長年に渡って日本のアンダーグラウンド・シーンの帝王として君臨するロックバンド、THE FOOLS。この度、多くの表現者に影響を与え続けてきた彼らに密着した壮絶なドキュメンタリ ー『THE FOOLS 愚か者たちの歌』が 2023 年 1 月 13 日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開することが決定致しました。

2013 年 1 月、一人の男が横浜刑務所から出所してきた。男の名は伊藤耕。ロックバンド THE FOOLS のボーカリストだ。 THE FOOLS は 1980 年から活動する、アンダーグラウンド・シーンを代表する伝説的なバンド。名ギタリスト・川田良と無二の存在感を放つボーカリスト・伊藤耕を中心に真摯にロックを体現、ミュージシャンのみならず多くの表現者に影響を与え続けてきた。
本作はTHE FOOLS の 80 年代、90 年 代、そして 21 世紀の歴史を追ったドキュメンタリーである。ドラッグによる度重なる逮捕やトラブル、相次ぐメンバーの病死、そして伊藤の獄中死...。本作を手がけるのはキューバの音楽事情を活き活きと描いた『Cu-Bop』(15)の高橋慎一監督。10 代の頃から追い続けた THE FOOLS に 10 年かけて密着、メンバーの人生と併走し、彼らが命をかけて残した愛と反逆の音楽と物語を映画に刻みつけた。

画像: 孤高のロックバンド<THE FOOLS> 
彼らの"生と死"に10年かけて密着した壮絶なドキュメンタリー『THE FOOLS 愚か者たちの歌』公開!

今回完成したメインビジュアルでは、物語の中心となる伊藤耕、川田良の青年時代をおさめた写真と、21 世紀のライブでの瞬間をとらえた写真、バンドのフィルムが配置され、THE FOOLS の数十年にわたる壮絶な歴史とふたりのミュージシャンの軌跡へ思いが膨らむものになっている。その剥き出しの魂が、生きることの意味や尊さを観る者に突きつける究極の問題作にして感動作。

◆高橋慎一監督のことば

10 代の頃、パンクロックと出会ったことで僕の人生は大きく変わった。
複雑な家庭環境に生まれ、勉強も駄目、スポーツも駄目、何をやっても人並み以下で半ば人生を投げていた無気力 少年の胸に、パンクロックは天空からの雷鳴のごとく突き刺さった。鬱屈した実人生への怒りからだろう、当初僕はパンクの持つ暴力性、反社会性に激しく共鳴し、過激なステージングを標榜するバンドのライブに足繁く通った。1980 年代半ば、インディーズシーンが隆盛を迎え、都内のライブハウスでは数多くのロッカーたちが競うように、激烈な個性むき出しのステージを展開していた。
ライブハウスに足繁く通ううちに、インディーズシーンには『パンク』の一言ではくくれない、多様な音楽性を持つバンドが数多く存在することを知った。諧謔精神を演劇的なステージに昇華させた「有頂天」率いいるナゴムレコードの面々、パンクを暴力性ではなく共感によって拡散した「ザ・ブルーハーツ」、インディーズの精神でワールドミュージックを表現した「JAGATARA」。彼らのステージに触れ、その音楽世界の豊かさに魅了されたが、中でも僕を強烈に引きつけたのが「THE FOOLS」だった。
「THE FOOLS」が奏でる音楽は、奇を衒わないロックだ。それもとびきり極上の。奇抜な衣装も、過剰な演出も、豚の臓物を投げつけるような過激なステージングもない。普段着のまま舞台にたったメンバーは、圧倒的な技術と集中で、奇跡のような素晴らしいステージを何度も繰り広げた。かと思うと、どんな事情からかグダグダの演奏を聴かせる夜もあった。それどころか、ボーカリストの伊藤耕が遅刻して、ボーカル抜きでステージが始まる時もあっ た。
「THE FOOLS」のステージは、いつでも同じ演奏を提供するような、パッケージされた商品ではない。メンバーの生き方そのものを表現する、人生と地続きの舞台なのだ。彼らの圧倒的な演奏、その対極にある奔放さに魅了されライブハウスに日参する日々が続いたが、耕のドラッグ使用による逮捕と懲役により、活動が停止、フェードアウ トしていった。
2007年、10数年ぶりに「THE FOOLS」が活動を再開したとき、僕はフォトグラファーとして彼らのステージを撮影 し始めた。そして 2012 年からはカメラをビデオに持ち替え、ドキュメンタリー映画の製作に乗り出した。彼らの身に降りかかる騒動の数々を記録するには、写真ではなく映画でなければ表現しきれない、と感じたからだ。本作 をご覧いただいた方には、納得いただけると思う。
10 年越しの撮影で、メンバー4人の死に向き合うことになった。バンドは伊藤耕の獄中死により活動を停止するという悲劇的な結末を迎えるが、それでもなお、彼らが残した音楽、それを記録した映像の熱量が消えることはない。
命がけのロックンロールから何かを感じてもらえたら、監督としてそれ以上望むものはない。

伊藤耕 川田良 福島誠二
村上雅保 關口博史 若林一也 大島一威
中嶋一徳 高安正文 栗原正明 庄内健
ラインプロデューサー:伊賀倉健二
編集:遠山慎二
ノベライズ:志田歩『THE FOOLS MR.ロックンロールフリーダム』(東京キララ社)
監督・撮影 高橋慎一

2022 年/日本/カラー/ステレオ/113分/ヴィスタサイズ
配給マーメイドフィルム、コピアポア・フィルム

2023 年 1 月 13 日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次ロードショー

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