9月19日(土)より新宿・K’s cinema ほか全国にて公開される、今村彩子監督作品『友達やめた。』の全国一斉ネット配信が決定。
生まれつき耳のきこえない今村監督が、アスペルガー症候群の友人・まあちゃんとの関係に悩み、「友達」でいるために、自分たちに向けてカメラを回し、他者を理解することの理想と現実のギャップを描き、コミュニケーションの本質に迫った本作。発達障害当事者やご家族の方々からの「映画館」という場(人混み、暗闇、大音量)に対する不安の声を受け、9/19 (土)の劇場公開初日にネット配信も同時スタートすることとなった。
当初は新型コロナウイルス対策と劇場支援の一 環としてネット配信を検討していたが、自分たちの想像が及ばないだけで、劇場公開のタイミングで新作映画を見たくとも、様々な事情で叶わない方たちがいることに気づき、今回の全国一斉配信が決まった。「今回のネット配信がより多くの方々にとって、安心して『友達やめた。』を楽しみいただける機会となれば嬉しい」と配給は語っている。
また、公開に先立ち、30 年以上にわたり発達障害と向き合い続けている精神科医の本田秀夫さんや、書籍「結婚の奴」で自分らしい結婚の実現に向けた過程を赤裸々に綴られた能町みね子さん、自身が感じた違和感を掘り下げ、描き続けている漫画家の田房永子さん他、11名の方々から応援コメントが到着。
〈『友達やめた。』ネット配信概要〉
【配信プラットフォーム】Vimeo オンデマンド
【配信期間】9 月 19 日(土)10:00〜10 月 31 日(土)23:59
【鑑賞期限】レンタル購入から 24 時間以内/ストリーミングのみ、ダウンロード不可。
【鑑賞料金】※国内一律 ※売上の50%(経費差引後)は協力劇場に均等に配分されます
お一人様 1,800 円/ペア割(お二人様)3,400 円/グループ割(3〜5名様)5,000 円
◎ネット配信や協力劇場については以下サイトをご参照ください
『友達やめた。』ネット配信案内ページ→ http://studioaya-movie.com/tomoyame/online.html
●ネット配信に関する今村彩子監督のコメント
映画のバリアフリーを考えた時、すぐ思いつくのは「耳のきこえない人のために字幕 を、目の見えない人のために音声ガイドを」という声です。しかし、今回、発達障害や感覚過敏など様々な理由で、自宅での視聴を希望する方がいらっしゃることを知りました。ネット配信は、私が知らないだけで、実に多様なニーズに応えられるのではないかと思います。
『友達やめた。』に寄せられた応援コメント
本田秀夫(精神科医)
自分とは異なるバックグラウンドを持つ人たち同士がどうすればうまく共存できるのか、という本質的な問題について、理想論だけではない感情の部分まで示している。それは、簡単に答えが出るものではないかもしれないが、とても大切な問題だ。
能町みね子(文筆家)
構図としては、“まともな”今村監督が“ちょっとおかしな”まあちゃんを撮っているはずなのだけど、観ていると、わっどうしよう私まあちゃんの気持ちのほうがわかってしまうぞ?と慌ててしまった。人によっては、きっといろんな部分で価値観が逆転してこんがらがる作品。何がマイノリティで何がマジョリティか、それは常に流動的だ――と、そんな問題意識を孕んだ映画であると同時に、中年独身女性(あえてこう言います)の柔らかい友情の話でもある。扉を開けてまあちゃんを迎えるシーンが何度もあるけれど、毎回うれしくなる。
田房永子(漫画家)
発達障害を持つ友人が私に話してくれる「生き苦しさ」。頭ではなんとなく分かるけどハッキリとは分からなかった。 映画の中の二人の対話を聞いていたら、それが肌でわかる感覚が私の体に訪れた。言葉で説明しづらい何かは、言葉で表現しきれない何かによって伝えることができる。それが分かって、人間同士の不思議さ愛おしさで胸がいっぱいになり、たくさん涙が出ました。
北川恵海(作家)
なんだか物騒なタイトルだなぁ。それが第一印象でした。しかし作品を観てみると......なるほど、そうか。いいよね、友達やめたって。本当は、友達やめたくなるくらい人と向き合うのって、難しいし怖いし面倒くさい。でもそうするだけの価値が「友達」にはあるんじゃない? 改めてそう感じさせてくれたお二人に、ちょっと感謝したくなりました。
綾屋紗月 (自閉スペクトラム・手話ユーザー/東京大学先端科学技術研究センター)
人が、自らに巣食うカテゴリー思考や偏見から抜け出すためには、そのカテゴリーに属する多くの人々に出会う必要がある。それを知らない者たちが辿る足掻きを、本作品は目を背けたくなるほど誠実に切り取ろうとしている。
くらげ (「ボクの彼女は発達障害」著者)
我が家も毎日がプチ「夫婦やめた」状態だ。でも、お互いを必要とする気持ちと信頼が、「言葉」を超越したコミュニケーションを育んできたと思う。「コミュニケーションとはなにか?」と考えるとき、本作から得られるヒントは多いはずだ。
寺島ヒロ (漫画家/「うちのでこぼこ兄妹」著者)
恋人同士であれば、欲しい愛と与えられる愛の形が違えば別れてしまうだろう。では、友達同士で欲しい友情と与えられる友情の形が違う時は? 悩み、苛立ち、時には「友達やめた」と言いつつも、作品に昇華させた監督の執念は見事。 気の合う友達が欲しいと思っている人には特に見てほしい。出来れば 2 度。
滝口のぞみ(臨床心理士)
自分を変えるではなく、相手を変えるではなく、相手を支えるではなく、支えてもらうではなく、一緒にいようと試みるとき、アスペルガーの人にとって一番苦手なはずの同じものを見つめる・共同注意が、うっかり生まれていることに出会って心動かされることがあります。この映画にはたくさんのそれが見つかりました。
松森果林(ユニバーサルデザインアドバイザー)
分かり合えなさをそのままにせず、かといって完全に分かり合えることを目標ともせず、お互いの困りごとを一緒に眺め、それはどんなときに起こるのか、何がそうさせるのか。今村監督とまあちゃんのやりとりは当事者研究の対話そのものだと感じた。「分かり合う」とは到達するものではなく、変化し続けるプロセスそのものである。
纐纈あや(映画監督)
遠い他人は許せても、近い他人は許せない。近くなるほど、互いの“ものさし”の違いがよくわかる。怒っても注意しても無視しても、既に出来上がっているものさしは変わらない。さあ、どうする?ずばり、あきらめる!自分のものさしを相手に当てることを。そして、まあちゃんとあやちゃんはふたりのものさしを作り始めるのだ。人と関わるって、新しいものさしを作り続けていくことじゃないか。一番面倒で忍耐のいるこの作業に、泣けてくるほどまっすぐ不器用に向き合うふたり。あきらめという名の愛の物語。
伊勢真一(映画監督)
「このままでは、まあちゃんを撮ってるのではなく、アスペを撮ってることになってしまう...」 と今村さんが呟くシーンがある。その通りだなあ、と思う。「アスペルガー」を撮り、「うつ」を撮り、「ろう」を撮ることに終始しているだけのドキュメンタリーが、なんと多いことか、そのことがわかりやすく描かれていれば良し、とするモノの見方...思考停止。そこに、一人のヒトが生きていることを撮ることこそが、ドキュメンタリーの魅力なのにね。人間は宇宙同様に、深いのだ。映画もね。
公式サイト
ネット配信案内ページ
■ネット配信協力劇場(※順次追加予定)
【東京】Kʼ’s cinema 【神奈川】横浜シネマ・ジャック&ベティ
【石川】シネモンド 【長野】松本 CINEMA セレクト 【長野】相⽣生座・ロキシー
【愛知】シネマスコーレ 【三重】伊勢進富座 【京都】京都シネマ 【大阪】第七藝術劇場
【広島】シネマ尾道 【佐賀】シアターシエマ
『友達やめた。』予告編
作品概要
空気を読みすぎて疲れてしまい、人と器用につき合うことができない、アスペルガー症候群アスペの、まあちゃん。理解があるような顔で、内⼼悶々としたものをかかえる、映画監督のわたし。些細なことで、ふたりの仲がギクシャクするたび、これって、彼女がアスペだから?それとも、わたし⾃⾝の問題なの?わかり合おうとしなくちゃ...いい⼈でいなくちゃ...ああ、でも!まあちゃんと友達でいるために、わたしは自分たちに向けてカメラを回しはじめた...はずが、たどりついた答えは、友達やめた?!
コミュニケーションの壁に苦しむ⾃身の姿を、エイヤ!と晒した『Start Line』から4年、生まれつき⽿のきこえない映画監督今村彩子が、新たな葛藤と向きあう。⼈と⼈ってほんとうに分かりあえるの? 友達って何? 普通ってどういうこと? わたしたちを縛るやっかいな“常識”を捨て、もっと自由に軽やかに、⼼と心を重ねあう。ヒリヒリして、イラッときて...でも何だかほっこりする、まあちゃんとわたし、ふたりの“違 い”から生まれたものがたり。
監督・撮影・編集:今村彩⼦
構成:⼭田進⼀
音楽:やとみまたはち
音響効果:野⽥香純
整音:澤⽥弘基
CG編集:瀧下智也
イラスト:小笠原円
宣伝デザイン:中野香
配給協⼒・宣伝:リガード
配給:Studio AYA
2020年/日本/84分/カラー/DCP/ドキュメンタリー
©2020 Studio AYA