勇壮な英雄たち、ひるがえる刀剣、恐ろしげな怪異。時空を超え、武者たちのドラマティックな戦いがよみがえります。
スサノオノミコトとヤマタノオロチの戦いや源平合戦、そして上杉謙信と武田信玄の合戦など、軍記物語や武勇伝説に見られる英雄たちの姿を描いた浮世絵は「武者絵」と呼ばれ、葛飾北斎の「風景画」や菱川師宣、喜多川歌麿の「美人画」と並んで、多くの浮世絵師によって手がけられ、江戸時代に人気を博していました。
また、そうした武者絵と関連するイメージは刀剣の鐔(つば)のデザインとしても使用されています。

兵庫県立美術館において、11月20日(日)まで「ボストン美術館所蔵 THE HEROES 刀剣×浮世絵 -武者たちの物語」が開催されています。

画像1: 展覧会風景 photo by © cinefil

展覧会風景 photo by © cinefil

本展では、世界最高水準の日本美術コレクションを誇るボストン美術館の所蔵品から、武者絵118点、武者絵と共通のイメージがデザインされた刀剣の鐔27点、英雄たちの活躍を彩る重要な要素である刀剣20口(くち)が厳選して展示されます。
また、武者絵の世界をより分かりやすくご紹介するため、国内コレクションからも刀剣、浮世絵が特別出品されています。
ボストン美術館所蔵の武者絵はすべて日本初出品の作品です。
精緻な工芸技術で武者たちの姿をデザインした鐔27点を、武者絵とともに展示します。同一の主題を持つ鐔と浮世絵を並べることで、武者たちのイメージの広がりを鑑賞して頂けます。

ボストン美術館の名刀を通して、平安時代(11世紀)の刀工、安綱から江戸時代の新刀までの日本刀の歴史を概観することができます。また、ボストン美術館所蔵の刀剣がまとまって展示されるのは約半世紀ぶりのこととなります。
是非、この機会に、ボストン美術館の名品により、江戸時代の人々が熱狂した英雄たちの物語をお愉しみください。 それではシネフィルでも、展覧会の構成に従っていくつかの作品を観ていきましょう。

画像: 歌川国貞「渡辺ノ綱 坂田金時 平井保昌 源頼光」文化12年(1815)頃 William Sturgis Bigelow Collection photo by © cinefil

歌川国貞「渡辺ノ綱 坂田金時 平井保昌 源頼光」文化12年(1815)頃 William Sturgis Bigelow Collection
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画像: 「土蜘蛛退治図鐔 銘 松涛軒吾竹貞勝(花押)」明治時代(19世紀) Charles Goddard Weld Collection

「土蜘蛛退治図鐔 銘 松涛軒吾竹貞勝(花押)」明治時代(19世紀) Charles Goddard Weld Collection

神代の武勇譚(たん)

『古事記』や『日本書紀』、各地の風土記には神々だけでなく天皇や地方豪族の武勇譚も伝えられています。
本章ではスサノオノミコトや雄略天皇などの姿を描いた作品が紹介されています。

画像: 歌川国芳「小子部栖軽豊浦里捕雷」天保5〜6年(1834〜35)頃 Bequest of Maxim Karolik

歌川国芳「小子部栖軽豊浦里捕雷」天保5〜6年(1834〜35)頃 Bequest of Maxim Karolik

平安時代の武者

本章では、藤原秀郷(ふじわらのひでさと)、源頼光(みなもとのよりみつ)、平惟茂(たいらのこれもち)など10世紀から11世紀にかけて活躍した武士の物語を主題とした浮世絵が紹介されています。
特に、源頼光とその四天王による土蜘蛛(つちぐも)退治や大江山の酒呑童子(しゅてんどうじ)退治の物語は、江戸時代の通俗史書『前太平記』にも記述されており、武者絵だけでなく、歌舞伎や浄瑠璃としても親しまれていました。

画像: 歌川国芳「源頼光の四天王土蜘退治之図」天保10~11年(1839~40)頃 William Sturgis Bigelow Collection

歌川国芳「源頼光の四天王土蜘退治之図」天保10~11年(1839~40)頃
William Sturgis Bigelow Collection

源平時代の英雄

『平家物語』や『源平盛衰記』などによって語られた、源平合戦を題材とした作品が紹介されています。源平合戦で活躍した武将たちの様々なエピソードは、武者絵の画題として多く描かれてきました。特に源義経は幼少期から悲劇の最期に至るまでの様々なエピソードが絵画化されています。義経所持の伝承のある「刀 折返銘 長円(薄緑)」も併せて展示されています。

画像: 歌川国貞「武蔵坊弁慶 御曹子牛若丸」文化10〜11年(1813〜14)頃 William Sturgis Bigelow Collection photo by © cinefil

歌川国貞「武蔵坊弁慶 御曹子牛若丸」文化10〜11年(1813〜14)頃 William Sturgis Bigelow Collection
photo by © cinefil

鎌倉時代の物語

父を殺された曽我兄弟が、源頼朝が催した富士の裾野の狩場で敵討ちを果たすまでを描いた『曽我物語』は、武者絵の題材として親しまれていました。『曽我物語』を題材とした作品の他に、北条時政が神奈川・江ノ島の弁財天から家紋の由来となる三つ鱗を授かる場面や、有力御家人・和田義盛の反乱で活躍した朝比奈義秀を描いた作品も展示されています。

画像: 歌川国貞「源頼朝公富士之裾野牧狩之図 三枚続」文化10年(1813)頃 William Sturgis Bigelow Collection

歌川国貞「源頼朝公富士之裾野牧狩之図 三枚続」文化10年(1813)頃 William Sturgis Bigelow Collection

『太平記』の武将たち

『太平記』は、後醍醐天皇の即位から南北朝の動乱までを中心に記述した軍記物語です。
浮世絵では、合戦の様子よりも楠正成や新田義貞など、南朝方の挿話を画題としたものが比較的多く描かれる傾向がありました。

画像: 歌川国芳「勇魁三十六合戦 四」新田義貞 嘉永4〜5年(1851〜52)頃 Gift of the Anne Gordon Keidel Trust of June 2016

歌川国芳「勇魁三十六合戦 四」新田義貞 嘉永4〜5年(1851〜52)頃 Gift of the Anne Gordon Keidel Trust of June 2016

川中島合戦

上杉謙信と武田信玄による川中島合戦を描いた武者絵が紹介されています。
永禄4年(1561)に行われた第四次川中島の合戦での謙信と信玄の一騎打ちは、初期浮世絵の時代から多く描かれてきた画題です。また、上杉謙信の愛刀との伝えがある「太刀 銘 国俊」や、上杉家の刀剣台帳にも載る「太刀 銘 長船 長光 文永十一年十月廿五日」も併せて展示されています。

画像: 歌川国芳「川中島信玄謙信旗本大合戦之図」弘化2年(1845)頃 William Sturgis Bigelow Collection

歌川国芳「川中島信玄謙信旗本大合戦之図」弘化2年(1845)頃 William Sturgis Bigelow Collection

小説のヒーローたち

19世紀になると、『平家物語』や『太平記』といった古典軍記物語だけでなく、「読本」と呼ばれる伝奇的な冒険物語の登場人物を題材とした武者絵も描かれるようになりました。ここでは、伝奇物語を題材とした武者絵が紹介されています。

画像: 卍楼北鵞「椿説弓張月 巻中略図 山雄(狼ノ名也)主のために蟒蛇を噛んで山中に骸を止む」天保11年(1840)頃 William Sturgis Bigelow Collection

卍楼北鵞「椿説弓張月 巻中略図 山雄(狼ノ名也)主のために蟒蛇を噛んで山中に骸を止む」天保11年(1840)頃 William Sturgis Bigelow Collection

ボストン美術館の名刀

ボストン美術館には約600口の日本刀が収蔵されています。ボストン美術館所蔵の刀剣を時代や流派の流れがわかるようにまとめて展示されています。

画像: 「太刀 銘 備州⻑船住兼光」鎌倉時代(14世紀) Charles Goddard Weld Collection

「太刀 銘 備州⻑船住兼光」鎌倉時代(14世紀) Charles Goddard Weld Collection

画像: 「金梨子地家紋散糸巻太刀拵」江戸時代(17世紀) Charles Goddard Weld Collection

「金梨子地家紋散糸巻太刀拵」江戸時代(17世紀) Charles Goddard Weld Collection

兵庫県と関連のある作品

兵庫県川西市の多田神社は、源満仲、頼光、頼信、頼義、義家の五公を祀り、清和源氏の祖廟とされます。多田神社は酒呑童子討伐の際に使用した源頼光の宝刀「鬼切丸」と伝わる刀を所蔵しており、この意味でも源頼光の物語との関係が深いと言えるでしょう。

画像: 歌川国芳「源頼光」文政3年(1820)頃 William Sturgis Bigelow Collection

歌川国芳「源頼光」文政3年(1820)頃 William Sturgis Bigelow Collection

源平合戦の逸話の中には現在の兵庫県内を舞台としたものがいくつか見られます。
例えば「一の谷合戦」は、摂津国須磨から福原(現在の神戸市兵庫区平野付近)で行われており、「箙(えびら)の梅」「鵯越(ひよどりごえ)の逆落(さかお)とし」などの物語はこの地域を舞台としています。

画像: 歌川国芳「義経之軍兵一ノ谷逆落シ之図」天保11〜12(1840〜41)頃  個人蔵

歌川国芳「義経之軍兵一ノ谷逆落シ之図」天保11〜12(1840〜41)頃  個人蔵 

Photographs © Museum of Fine Arts, Boston(個人蔵を除く)

この機会に、「ボストン美術館所蔵 THE HEROES 刀剣×浮世絵 -武者たちの物語」で、時空を超え、ドラマティックな英雄たちの活躍をご堪能ください。

画像2: 展覧会風景 photo by © cinefil

展覧会風景 photo by © cinefil

展覧会概要

会期 2022年9月10日(土)〜2022年11月20日(日)
会場 兵庫県立美術館
住所 兵庫県神戸市中央区脇浜海岸通1-1-1 (HAT神戸内)
時間 10:00〜18:00 (最終入場時間 17:30)
休館日 月曜日  9月20日(火)、10月11日(火)
※ただし、9月19日(月・祝)と10月10日(月・祝)は開館
観覧料 一般 1,800円(1,600円) 大学生 1,400円(1,200円) 高校生以下 無料
70歳以上 900円(800円)
障がいのある方(一般) 450円(400円)
障がいのある方(大学生) 350円(300円)  
※事前予約制ではありません。混雑時は入場制限を行います。
※( )内は20名以上の団体料金。希望の場合は1ヶ月前までに直接美術館にご連絡ください。
※一般以外の料金で利用の方は証明できるものを観覧当日に要提示。
※障がいのある方1名につき、介護の方1名無料です。
※コレクション展は別途観覧料が必要です。(本展とあわせて観覧の場合は割引があります。)
TEL 078-262-1011

シネフィルチケットプレゼント

下記の必要事項、をご記入の上、「ボストン美術館所蔵 THE HEROES 刀剣×浮世絵 -武者たちの物語」@兵庫 シネフィルチケットプレゼント係宛てに、メールでご応募ください。
抽選の上5組10名様に、招待券をお送り致します。この招待券は、非売品です。
転売業者などに転売されませんようによろしくお願い致します。
☆応募先メールアドレス miramiru.next@gmail.com
★応募締め切りは2022年10月3日 月曜日 24:00
記載内容
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1、氏名 
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