鋭い写実性と光と影の手法で一躍、脚光を浴びた天才画家ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ(MichelangeloMerisi da Caravaggio(1571-1610))。
ルネサンスの巨匠ミケランジェロではなく、カラヴァッジョ(Caravaggio)という通称で知られるイタリア人画家で、神話や宗教画を題材にしたドラマティックな情景は、センセーションを巻き起こし、17世紀バロック絵画の先駆者となりました。
カラヴァッジョの存在がなければ、ルーベンスやレンブラント、フェルメールなどの巨匠も生まれなかったと言われています。
ところがカラヴァッジョは天才画家の資質を持ちながら、生まれながらの激しい気性のため、暴力事件や殺人を起こしてしまう犯罪者でもあったのです。

このたび、イタリア芸術の至宝であり大変貴重な機会となる「カラヴァッジョ展」が、北海道立近代美術館、名古屋市美術館で好評を博し、2019年12月26日から2020年2月16日まで大阪のあべのハルカス美術館で開催されます。  

本展では、カラヴァッジョの波乱に満ちたドラマティックな人生と、それまでの絵画表現を大きく革新したカラヴァッジョ芸術の光と闇に迫ります。                     

38歳という若さで生涯を終えたカラヴァッジョの真筆の作品数は60点あまりといわれ、大変稀少とされていますが、その中から、日本初出品を含む作品約10点(帰属作品含む)に同時代の画家や追随者らの作品を加えた計約40点が一堂に集結する、大阪で初めての展覧会です。
カラヴァッジョの斬新な画風、迫真の写実性を是非、この機会に会場でご鑑賞ください。

音声ガイドは、NHKEテレ「旅するイタリア語」に出演し、イラストレーターとしても活躍する俳優、田辺誠一さんです。                                  

今回の展覧会ではカラヴァッジョ作品の横に、画家自身が作品を語る設定のパネルが付いています。
絵は 『テルマエ・ロマエ 』などで知られる、イタリア通のマンガ家、ヤマザキマリさんです。  どうぞお楽しみください。
それでは、展覧会の構成に沿って、代表的な作品を紹介致します。

天才画家の出発

カラヴァッジョがわずか6歳の時に、ミラノで流行していたペストで父が他界してしまい、少年は独り立ちを余儀なくされます。
カラヴァッジョは、13歳で家を出て、ミラノの画家シモーネ・ペテルツァーノの従弟となりました。
聖書への情景や静物画を得意としたペテルツァーノに学んだことに加え、当時のミラノにはレオナルド・ダ・ヴィンチの《最後の晩餐》の壁画があり、人物や静物の写実的な描写にふれたことは、カラヴァッジョに少なからぬ影響を与えました。 

第Ⅰ章 1600年前後のローマにおけるカラヴァッジョと同時代の画家たち

1854年にミラノで画家としての修行をスタートさせたカラヴァッジョは1592 年から96年頃までにローマに到着したと考えられます。                              母ルチアが死去し、弟妹と分けたわずかな財産を手に、芸術の中心地ローマでの成功を夢見て向かったのかもしれません。    

画像: 《リュート弾き》 1596-97年頃 個人蔵

《リュート弾き》 1596-97年頃 個人蔵

芸術の中心地ローマに出て、工房を転々と渡り歩いたカラヴァッジョでしたが、当時のローマ絵画界の売れっ子カヴァリエーレ・ダルピーノの工房に入り、花や果物を描くことを任せられました。
そして、美術愛好家のデル・モンテ枢機卿に見いだされ、枢機卿の邸宅にいた少年たちをモデルに、果物などの静物を組み合わせた作品を描きました。                  
この作品では、楽器を弾きながら歌っている少年に斜光線が当てられ、スポットライトのように美しさを際立たせています。
花や果物の描写は、とても繊細でみずみずしさが感じられ、見事です。

画像: 《執筆する聖ヒエロニムス》1605~06年ボルゲーゼ美術館蔵 ©Ministero per i Beni e le attività culturali-Galleria Borghese

《執筆する聖ヒエロニムス》1605~06年ボルゲーゼ美術館蔵
©Ministero per i Beni e le attività culturali-Galleria Borghese

学者肌の聖人、聖ヒエロニムスを描いた本作は、画家を支援してくれたボルゲーゼ枢機卿のために描いたもの。
質素なたたずまいの中にも、枢機卿と同じ赤い衣を身に着け、一心に執筆に励む聖人の姿には、知性と気高さが漂っています。

1600年、カラヴァッジョは、サン・ルイージ・デイ・フランチェージ聖堂コンタレッリ礼拝堂のために制作した聖マタイ伝の成功により、ゆるぎない名声を獲得しました。
一方で、熾烈なパトロン獲得競争の影響などにより、画家同士のトラブルが絶えませんでした。

第Ⅱ章 カラヴァッジョと17世紀のナポリ画壇

ローマで10数年に渡って活動し、栄光を獲得したカラヴァッジョでしたが、生来の激しい気性のため乱闘の末、殺人を犯してしまいました。
彼はローマから逃亡し、4年に渡る放浪生活を送ることになります。
このときを境に様式も変化を見せ、闇が強化され、筆触が粗くなり、構図が単純化され、悲劇性が強調されていきます。

画像: 《法悦のマグダラのマリア》 1606年 油彩・カンヴァス個人蔵

《法悦のマグダラのマリア》 1606年 油彩・カンヴァス個人蔵

逃亡したカラヴァッジョが、死の直前まで携行していたとも言われる作品が、この《法悦のマグダラのマリア》です。
17世紀に、信仰によって得られる恍惚感を表す「法悦」というテーマが流行し、カラヴァッジョはその先駆けとなったようです。
聖女の頬には涙の粒が光り、カラヴァッジョ自身の罪への後悔の念が重ねられているかもしれません。

画像: 《聖セバスティアヌス》1606年 ローマ、個人蔵 ©Courtesyproprietario privato

《聖セバスティアヌス》1606年 ローマ、個人蔵
©Courtesyproprietario privato

聖セバスティアヌスは、キリスト教を禁じるローマ皇帝の怒りにふれ、体中に矢を放たれました。
多くの画家たちが手がけてきた主題ですが、カラヴァッジョは矢をあえて一本だけにすることで、聖人の心身の痛みをリアルに表現しています。

ローマ近郊の小都市に潜伏した後、南イタリアに向かい、ナポリ、マルタ島、シチリア島などを転々としたことは結果的に、革新的なカラヴァッジョ様式を南イタリア各地に伝播させることとなりました。
なかでもナポリの若い画家たちはカラヴァッジョの劇的な明暗対比や写実表現を吸収し、自らの作品に反映させていきました。
ナポリ画壇は一気に活性化しましたが、カラヴァッジョはローマへの思いやまず、恩赦への最後の望みを託した絵を携えて、船でローマへ向かったのです。

画像: 《聖アガピトゥスの殉教》1606~09年頃パレストリーナ(ローマ)、司教区博物館蔵 ©Museodiocesano prenestino di arte sacra. Proveniente dal Convento di Sant’Antonio abate inPalestrina-Proprietà del Fondo Edifici di Culto,Ministerodell’Interno. Foto di Stefano Pinci-Diritti di riproduzione Diocesi di Palestrina

《聖アガピトゥスの殉教》1606~09年頃パレストリーナ(ローマ)、司教区博物館蔵
©Museodiocesano prenestino di arte sacra. Proveniente dal Convento di Sant’Antonio abate inPalestrina-Proprietà del Fondo Edifici di Culto,Ministerodell’Interno. Foto di Stefano Pinci-Diritti di riproduzione Diocesi di Palestrina

ローマで殺人を犯した直後、カラヴァッジョは近郊のパレストリーナに逃げ込み、領主のフランチェスコ・コロンナに匿われました。若くして殉教したパレストリーナの守護聖人、アガピトゥスの絵は、その感謝のしるしとして描かれた可能性が高いです。

画像: 《歯を抜く人》1608~10年頃ウフィツィ美術館群パラティーナ美術館蔵 ©Gabinetto fotografico delle Gallerie degli Uffizi

《歯を抜く人》1608~10年頃ウフィツィ美術館群パラティーナ美術館蔵
©Gabinetto fotografico delle Gallerie degli Uffizi

口から血を流しながら激痛に耐える人物と、満身の力で抜歯を決行する人物、そしてさまざまな反応の見物人。
逃亡期間中に描かれたとみられるこの特異な風俗画には、激動の人生を生きたカラヴァッジョの人間観察の目がいかんなく発揮されています。

第Ⅲ章 カラヴァッジョ様式の拡がり

4年間の放浪生活の末、再びローマの地を踏むことを願って船出したカラヴァッジョでしたが、途中の港で誤認逮捕され、作品を載せた船が出航してしまい、絵を取り戻すべく旅を続ける途中、トスカナのポルト・エルコレの海岸で熱病に倒れ、1610年7月18日、帰らぬ人となりました。
享年38歳。
教皇の恩赦が出たのは、その直後でした。

カラヴァッジョ様式を故郷や別の地に伝えたカラヴァッジェスキ(カラヴァッジョの追随者)たちは、カラヴァッジョを直接知らない多くの画家に、その様式を伝える役割を果たしました。

ルネッサンス時代の3大画家、ミケランジェロ、ラファエロ、ダ・ビンチによって完成された写実表現を、カラヴァッジョは強烈な明暗と緻密で生々しい描写により、さらに迫真的な表現へと進化させました。
またその斬新な画風は、それまでの神話や宗教画の絵画表現を大きく改革するものでした。
彼の衝撃的な作品は、時空を超えてこれからも私たちを魅了し続けるでしょう。
天才的画家でありながら、犯罪者となり、波乱の人生を生きたカラヴァッジョ。
彼のドラマティックな生々しい芸術を是非、あべのハルカス美術館でご堪能ください。

展覧会概要 

展覧会名:「カラヴァッジョ展」   

会場:あべのハルカス美術館 〒545-6016大阪府大阪市阿倍野区阿倍野筋1-1-43 あべのハルカス16階TEL:06-4399-9050     

会期:2019年12月26日(木)〜2020年2月16日(日) 
時間:火~金/10:00〜20:00 月土日祝/10:00~18:00 
※ 入場は閉館の30分前まで
休館日:12月31日(火)、2020年1月1日(水)、14日(火)
観覧料:一般1,600円(1,400円)
    高校・大学生1,200円(1,000円)
    中・小学生600円(400円)
    小学生未満無料
※( )内は前売/団体15人以上料金
※障がい者手帳をお持ちの方は、美術館チケットカウンターで購入した本人と付き添い      1名まで当日料金の半額

主催:あべのハルカス美術館、読売新聞社、読売テレビ
後援:イタリア大使館、イタリア文化会館
協賛:野崎印刷紙業、岩谷産業、きんでん、清水建設、大和ハウス工業、パナソニック、非破壊検査
協力:アリタリア-イタリア航空、日本航空、日本通運
学術協力:メタモルフォジ財団

お問い合わせ先
Tel:06-4399-9050あべのハルカス美術館)

関連イベント多数あります。下記よりホームページをご覧ください。

カラヴァッジョ展@大阪cinefilチケットプレゼント

下記の必要事項、をご記入の上、カラヴァッジョ展@大阪 cinefil チケットプレゼント係宛てに、メールでご応募ください。
抽選の上5組10名様に、招待券をお送りいたします。
この招待券は、非売品です。
転売業者などに転売されませんようによろしくお願い致します。

☆応募先メールアドレス info@miramiru.tokyo
*応募締め切りは2020年1月27日 24:00 月曜日 

1、氏名
2、年齢
3、当選プレゼント送り先住所(応募者の電話番号、郵便番号、建物名、部屋番号も明記)
  建物名、部屋番号のご明記がない場合、郵便が差し戻されることが多いため、当選無効となります。
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