【石坂健治コメント】
(アジア映画の選定が中心)

TIFFにはコンペティション部門、アジアの未来部門、日本映画スプラッシュ部門の3つのコンペティティブ部門があって。僕はそのうちの「アジアの未来」部門を担当してます。
この部門はアジアの新人監督発掘、という意味に加えて、“世界初”の上映作品の目撃者になって欲しい、という意図もあります。昨年までこの部門は、国や地域を割と平等に紹介できるようにバランスを取っていたんです。でも今年はそれをやめて、本当に面白い作品たちを寄せ集めてみた。そしたら「韓国」「イラン」「香港」という、日々僕たちがニュースを見てたら、散々目にする話題性たっぷりの地域の作品を2作品ずつ選ぶ事になったんです。不思議ですよね、全然意図は無いんですよ。
韓国映画は未だに人気だから、映画祭という門をくぐらなくても、普通に配給会社が買って劇場で観る事ができちゃう作品が多い中、今回は2つの面白い映画を揃えました。ひとつは『エウォル~風にのせて』という、韓国にこの手の真っ当なラブロマンスを撮らせたら他に敵う国はないと思わせる作品ですね。もう一つは、こちらもまさに韓国映画らしい過激なバイオレンスもの『失われた殺人の記憶』。韓国映画って、よく“交通事故の後、記憶が無かった”みたいな設定あるじゃないですか。これも、翌朝全く記憶が無くて、別居している奥さんが殺されたという知らせで、警察がきて・・・みたいな、典型的な韓国サスペンスなんですけど、ちょっとヒッチコックのようなテイストですね。主人公のイ・シオンが、長谷川博己さんに似たイケメンなんですよね。
今大変な事になっている香港の映画も、注目の2つ。『ファストフード店の住人たち』という作品。この映画の英語タイトルが面白くて、『I’m livin’ it』 とどっかで聞いたことのある、あの、大手ファストフード店のCMのやつですね。タイトル通り、居住地が無くてファストフード店に住んでいる主人公たちの物語。香港の格差社会の問題が浮き彫りになった作品なんですけど、登場人物がまぁ豪華な俳優陣で。50代以降の方で好きだった人も居たんじゃないでしょうか、ノラ・ミャオという、70年代の香港のアイドル的存在の女優さんが、今回音楽教室の先生役で登場してるんです。作品もできたてホヤホヤで。もちろんワールド・プレミア上映です。

今年のアジア映画の全体の傾向を1つ言うと“ホラー色“強めという事かと。そんな中、フィリピンでも面白い作品があります。マレーシア出身でフィリピン在住の監督が、多国籍スタッフたちと一緒に撮影した作品で、国際化の進むアジアのホラー映画の今年の代表格です。テイストは、わかりやすく言うとキューブリックの『シャイニング』と『エイリアン』シリーズを掛け合わせた様な感じですね・・・本当にこれは出来が良い。

そして今年でシリーズ6年目の【国際交流基金アジアセンターpresents「クロスカットアジア」部門】。毎年、1つの国や、テーマに沿って特集を重ねてきたんですが、昨年の音楽映画特集「ラララ♪東南アジア」に続き、今年は・・・「ぞぞぞ・・・」と言うべきか。「ファンタスティック!東南アジア」と称して、実は“ファンタ”映画の宝庫である東南アジアの知られざる一面についに触れるという。東南アジアは、実はJホラーへのリスペクトも大きくて。各国の映画祭に行くと「NAKATA」「HIDE」と皆口を揃えて、映画祭のゲストに招きたいと言う人がいますね。もちろん、サッカー選手の方では無くて、『リング』の中田秀夫監督の事な訳なんですが。 ちなみに、タイ伝統の土着型オバケに【クラスー】という、「首だけ女」がいるんです。しかも首に内蔵がくっついてきて、それだけで飛び回るというオバケ。『マッハ!』や『チョコレート・ファイター』の大作系エンタメ監督が、実はずっとホラー映画を作りたかった!と実現した作品で『Sisters』という、これまたホラーにありがち“双子もの”。これも是非観て欲しい。それと、今年僕が一番観て欲しいとも言える『リリア・カンタペイ、神出鬼没』。これもフィリピンの、ある意味ホラー映画なんですが、モキュメンタリーとして撮られ、2011年製作の少し前の映画ではあるんですが、本当にオススメしたい。実在した、ギネス並の出演本数を誇る名脇役ホラー女優さんが、映画の中で生まれて初めて“女優賞”ノミネートをされてしまう、というもので。これは本国でも大ヒット、本当に現実世界では国内映画祭でこの映画での女優賞を受賞し、亡くなったという後日談も面白い作品。

それと齊藤工監督の最新作も紹介しますよ。『家族のレシピ』という斎藤さん出演作で、監督を務めたエリック・クーが製作総指揮を務める【フォークロア】というシリーズの1つ『フォークロア:TATAMI』。齊藤監督初のホラー作品で、北村一輝さんが主演の話題作です。じとーっとしてます笑。

そして最後に海外映画祭ですでに受賞をしていたり、日本にはまだ来ていないけど、実は世界で超話題になっていたりする作品をいち早く観る事の出来る「ワールド・フォーカス」部門。
こちらのアジア映画も僕が担当しています。唯一の台湾映画『ひとつの太陽』は、家族の再生もの。1度崩壊してしまった4人家族が再生していく姿を丁寧に切り取ってます。今年の台湾映画で際だって出来が良かったので選びました。それと、タイのアイドルBNK48のジェニス、ミュージックが共演した王道青春映画『私たちの居場所』。タイ映画は特に“青春”が浮き出ますよね。おじさんもキュンキュンしちゃいます。

第32回東京国際映画祭
■開催期間:10月28日(月)~11月5日(火)
■会場:六本木(港区) 、東京ミッドタウン日比谷 日比谷ステップ広場(千代田区) 他
■チケット発売 :10月12日(土)より~

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