その後『花と幽玄の世界―世阿弥』『世阿弥を歩く』など、世阿弥への関心が高まりますが、名人の亡くなる時代に女性には能はできないといって、能から一時遠ざかりました。しかし七十歳の後半になってから能楽師友枝喜久夫との出会いがあり、『老木の花―友枝喜久夫』に結実します。

金剛家は、能楽師のシテ方で、初世は金剛巌といいました。関西で活躍し、二世は品格のある芸風で知られています。その二三世が金剛右京ですが、坂戸金剛家の最後の人です。この人が亡くなる前年に、能楽の保護と振興のために、三井家に伝世の能面を譲ることになったのが歴史の一幕です。

画像: (「翁(白色尉)」重要文化財 伝日光作 室町時代・14〜16世紀)

(「翁(白色尉)」重要文化財 伝日光作 室町時代・14〜16世紀)

本展は、能面の「表情」に着目しています。「表情」とは、感情が顔にあらわれたものです。人間には、基本的な六感情(喜び・嫌悪・驚き・悲しみ・怒り・恐れ)があり、それらの感情が顔のパーツ・骨格・筋肉・皮膚・皺などの位置や形状の変化によって、様々な表情として顔にあらわれます。能面は、あらゆる感情を凝縮したひとつの造形であるともいえます。そこで、様々な感情が能面の表情としてどのように表されているのか、能面における独特の表現方法だけではなく、彫刻的な立体表現や質感の表現などにも目を向け、能面の表情の魅力を浮き彫りにします。

能は、役者が能面をかけて舞い謡う仮面劇です。原初的には、宗教的な歌劇を持続するものです。そうした祝言曲の古層を今なお伝えているのが、白色尉を着けた「翁」の演目です。舞台上で能面の目や口が動くことはありませんが、観客が豊かな感情を受け取ることができるのは、能面があらゆる感情を凝縮したひとつの造形であるからともいえます。

展示方法を工夫して、一部の能面は、裏側からも見ることができます。能面のバラエティ豊かな表情や立体感を間近で楽しんでいただきたいと思います。

画像: (「紅地青海波波丸模様厚板」明治時代・19〜20世紀)

(「紅地青海波波丸模様厚板」明治時代・19〜20世紀)

「能の意匠」がテーマの「展示室4」では、国宝の「雪松図」を取り囲むようにして、豪華な能装束が展示されています。

今回は、能装束の中でも特に華麗な唐織(からおり)と縫箔(ぬいはく)を中心に展示しています。その色彩や文様に着目して、織りや刺繍の豊かな色合い、植物・動物・幾何学などの多岐に渡る文様、創意工夫の凝らされた文様構成など、能装束ならではの視覚的な美しさと味わい深い情景が楽しめます。

画像: (会場に並べられた「能装束」)

(会場に並べられた「能装束」)

「意匠」とは、美術において色や形など装飾的に工夫を凝らすことをいいますが、能装束に表された色・文様などを紐解きながら、その華麗な美しさに迫ります。能舞台を彩る能装束には、様々な種類があり、組み合わせや着方によって配役の性格が多様に表現されます。

「展示室 3(如庵)」では、能にまつわる銘をもつ「茶道具」を展示しています。
「展示室5」「展示室6」では、豪華な蒔絵が施された能の「楽器」も鑑賞することができます。

画像: (特集展示の会場「橋岡一路氏作からの新寄贈能面」)

(特集展示の会場「橋岡一路氏作からの新寄贈能面」)

「展示室7」 の「特集展示:新寄贈能面」では、能面作家・橋岡一路(はしおか かずみち)氏から新たに寄贈された能面110面を一挙公開しています。

これらの能面は、橋岡氏の手による古面の写しです。橋岡氏の優れた技術のみならず、能面に向き合う真摯な姿勢をうかがうことができます。能楽関係者や美術館・博物館が所蔵する貴重な能面が、橋岡氏の卓越した技量によって写されているのです。

橋岡一路氏は、昭和6年(1931)に観世流の名家である橋岡家に生まれました。戦後は能楽の衰退により能面作家の道へ進み、多くの能面の制作や修復を手掛けています。なお、橋岡家は、明治時代に京都の三井家に出稽古で出入りし、三井家の東京移住に伴って三井家の観世擁立の橋渡しをするなど、三井家との深い繋がりがありました。このため、当館では平成23年(2011)にも、橋岡家伝来の能面などの寄贈を受けたほか、橋岡氏は当館所蔵の能面の修理も行っています。

画像: (「猩々」重要文化財 金剛頼勝作 江戸時代・17世紀)

(「猩々」重要文化財 金剛頼勝作 江戸時代・17世紀)

『三井記念美術館所蔵 旧金剛宗家伝来 能面』の「図録」には、詳細にこれらの「能面」について紹介されています。

「猩々」とは、サルのような顔をもち、毛は朱紅色で長く、人語を解し、酒が好きな中国の想像上の怪獣です。能の「猩々」では、水の妖精である猩々が孝行息子に不老長寿の酒を与えるという祝福能として演じられています。

本作品の製作者の金剛頼勝は、金剛家の十二代のシテ方です。

画像: (「雪松図屏風」国宝 円山応挙 江戸時代 18世紀)

(「雪松図屏風」国宝 円山応挙 江戸時代 18世紀)

話は前後しますが、毎年恒例展示される円山応挙の代表作の国宝「雪松図屏風」は、「展示室4
」 に、能装束と共に公開されています。

円山応挙(1733-95)は、江戸中期の画家で、丹波に生まれています。狩野派と西洋画法を学び、宋元の院体画を加えた写実主義は、平明温雅な装飾画を形成しました。江戸後期には、応挙を始祖とする門人の長沢芦雪などの円山派と南画の大成者である与謝蕪村の弟子の呉春にはじまる四条派を合わせた円山四条派として、京都画壇を風靡する存在へと変貌します。

画像: (観覧者が見る「雪松図屏風」国宝 円山応挙 江戸時代 18世紀)

(観覧者が見る「雪松図屏風」国宝 円山応挙 江戸時代 18世紀)

円山応挙は、京都の新興の三井家と関係がありました。「雪松図屏風」は、三井家からの特注品であり、特別に仕立てられた白い大きな紙に、墨・金泥・金砂子を用いて、雪中の松と土坡が立体的に描かれています。応挙の写生主義の実相とともに、絵に込められた長寿の願いや祝祭を味わうことができる傑作です。

画像: (左斜めより「雪松図屏風」国宝 円山応挙 江戸時代 18世紀)

(左斜めより「雪松図屏風」国宝 円山応挙 江戸時代 18世紀)

年末年始のひとときを、円山応挙の代表作「雪松図屏風」とともにお過ごしください。

画像: (「内覧会風景」)

(「内覧会風景」)

(本展のための「ニュースリリース」及び『三井記念美術館所蔵 旧金剛宗家伝来 能面』の「図録」により、作成いたしました。)

開催概要

会期 2023年12月8日(金)~2024年1月27日(土)

会 場 三井記念美術館
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住 所 東京都中央区日本橋室町二丁目1番1号 三井本館7階

[公式アクセスMAP]

時 間 10:00~17:00(最終入場時間16:30)

休館日 月曜日
年末年始12月25日(月)~1月3日(水)、1月9日(火) ※但し1月8日は開館

観覧料 一般1,000円 大学・高校生500円  中学生以下 無料 

※70歳以上の方は800円(要証明)
※20名様以上の団体の方は( )内割引料金となります※リピーター割引:会期中一般券、学生券の半券の提示で、2回目以降は( )内割引料金となります※障害者手帳を呈示の方、およびその介護者1名は無料です(ミライロIDも可)

TEL  03-5777-8600
(ハローダイヤル)

詳しいことは、ホームページをご覧ください。

URL

シネフィルチケットプレゼント

下記の必要事項をご記入の上、「国宝雪松図と能面✖️能の意匠」
シネフィルチケットプレゼント係宛てに、メールでご応募ください。
抽選の上5組10名様に招待券をお送り致します。この招待券は、非売品です。
転売業者などに転売されませんように、よろしくお願い致します。
応募先メールアドレス miramiru.next@gmail.com

応募締め切りは、2023年12月2日(木曜日) 24:00 まで

記載内容
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岡本勝人記

詩人・文芸評論家。評論集に『海への巡礼』『1920年代の東京 高村光太郎、横光利一、堀辰雄』『「生きよ」という声 鮎川信夫のモダニズム』(ともに、左右社)のほか、『仏教者柳宗悦 浄土信仰と美』(佼成出版社)がある。また詩集に『都市の詩学』『古都巡礼のカルテット』『ナポリの春』(ともに、思潮社)などがある。各紙に書評などを執筆している。

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