ワークショップ映画に観客が集まっている。

ワークショップ映画とは、俳優のための演技ワークショップや演技学校が母体となり製作された映画の総称だ。

社会現象までになった上田慎一郎監督作品「カメラを止めるな!」もそのワークショップ映画のひとつである。

このようなワークショップ映画は、俳優学校の卒業制作で作られた映画や、俳優ワークショップの延長で作られた映画をすべてカウントすれば、年間50本ぐらいは作られているはずだ。

そういったワークショップ映画のそもそもの意味合いは、無名の俳優たちが演技訓練の延長線上の実践として腕を磨くためのお試しの現場を作ることであり、無名の若手監督がその手腕を磨くための習作映画を作ることであり、決して沢山の観客に見てもらうことではなかった。

であるのに、近年は、ワークショップ映画が、普通に映画館でかけられることも多くなり、中には、習作という本来の意味を超えて商業映画に匹敵する興行成績を上げるものも出てきている。

その筆頭が「カメラを止めるな!」なのである。

画像: ワークショップ映画に観客が集まっている。

「カメラを止めるな!」大ヒットの重要な点

とくに、「カメラを止めるな!」が大ヒットとなったことには大きな意味がある。

それは、無名の俳優たちだけの出演でも、日本中を震撼させるような映画を作ることができるということを証明したことである。

日本は前例主義、権威主義が横行する社会であるが、その結果として、どの映画やどのドラマでも、名の売れた同じような俳優ばかりがキャスティングされるという弊害が生まれている。

だがそこに「カメラを止めるな!」は風穴を開けた。

意味のないお守りのような前例主義の横行する日本がすぐに変わるわけではないだろうが、「カメラを止めるな!」のヒットが、冒険も夢もない日本のやり方を変えるきっかけになる可能性はあるだろう。

普段映画を見ないような一般人もが「カメラを止めるな!」を支持したのには、もっと冒険や夢のある社会に日本を変えたいという日本人の潜在意識があったからなのではないだろうか。

ちなみに、「カメラを止めるな!」の大ヒットを「低予算映画でも当てることができる」という文脈で語る人も居るが、それは危険なことだ。

というのは、「カメラを止めるな!」の大ヒットの要因を「低予算であること」に力点をおけば、今後の映画に関わるスタッフやキャストに正当なギャラを払わないことを正当化することにつながりかねないからだ。

「カメラを止めるな!」現象が画期的だったのは、予算が大きいか小さいかには関係ない。無名の新人たちに重要な役を与え、その映画が当たったということが重要なのである。

画像: 「カメラを止めるな!」大ヒットの重要な点

日本映画界の異端児、園子温監督がワークショップ映画を撮る!?

「カメラを止めるな!」の大ヒットが意味するところを素早く察知した映画監督がいる。

園子温監督である。

園子温監督

俳優のためのワークショップを運営する老舗のひとつ、アクターズ・ヴィジョン代表の松枝氏のところに「「カメラを止めるな!」みたいなワークショップ映画をとりたい」と言ってきたというのだ。

園子温監督と言えば、女子高生54人が同時に自殺するという映画「自殺サークル」や、上映時間が4時間もある映画「愛のむきだし」をヒットさせたり、原発事故が起こればそれを直接映画の題材にした映画「希望の国」を撮ったり、最近では、あのニコラス・ケイジを主演にしたハリウッド映画の監督をすることが発表されたりと、センセーショナルという言葉が誰よりも似合う映画監督である。

その園子温監督が、ニコラス・ケイジ主演のハリウッド映画を撮る直前に、無名の俳優たちと組んで「ワークショップ映画」を撮るという。

しかし、それは驚くに値しない。

なぜならば、日本映画界の異端児と呼ばれる園子温監督は、有名アイドルを主人公にせねば映画は当たらないと考える日本映画界の常識に異を唱え、名を成す前の、無名の、吉高由里子、満島ひかり、安藤サクラを堂々中心に据えて映画を作ってきた。そして、彼女たちが俳優として成功するのを助け、その無名の彼女たちの俳優として成功したいという激しい熱を利用し映画を輝けるものに変えた。

そう考えると、「カメラを止めるな!」が日本に与えた影響を一番好ましいと思っているのが園子温監督であると言えるかもしれない。そして今「カメラを止めるな!」への返歌として、自分ならこうするとワークショップ映画を撮ろうとしている。

ニコラス・ケイジ主演映画を撮るだけでも何も問題ないのに、あえて火中の栗を拾いに行っている園子温監督の姿勢には、保身ばかり考える現代日本人の大人たちには無い時代への責任感と、自らを追い込み、己を超克しようという激しい成長への意志を感じる。

今回のこの記事の掲載に当たって、園子温監督ご自身からコメントをもらうことができた。

園子温監督からのコメント

画像: 日本映画界の異端児、園子温監督がワークショップ映画を撮る!?

「必ず、結果に結びつくように、毎日、頑張っていこうと思う。絶対に役者になると決めた人だけ来てほしいです」

我こそはと思う者、ぜひ応募してみてはどうだろうか。

「園子温監督による俳優のための実践的ワークショップ」詳細ページは、以下より
http://actorsvision.jp/?page_id=331

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