『破壊の日』は東京五輪を控え、強欲という物の怪に取り憑かれた社会をお祓いしてやろうと思い、昨年の一月に企画を立ち上げました。
しかし、その物の怪はコロナという現実的な死の脅威、あるいはコロナに脅える人の心に変貌しました。コロナはいずれ収束に向かっていくと思います。でも、一度植えつけられた恐怖心を振り払うことはなかなか難しいことだと思います。映画がその恐怖心を少しでもふり祓うことができれば作る意味があると思っています。作らなければ僕自身が先に進めないという想いがあります。コロナと共に生きていく(あるいは死の)覚悟が試されている気がしています。
自分の生き方を変えることは勇気がいることですが、自分自身もそのことを突きつけられています。この映画で映画を撮る意味、生きる意味を、再び証明したいと思っています。
という監督の強いメッセージの元にクラウドファンディングでお金が集められ、2020年に製作され、上映された『破壊の日』がオリンピック開幕式を迎える7月23日より緊急再上映されます。
また、続けて7月24日にこの作品の連作とも言える最新作『全員切腹』公開記念ライブ&プレミアム上映。翌25日には京都にて同じく公開記念ライブと豊田監督自身によるスペシャルなイベントが続きます。
cinefilでは、そんなオリンピック開幕日からのスペシャル上映が続く豊田利晃監督に緊急インタビューを行いました。
cinefil緊急インタビュー
豊田利晃監督
三部作について
『狼煙が呼ぶ』2019年
「2019年。4月の18日に拳銃不法所持で逮捕された事件があって、ピストルが出てきて捕まったわけなんですが、マスコミが面白がって、いろんな報道されて。その拳銃は、おじいさんの形見で、天皇陛下の近衛兵してたので、その時に所持していた、手のひらサイズの錆びついて、動きもしないただの鉄の塊みたいなものだったんですが、その時、警察も「これは大丈夫だ、捕まらないよ。ただ、届けだけ出して欲しい。」みたいなこと言われて、警察署行ったらマスコミが待ってて、面白そうにワイドショーで特集されたりして騒がれ、すぐ10日で出てきたんですけど--。その後、事実に関しては夕刊紙一紙は、ちゃんと報道してくれたんですが、他のメディアは取り上げず、面白い報道しかしませんということで、掲載されずに終わりました。いくつかの週刊誌などではインタビュー取ろうかといってくれたんですが、そうじゃなくて、映画監督なので、映画として、作品として返したいことで、予算ゼロで作ったのが、『狼煙が呼ぶ』だったんです。」
『破壊の日』2020年
「「狼煙が呼ぶ」の時に全国50箇所ぐらいのミニシアターで同時公開みたいなことやって、いろんな映画館に足を運んだんですが、その中で、福島の「フォーラム福島」の支配人が、原発の問題を色々教えてくれて、新幹線を遅らせて、支配人にいろんな話を聞かせてもらって、この状況の中でオリンピックをやるっていうのは、「アンダーコントロール」って安倍首相の有名な言葉がありますが、それは、おかしいんじゃないかなと思い始めたんです。その福島での経験のあと、コロナで中止になったんですがロックフェスのプロデューサーをやってくれないかという話があり山形に行った時に修験道の発祥の地の一つでもある出羽三山神社に行き、そこで修験道の人たちが何をしているかとか色々と教えてもらったんです。この神社は、疫病退散のためにできた神社で、疫病退散を払うということで毎年12月31日に松例祭(しょうれいさい)というのが行われるんです。「疫病退散と福島原発」この二つを持って東京オリンピックに対抗する映画を作れないかなと思ったんです。で、その前に渋谷のユーロスペースに行って、世間話している時に7月24日(2020年)オリンピックが始める日の番組が決まらないという話があって、「その枠ください」と開けてもらって翌年、クラウドファンディングで資金を集め出した途端に、横浜に船がきてコロナが始まった。東京オリンピックも中止になり、クラウドファンディングも止まっちゃった。全然伸びない。このような状況の中で、役者も色々キャスティングも進めていたんだけど、発表することも、憚れることになった。宣言が開けた5月に詳細を発表して、6月に撮影をして、完成したのが7月22日。翌23日に渋谷のライブハウスで前夜祭をやって、7月24日に公開した。オリンピックは無くなったけど、もともとクラウドファンディングで7月24日に公開しますって宣言したんで、みんなはオリンピックが延期になったから映画も延期していいんじゃないかという話もあったんですが、いやいや、そこの約束は守る。俺たちは延期しない。なんとかやりきりましたね。当時の状況より、今の方がひどくなっている気がしますけど--感染者数も。あの頃、みんなビビっていましたけど。」
『全員切腹』2021年
「それで、2021年はどうしようかな、何をしようかな。別に何もしなくても良かったんですが、コロナの緊急事態宣言とか、蔓防とか長引いてなんとなくみんなの気持ちが落ちているみたいなのを今年の頭ぐらいに感じて、誰かがものを作って、まあガス抜きではないですけど、必要なんじゃないかなと思って、作ったのが新作の『全員切腹』。これも、自分らでクラウドファンディングして作って、26分しか撮影できなかったんですが、強烈な作品になっていると思います。」
三部作?
「最初は、『全員切腹』で終わりだと思い、3000万集めて長い映画取ろうと思ってたんですよ。ところが1000万しか集まらなかった。ということは、三分の一しかできなかった事で、この流れ的には来年またやるのか、再来年やるのか、映画監督が個人が発信したいことをそのまま映画にする作り方はこの先も続けるかもわからないなかで--これが永遠に続いていくと、手塚治虫の「火の鳥」みたいになっていくんじゃないかなと。『狼煙が呼ぶ』『破壊の日』『全員切腹』は、登場人物が時代が異なってながらも繋がっていってるんですよ。今はその先の話、未来の話もちょっと描きたいと思っています。」
オリンピック開幕の『破壊の日』再上映へのメッセージ
「やっぱりみんなが今東京だったり、日本で生きてて抱えているフラストレーションとか、理不尽なことが眼の前でまかり通って行われている中で、怒りの共有すらもできていないじゃないかなと思っているんですよ。ツイッターとかインスタとかSNSで怒りすらもすぐ消えていくっていうか、怒りの共有みたいなことをしないといけないんじゃないかなって『破壊の日』を撮った時思っていましたね。どうなんですかね〜。今年、2021年。オリンピックが去年は24日だったんだけど、今年は23日になって、開幕式の日に『破壊の日』を上映できるということは、面白い体験だし、シアターギルドみたいな新しい感覚で表現を見せようとしている場所で、見てもらうっていうのは、僕自身もちょっと見たいかなという気持ちもありますね。ちょうど映画の上映が終わる頃、開幕式が始まるんですよね。実際、オリンピックのその時期に、よくある映画をやってても響かないと思うんですよ。周りの騒音に負けてしまうと。でも『破壊の日』をみて表出たらオリンピックやっている。次元が変わるというか、”創造力だけが未来を作る”と思っているし、その創造力を持って23日というマジックデーに合わせて観るのは、ちょっと面白いじゃないかなと思っています。奇妙な体験だと思うし、なかなか一生で出会わない経験じゃないですかね。」
三部作を自主映画として撮った豊田監督から若い表現者たちへ
「自分たちの資本で映画を作ることは、映画を作る人はみんな一度やったほうがいいと思います。でないと、商業映画をずっとやって来てて分かってきたお金の使われ方、矛盾みたいなことがたくさんあるかもしれないけど、自分で資本の動き方をみて全部やったら、すごく見えてくるものもあるし、勉強になると思います。それは矛盾ではなくてそういうシステム中で映画を作ることを楽しめることがわかります。誰も文句言う奴はいないし、やりたいことができるし、そういう仲間が集まればできると思います。ただ、それは結構大変ですよ--。」
豊田利晃 Toshiaki Toyoda
1969年大阪府生まれ。 将棋奨励会に9歳から17歳まで所属する。
1991年、阪本順治監督『王手』の脚本家として映画界にデビュー。
1998年、千原浩史(千原ジュニア)主演『ポルノスター』で監督デビュー。その年の日本映画監督協会新人賞、みちのく国際ミステリー映画祭’99年新人監督奨励賞を受賞する。
2001年に初のドキュメンタリー映画『アンチェイン』を監督。
2002年には人気漫画家・松本大洋の原作『青い春』(主演:松田龍平)を映画化し、大ヒットを記録。ドイツのニッポンコネクション映画祭で観客賞を受賞。
2003年『ナイン・ソウルズ』(主演、原田芳雄、松田龍平)
2005年、直木賞作家角田光代の原作『空中庭園』(主演:小泉今日子)を監督。
2006年には、アテネ国際映画祭で全作品レトロスペクティブ上映されるなど、国内のみならず世界各国から高い評価を受ける。
また、中村達也、勝井祐二、照井利幸と音楽ユニット「TWIN TAIL」を結成。ライジングサン・ロックフェスティバル他、現在も活動中。
2009年に中村達也主演『蘇りの血』を、
2011年に瑛太を主演に『モンスターズクラブ』、
2012年には藤原竜也、松田龍平が主演する『I’M FLASH!』。
2013年、NYで行われた日本映画祭JAPAN CUTSで世界を魅了する業績を残した監督へ贈られるCUT ABOVE AWARDを受賞。
2014年には東出昌大主演『クローズ EXPLODE』を監督。
2015〜16年舞台『怪獣の教え』(窪塚洋介、渋川清彦)を演出。
2018年、『泣き虫しょったんの奇跡』(松田龍平、松たか子)。
写真集『MOVIE STILLS FROM TOSHIAKI TOYODA 1998-2018』を刊行。
2019年、短編映画『狼煙が呼ぶ』(渋川清彦、浅野忠信、高良健吾、松田龍平、切腹ピストルズ)。全国50館のミニシアターで初の同日公開を成し遂げる。
自伝『半分、生きた』を出版。
2020年、『プラネティスト』(窪塚洋介、GOMA)が4月に公開。
7月24日、『破壊の日』(渋川清彦、マヒトゥ・ザ・ピーポー、イッセー尾形)が公開。イタリアのオルトレ・ロスペッキオ国際映画祭2020で監督賞を受賞。
2021年2月、日野浩志郎と鼓童の音楽映画『戦慄せしめよ』が配信で公開。
オリンピック競技大会開会式より『破壊の日』緊急再上映!
日時:23日、26日、27日、28日、29日、30日
会場:代官山シアターギルド( 東京都渋谷区猿楽町11−6 サンローゼ代官山 1階 )
予約は下記より
https://theaterguild.co/movie/detail/HAKAInoHI/
豊田利晃監督最新作『破壊の日』 本予告
【あらすじ】
7年前、田舎町の炭鉱の奥深くで見つかった怪物。その怪物は何なのかは不明のまま不穏な気配を残して時が過ぎる。7年後、村では疫病の噂が広がり、疑心暗鬼の中、心を病む者が増えていく。そんな中、修験道者の若者、賢一は生きたままミイラになりこの世を救うという究極の修行、即身仏になろうと行方不明になる、、、、、。
そして、「物の怪に取り憑かれた世界を祓う」と賢一は目を覚ます。
企画・監督・脚本:豊田利晃
出演:渋川清彦 マヒトゥ・ザ・ピーポー/イッセー尾形/長澤樹 大西信満 和田光沙 飯田団紅/窪塚洋介/松田龍平
音楽: GEZAN/照井利幸/切腹ピストルズ/MARS89
撮影:槇憲治 照明:宗賢次郎 衣装:宮本まさ江 ヘアメイク:佐々木ゆう
助監督:佐和田惠/相良健一 サウンドデザイン:北田雅也 VFX:道木伸隆
編集:山田佑介/村上雅樹 デザイン:大橋修 スチール:名越啓介/砂田耕希
宣伝プロデューサー:奥田アキラ
エグゼクティブプロデューサー:豊田利晃/行定勲
プロデューサー:出原知之/村岡伸一郎/菅原信宏
企画・製作・配給:IMAGINATION
2020年/日本語/カラー/56分
©「破壊の日」製作委員会
『全員切腹』
2019年『狼煙が呼ぶ』、2020年『破壊の日』、そして2021年再び、映画館を震わせる極音映画の最新形『全員切腹』が東京オリンピックで揺れる夏を赤く染める!
主演、侍役に「沈黙」「Giri/Haji」でハリウッド進出を果たした窪塚洋介、介錯人に「狼煙が呼ぶ」「破壊の日」に引き続き渋川清彦、女郎役に「ソワレ」「HOKUSAI」の芋生悠。「ラスト・サムライ」のユキリョウイチ、切腹ピストルズ総隊長の飯田団紅も重要な役で登場。
音楽は切腹ピストルズ、Mars89、鼓童の中込健太×住吉佑太、照井利幸×中村達也×ヤマジカズヒデの新曲がエンドテーマを担当。26分の壮絶な映画に震える覚悟をお持ちください。
『全員切腹』海外ポスター
最新作『全員切腹』予告
映画『全員切腹』公開記念ライブ&プレミア上映会
日時:2021年7月24日(土)16時開場 17時開演
会場:渋谷WWWX(https://www-shibuya.jp/)
入場料:7,240円(税込、ドリンク代別)
※7・24限定手拭い付き、オールスタンディング
※豊田組SHOPにて限定販売(https://toyodafilms.stores.jp/)
演目:『全員切腹』ワールドプレミア先行上映
舞台挨拶:窪塚洋介、渋川清彦、豊田利晃
ライブ:切腹ピストルズ、中込健太×住吉佑太(鼓童)、Mars89、スペシャルゲスト
映画『全員切腹』公開記念ライブ(完売)
日時:2021年7月25日(日)15時開場 16時開演
会場:京都 上七軒歌舞練場(http://www.maiko3.com/)
入場料:7,250円(税込)
※7・25上七軒限定特製うちわ付き
※豊田組SHOPにて限定販売(https://toyodafilms.stores.jp/)
演目:『全員切腹』
舞台挨拶:窪塚洋介、渋川清彦、豊田利晃
ライブ:切腹ピストルズ(ゲスト 志人)、中込健太×住吉佑太(鼓童)、スペシャルゲスト
物語は明治初期。ある流れ者の浪人の侍が、「井戸に毒を撒いて疫病を広めた罪で切腹を命じられる。果たして、その侍は、、、、、。
『全員切腹』
出演:窪塚洋介、渋川清彦、芋生悠、ユキリョウイチ、飯田団紅
監督・脚本・企画・プロデューサー:豊田利晃
プロデューサー:村岡伸一郎/撮影:槇憲治 照明:宗賢次郎/録音:吉田憲義/美術:佐々木尚/衣裳:宮本まさ江/美粧:高嵜光代/装飾:鎌田康夫、中込秀志/操演:小林正巳/造形:中田彰輝/大道具:井上修次/監督補:野尻克己/音楽:切腹ピストルズ、中込健太(鼓童)、住吉佑太(鼓童)、照井利幸、中村達也、ヤマジカズヒデ、Mars89/音響演出:北田雅也/編集:村上雅樹/VFX:道木伸隆/デザイン:大橋修/スチール:名越啓介/題字:飯田団紅/宣伝プロデューサー:奥田アキラ/アシスタント・プロデューサー:久永光、翁長穂花/製作:豊田組
CCP DCP/ビスタサイズ/26分/2021年