画像: アーティゾン美術館外観部分

アーティゾン美術館外観部分

1952 年(昭和 27 年)に東京都心で開館し、老舗美術館として永年親しまれてきたブリヂストン美術館が、2020年1月「アーティゾン美術館」として、装いも新たに生まれ変わりました。

「アーティゾン」とは、「ART」(芸術)と「HORIZON」(地平)を組み合わせた造語で、「新しい美術の地平を拓く」という願いが込められています。
地上23階建て新築の「ミユージアムタワー京橋」の1階から6階が美術館で、従来の約2倍の展示面積を誇っています。
明るい光あふれる吹き抜けの空間に、洗練された内装の広々とした展示室で、素晴らしい芸術作品をご堪能ください。
アーティゾン美術館では、4 階展示室にて「石橋財団コレクション選」と題し、2,800 点余りからなる収蔵品の中から、選りすぐりの作品が選ばれ、紹介されています。
2020年6月23日[火]から10月25日[日]までは、「印象派の女性画家たち」と「新収蔵作品特別展示:パウ ル・クレー」が同時開催されています。

同館では、従来の印象派の収蔵作品に加え、開館に向けて 印象派を代表する4人の女性画家たち、ベルト・モリゾ、メアリー・カサット、マリー・ブラックモン、エヴァ・ゴンザレスによる5点の新作品をコレクションに加えました。
このたびは、これら新収蔵作品が一挙公開されると共に、館蔵の関連作品8点、さらには同様に新しく収集された西洋の芸術家の肖像のヴィンテージ写真のコレクションからの写真作品6点もあわせて展示されています。
是非、この機会に、新しいアーティゾン美術館で至福のひとときをお過ごしください。
それでは、シネフィル上でも、「印象派の女性画家たち」の主な作品を見ていきましょう。

画像: メアリー・カサット《日光浴(浴後)》1901年 石橋財団アーティゾン美術館蔵

メアリー・カサット《日光浴(浴後)》1901年 石橋財団アーティゾン美術館蔵

柔らかな光に包まれ、明るい色彩で母子の愛情あふれる作品を描いたカサットは印象派を代表する女性画家のひとりです。
カサットは、アメリカ出身の画家で、1872年にピサロに出会ったことが、1879年の第4回印象派展に出品するきっかけになりました。
ここでは川辺の草の上に座って寄り添う母子の姿が描かれています。
前景には、優雅に横臥する母親と裸の子ども。その後ろにはラベンダー色の花が見えます。後景には、水面に映る木々の緑が揺らぐ様子がとらえられています。対角線上に人物を配置する構図や装飾的な衣装など、この頃の作品には日本の浮世絵の影響が伺えます。
                                     

画像: ベルト・モリゾ《バルコニーの女と子ども》1872年 石橋財団アーティゾン美術館蔵

ベルト・モリゾ《バルコニーの女と子ども》1872年 石橋財団アーティゾン美術館蔵

モリゾは、カサットと同じく、印象派グループの数少ない女性画家のひとりで、母子や子どもなどを主題とした繊細で穏健な作品を描きました。
本作は、モリゾの画歴において最も評価された作品 のひとつです。
パリ西部の自邸が舞台となっていて、着飾った女性と子どもが バルコニーから眼下に広がるパリの景観を見渡している、日常の何気ないワンシーンが描かれています。
素早く、活気 のある筆づかいながら、細部までがきめ細やかに描かれています。
背景が比較的粗く描かれているのに対し、右上の花瓶に生けられた赤い花や女性の瀟洒な衣装、子どもの青いリボンのある衣装はていねいに仕上げられています。
女性のモデルは姉のエドマかイヴとされています。子どものモデルは、イヴの娘です。
モリゾは、制作当時マネと非常に近い間柄にあり、この頃二人の画家同士で影響しあったことが指摘されています。
この作品にもモダンな主題を革新的な技法で描いているところにマネの影響が垣間見え、新しいパリの風景が洗練された雰囲気で描かれています。

画像: エヴァ・ゴンザレス《眠り》1877-78年頃 石橋財団アーティゾン美術館蔵

エヴァ・ゴンザレス《眠り》1877-78年頃 石橋財団アーティゾン美術館蔵

ゴンザレスはフランスの画家。父親は神聖ローマ皇帝カール5世によって貴族に序されたモナコの名家の末裔であり、母親はベルギー出身の音楽家です。1869 年に画家アルフレッド・ステヴァンスの紹介でマネを紹介され、そのモデルとなり、次いでその弟子となりました。
サロンへの出品を優先したため、第1回印象派展への出品を断り、その後も師マネと同様に印象派展に出品することはありませんでした。
しかしゴンザレスの絵画様式は、マネと印象派のそれと近いものであり、それゆえに印象派の女性画家 のひとりに数えられます。
画家の妹ジャンヌが、夜の帳が下りた寝室のベッドで目を瞑って 静かに横たわっており、その前にある花柄の椅子には薄衣がかけられています。
夜の情景ながら、白をアクセントとして随所に用い、マネを思わせる粗いながらも生気を感じさせる賦彩がなされています。
ゴンザレスの代表作の《朝の目覚め》(ブレーメン美術館)は、これとは対照的に若い女性の朝の目覚めを、みずみずしいタッチで描いています。これら2つの作品は、ほぼ同じ大きさのカンヴァスに同様の構図で描いていることから、対画であると見なす向きが多いようです。
                                       

画像: マリー・ブラックモン《セーヴルのテラスにて》1880年 石橋財団アーティゾン美術館蔵

マリー・ブラックモン《セーヴルのテラスにて》1880年 石橋財団アーティゾン美術館蔵

マリー・ブラックモンも印象派の女性画家です。
夫フェリック スを通じて印象派の画家たちを知りました。
この作品は1880年の印象派展に出品した同タイトルの作品(ジュネーヴ、プティ・パレ美術館)と同時期に制作されました。
モデルは、友人の画家フ ァンタン=ラトゥールとその妻ヴィクトリア・デュブール、そして 右側の女性は画家自身であろうとの見方がある一方で、画家の息子ピエールは、妹のルイーズ・キヴォロンがそのモデルになったと語っています。
右側の女性の白い衣装は、太陽の光を受けて輝く様子が、青と淡いピンクで描かれているなど、モネやルノワールの絵画に学び、光による微妙な色調の変化をとらえた、印象派らしい描法となっています。

きらめく光を受けた、美しい色彩の印象派絵画はきっと、みなさまを感動させてくれるでしょう。
コロナ禍で開幕が遅れましたが、爽やかな初夏の風を感じ、新生アーティゾン美術館「印象派の女性画家たち」を是非、ご鑑賞ください。

展覧会概要

展覧会名:石橋財団コレクション選  特集コーナー展示「印象派の女性画家たち」
主 催:公益財団法人石橋財団アーティゾン美術館
会 場:4階展示室 石橋財団コレクション選 特集コーナー展示
会 期:2020年6月23日[火]―10月25日[日]
開館時間:10:00―18:00 (毎週金曜日は20:00まで/当面の間、夜間開館は中止)
*入館は閉館の30分前まで 休館日:月曜日(8月10日、9月21日は開館)、8月11日、9月23日
※アーティゾン美術館は日時指定予約制となっていますのでご注意ください。
公式ウェブサイトよりご来館前に「ウェブ予約チケット」をご購入いただけます。
公式サイト: https://www.artizon.museum
アーティゾン美術館 〒104-0031 東京都中央区京橋1-7-2
Tel 03-5777-8600(ハローダイヤル)
交通案内: JR 東京駅(八重洲中央口)、 東京メトロ銀座線・京橋駅(6 番、7番出口)、 東京メトロ・銀座線 / 東西線 / 都営浅草線・ 日本橋駅(B1 出口)から徒歩 5 分
企画・構成:新畑泰秀(アーティゾン美術館学芸課長)
同時開催 :ジャム・セッション 石橋財団コレクション×鴻池朋子
鴻池朋子 ちゅうがえり(6階展示室)
「第58回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展日本館展示帰国展
「Cosmo-Eggs|宇宙の卵」(5階展示室)
※4階展示室では本展示を含む「石橋財団コレクション選」、特集コーナー展示「新収蔵作品特別展示:パ ウル・クレー」も合わせてご鑑賞頂けます。

※チケットプレゼントは、「ウェブ予約チケット」のため、申し訳ございませんが、今回はありません。

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