画像2: <Gala Presentation部門 公式会見>

<Asian Filmmaker of the year(今年のアジア映画人賞)授賞式 & 公式上映>

『真実』のGala Presentation部門出品に続き、今年のAsian Filmmaker of the yearにも選ばれた是枝裕和監督。「Asian Filmmaker of the Year(今年のアジア映画人賞)」は毎年アジア映画産業と文化発展に最も優れた業績を残したアジア映画関係者および団体に与える賞で、昨年は坂本龍一が受賞したことでも大きな話題となりました。

授賞式と公式上映に加えて、上映後には直接監督に質問ができるQ&Aイベントもあることから、840キャパの会場がチケット発売開始後たったの3秒で完売し、当日券も朝一で売り切れとなった本上映。会場の客層は、20代~30代が圧倒的に多く、全員がいまかいまかと監督の登場を待ちわびていました。いよいよ、
会見を終えた是枝監督が、劇場の後方にある扉から客席を通って登場すると、大きな拍手と歓声が巻き起こり、大盛り上がり!

ステージに上がり、トロフィーを受け取った是枝監督は、「本当にありがとうございます。開幕式に参加ができずとても残念でしたが、こういう形で釜山映画祭に参加が出来て、皆さんの前で喜びの言葉を伝えられることが本当に嬉しいです。」と喜びを明かし、「名誉賞をいただくことが増えてきて、そろそろキャリアの仕上げに入っていると思われるのではないかという不安がよぎっています(笑)ただ今回映画作りをご一緒したカトリーヌ・ドヌーヴさんに比べたら、まだまだ駆け出しの若造で、これからの僕の映画人としてのキャリアの道のりは、これまで過ごしてきた25年間よりもさらに長くなるだろうと、長くしたいなと、思っておりますので、これからの作品も頑張って作っていきたいと思います」と今後の抱負を語りました。

最後に、「このトロフィーは、尊敬するアジアの映画人から渡されたリレーのバトンだと思ってしっかり受け止めて、次の世代のアジアの作り手たちに渡したいと思います。いろんな対立や隔たりを超えて、映画と映画をつないでいく役割を担っていければいいなと今日改めて思いました。」と明かすと、再び盛大な拍手が巻き起こりました。

続けて、舞台挨拶として「この映画は、母と娘の物語です。いろんな母と娘が作品の中に登場します。ここ数作、重たい作品が続いたので、観終わった後に、気持ちが前向きで明るくなるような、少し遠回りして家までの道を歩きたくなるような、そんな作品を作りたいなと思いました。素直に楽しんでくださいと言える作品に仕上がっていると思います。」と、これから映画を鑑賞する観客へコメントを寄せ、笑顔で会場を後にしました。

<Q&A>

上映後、温かな拍手に包まれながら再び出迎えられた是枝監督。
Q&Aが始まると、客席からは公式会見に負けないほどの手が挙がり、両手で必死にアピールする人も続出!劇中の登場人物のカット割りを分析して質問したり、監督の過去作からの考察を述べるような猛者が現れたり、監督の言葉に何度もうなずいたりと、熱心なファンたちによって会場はヒートアップ!質問の手が絶えないため、急遽Q&Aの時間を延長し、最後は監督が壇上から観客を当てる形となりました。

Q&Aが終わった直後は、サインを求めるファンたちが監督のもとへ殺到!
監督は、会場が使用できる時間のギリギリまで笑顔でファンサービスに応え、その後バックステージ裏でも、スタッフたちからサインを懇願されたりと、韓国でも高く評価される是枝監督の確かな人気がますます明らかとなりました。

以下、Q&Aのトーク内容書き起こし。

Q:ジュリエット・ビノシュと出会ったきっかけはなんですか?

僕の映画をずっとフランスで公開してくれているプロデューサーがいるんですが、彼女が“ジュリエット・ビノシュが会いたがっている”と僕に紹介してくれて、そこから一緒にお寿司を食べに行ったのが最初でした。2006年ぐらいだと思います。

Q:その出会いから、どうしてジュリエット・ビノシュと映画を一緒に作ることになったのですか?

その食事から交流が続き、2011年に彼女を東京へ呼んで、僕がホスト役で長いインタビューをするというイベントがありました。それをきっかけに“将来的に何か一緒に映画をつくりませんか”という正式なオファーをいただいて、そこから8年かかってこの作品が完成しました。

Q:今回の作品と「オズの魔法使い」は何か関係しているのですか?

今回のお話は、”小さな女の子がおばあちゃんの家に行くと、お城みたいなところに魔女がいて、その周りに色々な動物がいた”という、オズの魔法使いではないですが、おとぎ話のような感じをなんとなく作品全体に残したくて。リュックだったらうさぎ、ジャックはくま、というようにそれぞれの登場人物に何か動物を背負わせてイメージしています。

Q:監督の作品はセリフのデータ量が多い。どんな風にリズムや、シーンに出てくる長さやテンポ、というものを捉えているのか。どれくらいのリズム・テンポ・長さが適切だと考えていのか。セリフを上手く話して演じられる俳優さんがたくさん出ているが、そういったセリフ回しの上手い俳優さんのどの瞬間がいい演技だな、と感じられるか?

今回日本語で書いた僕のセリフを、全部フランス語に直すにあたって、文法的には日本語と全く違う文法、時制の統一や主語をどうするかとか、全部通訳の人と一緒に書き替えていくにあたって、結構大変だった、それは。それでも、メインの女性4人の声を自分の中に思い浮かべながら、それぞれにみんな特徴がある声をしている‥そのアンサンブルというのか、ハーモニーをどういう風に捉えていくのか。例えばファビエンヌ、カトリーヌ・ドヌーヴさんというのはすごくセリフを言うのが速い、本人も話していたけれど「すごく短い時間でたくさん言葉が出てしまうの」と。それをこうなるべく活かそうと。娘のリュミールは、ビノシュさんのお芝居がそうなんですが、沈黙した瞬間に一番感情が出る女優さんなので、彼女が黙って見ている、というところで、すごくこう感情が伝わる。マノンさんは、オーディションで選んだ時、非常にこうハスキーな独特の声をされていて、テンポもすごくゆったりとしていたので、そういうバランス、それぞれの持ち味のテンポの違いみたいなものを重ねていく、そういう意識でやっていますね。
セリフの意味が分からないから、余計に、音楽的なことを頼りにしながら作っていきました。

Q:ドヌーヴさんとの撮影はいかがでしたか?

ドヌーヴさんは、すごく軽快にリズミカルにテンポよくセリフを言い終わって素晴らしかったな、って思って通訳に「今、すごく良かったよね?」と聞くと、「でもセリフが全然違います」となることが度々あって。彼女はリズムで覚えていくタイプで、現場に入ってからセリフをガンガン覚えていくという、現場を重視した方だったので、OKとNGのジャッジは常に不安でした。

Q:外国語のセリフでの撮影だったと思いますが、撮っているときに”うまくいった”と実感する瞬間などは具体的にわかりましたか?

瞬間?例えばカトリーヌ・ドヌーヴさんは“あ、いまスイッチが入った”というのが分かるときはハッキリ分かって、僕がカットかけて通訳の人と相談する前に『いまのがOK』と自分で言ってくれるので。常にそれが正しい、後で見たときにそれが本当に正しいので。ビノシュさんは納得がいかなければ、同じようにカットと僕がかけるとすぐに僕の顔を見て『もう一回やらせて』って言うから、楽だったよ(笑)

Q:撮影についてお伺いしたいんですが、序盤は二人の人物が対話をしているときに、カメラが話している人を追いかけるのかなと思いきや、話しているひとを追いかけずにそのまま留まっているというシーンが多かったと思います。しかし後半になるほど関係が回復していることを表すためか、全体の人物が映るマスターショットや、会話をしている主体が映っているショット、母と娘がハグをしながら映っているショットがあって、まさにこれこそ映画の主題が合致している瞬間かなと思っていたんですが、このような撮影の手法は監督の意図があって撮影しているのか、またはなんとなくそうなっているのかが気になりました。

細かく観ていただいて、ありがとうございます。カメラワークは基本的にカメラマンのエリックが決めている部分が多いです。あなたが言っていただいた顔を映さず、背中を映しているシーンもたしかに何か所かありまして、例えば本読みのシーンでドヌーヴさんが前に出てきて、マノンの背中越しにセリフを言い続けるドヌーヴさんだけを撮る。そこにはマノンもいるけれど、ファビエンヌにはマノンがサラにしか見えていないから、そういうときはマノンの顔はいらない。存在だけがそこにいる、もしくは声だけが聞こえる。そういうように存在を消すために、もしくはその人の向こう側に何か別のものを見ているときに、背中を撮っていた気がします。

Q:これまで監督は日本を舞台に、血縁主義で結ばれた家族がバラバラになり、解体していく様子や、代替えの家族といった従来の家族ではない形の可能性も提示してこられましたが、今回の作品は個人主義に力役していて、互いにすれ違っている状態の欧米的な家族がより結合していく、絆を深めていく様子が描かれていたと思います。今までの作品の流れからいくと、今回の作品はこれまでとはまた少し異なる感じでターニングポイントとなっているのかなと思いました。冷やかさを感じるくらい家族がバラバラになっていく姿から、より絆を深めて再結合していく家族へと変わっていく、視点の変化があったのかな?と。そのような流れからいくと、今回の作品を撮り終えたあと、次の作品の方向性がどこに向かっているのか、早く観たいです。次の新作はどのような方向性でお考えですか。

そこまで自分で前作と比べながら作っているわけではないんですけど…(笑)
確かに今回はあの母と娘の関係を修復していく、娘側から演じるという行為を二人の間に挟んで、お互いが自分主義というのをリライトしていく、修正していく可能性を描いてみたいなと思った感じはあります。
必ずしも自分の中にあるものが決まっているわけでもないし、家族観を更新させようとして作品を撮っているわけでもないので、この先どんな人間ドラマを撮るか今は白紙ですし、次の話をすると、この5年間で毎年映画を撮っていたので、さすがに飛行機に乗ってもアイデアがでてこず(笑)しばらくお休みをしようかなと思っています。

Q:母と娘が和解するシーンについて、教えてください。

そこは本当にクライマックスで、ロケハンで家を探しているときに、あの円形の窓が何個もあるテラスが見つかって、”あ、ここで最後に母と娘が抱き合ったら”って決めちゃって。あそこだけはかなり細かく色々なことを決めて撮影をしています。

Q:監督の作品はこれまで様々な家族映画を撮られていますが、なぜ家族映画が多いのか、重点的に家族を扱っている理由、監督の家族観をお聞かせください。

あんまり家族を撮り続けているという自覚がなくて。撮っていて面白いと思ったのは、今作では母と娘があの家の中で色々な顔を見せていくんです。娘の顔や母の顔、妻の顔…ドヌーヴさんだったら祖母の顔、そして劇中劇では娘の顔にも変わっていく。一人の人間を反面的に多角的に描こうと思うと、ファミリードラマの方が効率が良かったり、人間を立体に描きやすいんです。役割が変わってくると見せる顔が違うし、使う言葉が違うので、そういう魅力を感じているのは確かです。

Q:何か映画を撮るときに意識していることはありますか?

『歩いても 歩いても』をという映画を撮ったときから、常にファミリードラマを撮るときは、”家族はかけがいのないものだけど、やっかいだ”という、その両面をどのように描きとるかは考えています。

Q:監督の物語にでてくる登場人物は、どうしてこんなにリアルなんでしょうか?

リアルだと思っていただけたとするならば、役者のカトリーヌさんであって、ファビエンヌではないですが、そういう人やものを観察して作品の中に落とし込めるものは落とし込むという作業を毎日やっていきます。

Q:監督は俳優さんたちから自然な演技、自然な雰囲気を引き出すのが素晴らしいと思います。映画の中のセリフもアドリブが多いと聞いているんですが、今回は言葉が違う中で、あれだけの自然な雰囲気、自然なセリフを引き出すための秘訣はあったんですか?

魔法は使ってないですよ(笑)
アドリブはほとんどないんです。ただ撮影をしながら脚本を書いていく、撮影して夜編集して、脚本を直して、翌日話してっていうやり方をしているので、現場でよく観察をしていて。例えばドヌーヴさんが「お疲れさま」って皆にハグをして帰るんですけど、良いお芝居ができて帰るときはキスの位置がここからここ(唇近く)に移るんです。それがすごく面白いなって思って、ハンクにそういうキスをして、それを聞いた妻のリュミールが自分の母親の女の部分に苛立つ、という話は僕が現場でキスされたときの経験を書きました。

以上

画像: <Q&A>

★現地の韓国では、『真実』は12月より公開予定です。

世界の豪華キャストと描き出す『真実』予告

画像: 是枝裕和監督構想8年!世界の豪華キャストと描き出す『真実』予告 youtu.be

是枝裕和監督構想8年!世界の豪華キャストと描き出す『真実』予告

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【STORY】
全ての始まりは、国民的大女優が出した【真実】という名の自伝本。
出版祝いに集まった家族たちは、綴られなかった母と娘の<真実>をやがて知ることになる――。
国民的大女優ファビエンヌが自伝本【真実】を出版。アメリカで脚本家として活躍する娘のリュミール、テレビ俳優の娘婿ハンク、ふたりの娘のシャルロット、ファビエンヌの現在のパートナーと元夫、そして長年の秘書……お祝いと称して、集まった家族の気がかりはただ1つ。「一体彼女はなにを綴ったのか?」
そしてこの自伝は、次第に母と娘の間に隠された、愛憎渦巻く「真実」をも露わにしていき――。

原案・監督・脚本・編集:是枝裕和 

出演:カトリーヌ・ドヌーヴ『シェルブールの雨傘』/ジュリエット・ビノシュ『ポンヌフの恋人』/イーサン・ホーク『6才のボクが、大人になるまで。』/リュディヴィーヌ・サニエ『8人の女たち』 撮影:エリック・ゴーティエ『クリスマス・ストーリー』『夏時間の庭』『モーターサイクル・ダイアリーズ』

配給:ギャガ 
©2019 3B-分福-MI MOVIES-FRANCE 3 CINEMA

10月11日(金) TOHOシネマズ 日比谷 ほか全国ロードショー  

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