英国屈指の美の殿堂ロンドン・ナショナル・ギャラリーの、国外初めてとなる大規模所蔵品展が、遂に2020年日本で開催されることになりました。
ロンドンが世界に誇る至宝ともいえる作品の数々、ゴッホの《ひまわり》(1888年)やモネの《睡蓮の池》(1899年)、稀少なフェルメールの後期の秀作をはじめ、イタリア・ルネサンスからバロック期のヨーロッパ、イギリス絵画、そしてポスト印象派に至るまで、豪華61点の名画が、日本で初公開されます。6月18日から東京・国立西洋美術館にて好評を博し、11月3日からは、大阪・中之島の国立国際美術館にて開催されます。

ロンドン・ナショナル・ギャラリーは、イギリス政府が銀行家から購入したわずか38点の絵画と邸宅を母体とし、1824年に設立されましたが、現在ではロンドン中心部のトラファルガー広場に移転し、2,300点を超える絵画を収蔵しています。
同館は、王室コレクションが母体となった他のヨーロッパの著名な美術館とは異なり、英国市民の「心を豊かにする喜び」のために創設された美術館です。
その質の高い名画の体系的なコレクションは、「西洋絵画の教科書」とも言われ、同館は、世界中から毎年約600万人の人が訪れる世界を代表する美術館のひとつとなりました。

本展では同館のヨーロッパ芸術の歴史をたどる13世紀から19世紀末までのイタリア、スペイン、オランダ、フランドル、フランスの絵画コレクションの中から、ウッチェロ、ボッティチェッリ、ティツィアーノ、プッサン、レンブラント、ベラスケス、ムリーリョ、カナレットらの作品が展示されます。
またターナー、コンスタブル、さらに印象派のルノワール、ドガ、ポスト印象派のセザンヌ、ゴーガンが描いた傑作も公開されます。

美術ファンはもちろん、そうでない方も一度は目にしたい名画の数々。
是非、この機会をお見逃しなく、英国が世界に誇る珠玉のコレクションをご鑑賞ください。
それではシネフィルでも代表的な作品を紹介致します。

画像: カルロ・クリヴェッリ 《聖エミディウスを伴う受胎告知》 1486年 卵テンペラ・油彩・カンヴァス 207×146.7cm ©The National Gallery, London. Presented by Lord Taunton, 1864

カルロ・クリヴェッリ 《聖エミディウスを伴う受胎告知》
1486年 卵テンペラ・油彩・カンヴァス 207×146.7cm ©The National Gallery, London. Presented by Lord Taunton, 1864

大天使ガブリエルが、精霊になって、処女マリアにキリストを身ごもったことを知らせるという「受胎告知」のテーマは初期ルネサンス期にはよく描かれていましたが、このクリヴェッリの描いた《聖エミディウスを伴う受胎告知》では、街の模型を持っている守護聖人エミディウスが大天使ガブリエルの横に寄り添っていたり、画面から果物が飛び出していたり、と、ユーモアにあふれています。
遠近法を用いた大胆な構図で、画面右のマリアの部屋がクローズアップされています。
イタリアのルネサンスの市街が大理石の素材や、豪華な浮彫彫刻など、細部まで見事に描かれています。
ヴェネツィア派らしい鮮やかな色彩や、象徴的な意味を持つモティーフを繊細に描いている点なども見どころとなっています。

画像: ヨハネス・フェルメール 《ヴァージナルの前に座る若い女性》 1670-72年頃 油彩・カンヴァス 51.5×45.5cm  ©The National Gallery, London. Salting Bequest, 1910

ヨハネス・フェルメール 《ヴァージナルの前に座る若い女性》
1670-72年頃 油彩・カンヴァス 51.5×45.5cm  ©The National Gallery, London. Salting Bequest, 1910

17世紀、風俗画や風景画など、オランダは絵画の黄金時代を迎えました。
フェルメールの《ヴァージナルの前に座る若い女性》では、美しく設えられた室内で、女性がヴァージナルという鍵盤楽器に 手をかけていますが、来訪者が到着したのか、振り返り、こちらに視線を投げかけている様子が描かれています。
「光の魔術師」とも言われていたフェルメール。女性の蒼いドレスの光沢や繊細なレースがきらめいている描写が見事です。
金額縁の絵画や、ヴァージナルの蓋の裏側の絵は何かを暗示しているのでしょうか。フェルメールの作品には画中画がよく描かれています。
音楽は恋愛の主題とされていました。手前の楽器ヴィオラ・ダ・ガンバは合奏の相手がいることを示唆しているようです。
フェルメール は、同時代の人々の日常の一瞬を切り取った風俗画で名を馳せました。

画像: レンブラント・ハルメンスゾーン・ファン・レイン 《34歳の自画像》 1640年 油彩・カンヴァス 91×75cm ©The National Gallery, London. Bought, 1861

レンブラント・ハルメンスゾーン・ファン・レイン 《34歳の自画像》
1640年 油彩・カンヴァス 91×75cm ©The National Gallery, London. Bought, 1861

本作は17世紀のオランダ絵画黄金期に活躍し、「光と影の画家」として讃えられる巨匠レンブラントらしい、完成度の高い作品です。
レンブラントは100点以上もの自画像を描いたといわれていますが、本作はその中でも傑作であると評価されています。
顔の斜め上からスポットライトを当てることによって、明暗の対比が見事になされ、立体的に描かれています。
幸福感に満ち溢れているというよりは、どこか哀愁を感じさせるレンブラントの表情は、若くして絵画の才能を開花させたものの、裕福な妻の実家の財産を散財して経済的に破綻し、更に子供や妻の死に直面するなど、次々と不幸な出来事が巻き起こる彼の人生を反映しているかのようです。

画像: ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー 《ポリュフェモスを嘲るオデュッセウス》 1829年 油彩・カンヴァス 132.5×203cm ©The National Gallery, London. Turner Bequest, 1856

ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー 《ポリュフェモスを嘲るオデュッセウス》
1829年 油彩・カンヴァス 132.5×203cm ©The National Gallery, London. Turner Bequest, 1856

ターナーはイギリスが世界に誇る風景画家です。
ギリシャ神話の英雄オデュッセウスが単眼の巨人 ポリュフェモスを倒し、仲間とともに出帆する場面 です。赤い衣を羽織った船上のオデュッセウスは勝ち誇り、奇岩の背後の雲中にそのシルエットを見せる 巨人を嘲(あざけ)っています。
しかしターナー は物語のわかりやすい描写よりも、光や自然現象に 大きな関心を寄せており、朝焼けの光に彩られた 幻想的な風景が鮮烈な色彩で描き出されています。
細かい描写で神話を描くのではなく、光と色彩でドラマティックな風景を描いたのです。
早朝の光と大気感までが伝わってくる美しい海景画です。

画像: ピエール=オーギュスト・ルノワール 《劇場にて(初めてのお出かけ)》 1876-77年 油彩・カンヴァス 65×49.5cm ©The National Gallery, London. Bought, Courtauld Fund, 1923

ピエール=オーギュスト・ルノワール 《劇場にて(初めてのお出かけ)》
1876-77年 油彩・カンヴァス 65×49.5cm ©The National Gallery, London. Bought, Courtauld Fund, 1923

ルノワールが劇場の主題を描いた作品は、他に《桟敷席》が有名です。
パリの都会的な上流階級の日常生活の一場面が、印象派らしく光と陰で美しく描かれています。
初めて観劇に出かける少女の少し緊張した可憐な姿。
ボックス席の少女の左側の客席から少女のほうを見る男性客の姿も確認できます。
観劇は、男女の出会いの場、社交場であったようです。

画像: クロード・モネ 《睡蓮の池》 1899年 油彩・カンヴァス 88.3×93.1cm ©The National Gallery, London. Bought, 1927

クロード・モネ 《睡蓮の池》
1899年 油彩・カンヴァス 88.3×93.1cm ©The National Gallery, London. Bought, 1927

印象派の巨匠モネはジヴェルニーの自宅の庭に睡蓮を植えた池を造り、日本風の太鼓橋を架けました。橋を真横からとらえたこの構図は、1899年前後に多く描かれています。
「光の画家」とも言われたモネは、刻一刻、移ろいゆく光を描き、夏の陽光が反射する水面のきらめきを点描で描きました。

画像: フィンセント・ファン・ゴッホ 《ひまわり》 1888年 油彩・カンヴァス 92.1×73cm ©The National Gallery, London. Bought, Courtauld Fund, 1924

フィンセント・ファン・ゴッホ 《ひまわり》
1888年 油彩・カンヴァス 92.1×73cm ©The National Gallery, London. Bought, Courtauld Fund, 1924

本展のメインビジュアルとなっているゴッホの代表作《ひまわり》。
南仏のアルルでまぶしい太陽のもと、ゴッホは、《麦畑》(本展未出品)など明るい色彩の光輝く作品を描くようになりました。
本作は、アルルでゴーガンとの共同生活で寝室に飾るため、描かれたものといわれています。
現存するゴッホの静物画の約半数はパリで描かれ、アルルでは25点ほど描かれたようです。
ひまわりの絵は、パリでも描いていましたが、アルル時代に花瓶に挿したひまわりを7点描きました。1点が焼失してしまいましたが、6点は現存していて、本作はそのうちの1点です。
黄金色に輝くひまわりは、太陽と同じように南仏アルルを象徴する生命力あふれるシンボルで、ゴッホの生命力となったのでしょう。

世界の名だたる画家たちによる芸術の競演。
ルネサンスからポスト印象派まで、美の殿堂「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」で、珠玉の西洋美術をご堪能ください。

展覧会概要

展覧会名:ロンドン・ナショナル・ギャラリー展
会期:2020年11月3日(火・祝)〜2021年1月31日(日)
※会期が変更になりました
会場:国立国際美術館(大阪・中之島)
〒530-0005 大阪市北区中之島4-2-55
開館時間:午前9時~午後5時30分(金曜、土曜日は午後8時まで開館)
※開館時間が変更になりました
※入場は閉館の30分前まで
休館日:11月16日(月)、11月24日(火)、11月30日(月)、12月14日(月)、
12月30日(水)〜1月2日(土)、1月18日(月)
※変更になる可能性があります
主催:国立国際美術館、ロンドン・ナショナル・ギャラリー、読売新聞社、読売テレビ
特別協賛:キヤノン、大和証券グループ
協賛:花王、損保ジャパン日本興亜、大日本印刷、トヨタ自動車、三井物産、イワタニ産業、
きんでん 清水建設、非破壊検査株式会社
協力:大塚国際美術館、日本航空、ブリティッシュ・カウンシル、ダイキン工業現代美術振興財団
観覧料金:本展は、新型コロナウイルスの感染予防・拡大防止の観点から、会場内混雑緩和のため、会期中の全日程において日時指定制を導入いたします。詳しくは展覧会サイトをご覧ください。

【日時指定入場券】一般1,700円 大学生1,100円 高校生700円
【前売用 日時指定券】一般200円 大学生100円 高校生100円
※中学生以下無料(要証明)。「日時指定入場券」・「前売券用 日時指定入場券」をお持ちの付添者がいる場合は、同じ時間帯にご入場いただけます。それ以外の場合は、当日先着順でのご入場となります。
※心身に障がいのある方およびその付添者1名は、入場無料となります。(要証明)日時指定券のご利用は不要です。ご入場時は会場係員へお声がけください。
※団体券の販売は中止します。
※割引対象についてはこちらをご確認ください。観覧当日に証明書・会員証などのご提示が必要です。ご提示いただけない場合には、日時指定入場券(一般1,700円、大学生1,100円、高校生700円)との差額をお支払いいただきます。
※日時指定入場券、日時指定入場券(割引券)、前売用 日時指定券は、9月12日(土)10時より順次読売新聞オンラインチケットストア、ローソンチケットより販売いたします。国立国際美術館での販売はございません。
※本料金で同時開催の「コレクション2 米・仏・独・英の現代美術を中心に」もご覧いただけます。
※国立国際美術館 友の会会員の方は、友の会ページをご確認ください。
お問い合わせ:(06)6447-4680(国立国際美術館代表)

ロンドン・ナショナル・ギャラリー展@大阪 シネフィルチケットプレゼント

下記の必要事項をご記入の上、ロンドン・ナショナル・ギャラリー展@大阪 cinefil チケットプレゼント係宛てに、メールでご応募ください。
抽選の上5組10名様に、ご本人様名記名の招待券をお送りいたします。
記名ご本人様のみ有効の、この招待券は、非売品です。
チケットの転売は禁止です。

☆応募先メールアドレス info@miramiru.tokyo
*応募締め切りは2020年11月16日 月曜日 24:00

記載内容
1、氏名 
2、年齢
3、当選プレゼント送り先住所(応募者の電話番号、郵便番号、建物名、部屋番号も明記)
  建物名、部屋番号のご明記がない場合、郵便が差し戻されることが多いため、
  当選無効となります。
4、ご連絡先メールアドレス、電話番号
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  5つ以上ご記入下さい(複数回答可)
8、連載で、面白くないと思われるものの、筆者名か連載タイトルを、3つ以上ご記入下さい
 (複数回答可)
9、よくご利用になるWEBマガジン、WEBサイト、アプリを教えて下さい。
10、シネフィルへのご意見、ご感想、などのご要望も、お寄せ下さい。
   また、抽選結果は、当選者への発送をもってかえさせて頂きます。

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